ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第13章・01話

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力なき女王

 ゴルディオン砦への襲撃が終わってから、数日が経過していた。

「砦の防衛網の再構築は、どの程度進んでいるのですか?」
 ニャ・ヤーゴの急ごしらえの指令室にて、今は無き王宮魔導所を統括する神聖国家の代表、ヨナ・シュロフィール・ジョが、3人の少女騎士に問いかける。

 淡い紫色の長い髪に、妖精族の特徴でもある尖った耳を持った、白い肌の優美な女性だ。
蒼に白い差し色のローブに、白いマントを纏い、手にはへカティアの杖と呼ばれる生命を実らせる杖を持っている。

「今は、ヨナさまの派遣いただいた魔導士や司祭さまの働きにより、多くの騎士が回復しつつあります」
「ジャイロス将軍の指揮下で、回復した騎士から現場に出て復旧作業を開始しました」
「将軍は、騎士だけの構成ではなく、魔導士や司祭を交えた部隊構成が必要との見解でございます」

「そうですか。ゴルディオン砦は、王都防衛の要(かなめ)。再び脅かされるコトなど、あってはなりません。本来であれば、将軍の打診に応えたいところですが……」

 ジャイロス元帥の代理として会議に出席した、アルーシェ・サルタール、ビルー二ェ・バレフール、レオーチェ・ナウシールからの報告を受け、美しい表情を曇らせるヨナ元帥。

「アンタんところも、先のサタナトスによる襲撃で王宮魔導所が壊滅しちまって、多くの配下が死んだんだろ。こっちだって、広大な王都を囲む膨大な城壁の復旧を任せられてるからな」 
 獣人の国家代表である、ラーズモ・ソブリージオ元帥が苦言を呈す。

 オレンジ色のワイルドな長髪に、蛇の様な鋭い眼光を持った、獅子の獣人だ。
獅子の面に尖った牙を持ち、蒼く染めた鱗革鎧(スケイルメイル)で強靭な身体を覆っていた。
鋭い爪の生えた丸太のような腕には、緑色の装飾品が飾られている。

「王都ですら魔導士や司祭の数も足りてねェのに、ゴルディオン砦に回す人手など無いぞ」
 傍らの壁には、百獣の王(マスターテリオン)とも呼ばれる、動物の骨で組まれた大剣『キュ・マイラ』が立て架けてあった。

「それは承知しております、ラーズモ元帥。ですがサタナトスは、時空を切り裂く剣を持つ神出鬼没の魔王を配下にしているのです。いついかなる場所から攻撃されても、不思議ではないのですよ」

 眩いばかりに輝く金色の髪の少女、神澤・フォルス・レーマリアが反論する。
彼女は女王となって間もなく、会議室のテーブル中央の多少は豪奢な椅子に座ってはいたが、集った5大元帥たち程の経験も実績も無かった。

「その心配は、まずは御身から成されるべきかと。敵が空間を切り裂く剣を使うというコトは、いつ女王陛下のお命を狙って来てもおかしくないのです」
 武士道を重んじる、東国より落ちた伸びた侍や忍びたちの国家代表、カジス・キームスが忠言した。

 男は蒼黒い武者鎧に、黒い大袖と白い袴(はかま)といったいで立ちで、黒髪を頭の後ろで結び、整った口ヒゲを生やしいる。
腰の黒い鞘には、鬼の骨より打ち出した太刀『鬼刀・虚空』を佩いでいた。

「そう……ですね。今のわたくしが有るのも、パレアナがその身を呈して救ってくれたからです。肝に銘じて置きましょう」

 女王の耳には、パレアナが生きていたと言う情報も、すでに入っていた。
けれどもそれは、結果的に幸運だったに過ぎないとの考えであり、パレアナが敵の手に落ちている情報も得ていた。

「レーマリア女王陛下には、当家からも3人の侍娘を近習として出仕させていただいておりますが、忍びの者もお付け下さらぬか。昼夜を問わず、御身を護りましょう」

「わかりました。有難く、お受けいたします」
 生真面目な武人だが、やや柔軟性に欠けるとされるカジス元帥の忠言を、若き女王は快く受け入れた。

「今は、敵の襲撃に警戒しつつ、王都をいち早く復旧させ、民に安寧をもたらせねばなりません。それには5大元帥の力が、どうしても必要なのです」
 レーマリア女王は、立ち上がって小さく頭を下げる。

 神聖国家や侍の国など、5つの国が集って誕生したヤホーネスは、王族の権威は強くはなかった。
かつての5つの国それぞれが立てた元帥の発言力は強く、先代を継いだばかりの女王の力はか弱い。
サタナトスによる襲撃の被害が王都に集中したコトもあって、その権威は一層失われていた。

「なんの策もねェ、愚直な方針だぜ。ま、嫌いじゃねぇがよ」
「内政に策など、必要ないのです。女王陛下、立派になられましたね」
「我ら5大元帥、身命を賭してお仕えする所存!」

 ラーズモ元帥、ヨナ元帥、カジス元帥の3人が、それぞれの言葉で女王に従う立場を表明した。

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