ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP037

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鉄壁のフルミネスパーダ

 高校生のサッカー部に置ける、もっとも価値のある大会は冬の大会だ。
全国47都道府県の地方大会を勝ち上がった、精鋭ぞろいのサッカー部の頂点を決める大会。

 ほんの少し前まで、ボクが目指そうとしていた大会でもある。
(入部届けを机に叩きつけて、ダメになっちゃったケド……)

「オレは県大会で、何度もスッラの引き入る高校と戦ったんだ。でも冬の全国大会への出場は、1度も叶わなかった」
 アルマさんは、悔しそうな表情を僅かに見せる。

「スッラの他に、あの大柄のセンターバックも、冬の大会に出てましたよね?」
「そうだね、オリビ。彼は、本坪 捲那(ほんぺい マグナ)。オレやスッラより1つ年上で、彼の守備力……特に高さには、何度も跳ね返されたよ」

 アルマさんすら、出場が叶わなかった冬の全国大会。
そんな大会で躍動し、頂点に立った猛者まで居る、フルミネスパーダMIE。
果たして、自分の学校のサッカー部にすら入れなかったボクに、勝てるのだろうか ……。

「ロラン、気楽に行こう。これは、あくまで練習試合だ。それに必ずしも、冬の大会に出場した選手が、プロとして活躍できるワケじゃないからね」
 ボクをロランだと思い込んでいる、アルマさんが励ましてくれた。

 ボールは、イヴァンさんを罠(オフサイドトラップ)にかけた、MIEのボールで再開される。
カイザさんのロングキックが、ボクたちの頭上を飛び越えて行った。

「マ、マズいぞ、戻れ!」
 アルマさんが、指示を飛ばす。

「おっしゃ……ナイスボールだぜ、カイザ!」
 センターラインの自陣側から飛び出した、ハリアさんにボールが出た。
当然ながら、オフサイドにはならない。

「これは、貰ったぜ!」
 元フォワードだった攻撃的なサイドバックは、ボクたちエトワールアンフィニーSHIZUOKAのゴールに斜向しならが迫っていた。

「今度は、抜かせない!」
 センターバックのヴァンドームさんが、飛び出してシュートコースを塞ぐ。

「へッ、ならこうよ!」
 あっさりと、ボールを手放すハリアさん。
ほぼ真横に出されたボールに、チュニジア人ストライカーが走り込んだ。

「メルシー・ビヤン!」
 バルガ・ファン・ヴァールさんの、強靭な右脚が振り抜かれる。

「メルド(クソ)ッ!」
 シュートは、ゴールを護るヴォーバンさんの右側に決まった。

 2点目を決めたバルガさんは、そのままゴール前を駆け抜け、右側のコーナーフラッグに立つ。
旗を右手で掴み、左手を腰に当てて王さまのような尊大なポーズを取った。

 30分しかない試合時間の中での、2点目。
電光掲示板の時計を見ると、まだ半分以上の試合時間が残されていた。

「マズいそ、オリビ。このままじゃ、一方的な展開に持って行かれる」
「そうですね、アルマさん。相手はディフェンスラインから中盤を飛ばして、いきなり前線にボールを放り込んで来ます。ウチの強みは、中盤なんですがね……」

 打開策を、見い出せないボクたち。
正直、MIEの鉄壁の守備陣を崩すのは、並み大抵じゃない。

「オイオイ。どうしたよ、ロラン。ウチはチャンスらしいチャンスすら、作れてないじゃねェか」
 不満を漏らす、イヴァンさん。

「なにを言っている。お前がオフサイドポジションに、残っているからチャンスが作れないんだろう!」
「よく言うぜ、ランス。テメーだって、サイドで張ってチンタラやってるだけで、シュートすら撃ててねェだろうが!」

「相手の最終ラインの統率力が、ハンパなく高いからな。だが、まだ時間はある。このまま何もせず、終わるつもりは無い」
 ランスさんは何度も動き直しをして、チャンスを作ろうとしてくれていた。

「そりゃオレだって、点を決めないで終わるつもりはねェぜ。今度はオレが、ドリブルで仕掛ける。フォローしろよ、ロラン、オリビ」
 イヴァンさんは、強引に方針を決定してしまう。

 けれども実際のところ、強引にドリブルで抜くくらいしか打開策が思い付かない。
試合が再開されると、ボクはイヴァンさんにボールを預けた。

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