ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第07章・37話

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少女たちの声

 プラネタリウムを凌駕する、美しい星々が瞬く宇宙を展望する、MVSクロノ・カイロスの艦橋。
オペレーターを務める3人の少女が、同じくオペレーターの栗毛の少女を囲んでいる。

「どうする、セノン。やっぱヴェルダンディに、言って置いた方が良いんじゃないか?」
 マケマケこと、真央・ケイトハルト・マッケンジーが切り出した。

「……と言うか、タブンもう気付いてる」
「だよねえ。あの人、この艦のコトならなんだって知ってそうだし」

 ヴァルナ・アパーム・ナパートと、ハウメア・カナロアアクアも続ける。
すると案の定、4人の少女たちの上に光の女神が現れた。

『皆さまも、既にお気づきでしたか。宇宙斗艦長の、安否のコトを』
 フォログラムのAIは、柔和な顔を少女たちに向ける。

「宇宙斗艦長、やっぱなにかあったのか!」
「わたし達ってより、セノンが……」
「宇宙斗艦長が、死んじゃう夢を何度も見たって言うんだ」

「ど、どうなんですか。おじいちゃんは、無事なんでしょうか?」
 世音(せのん)・エレノーリア・エストゥードも、運命の女神を見上げた。

『そうでしたか。実はわたくしも、宇宙斗艦長の安否が、気がかりなのです』
「ダンディさんもですか!?」

「そこは、ベルルとかでいいだろ!」
 真央は、親友のネーミングセンスが最悪なコトに、改めて気付く。

『宇宙斗艦長のアーキテクターであるゼーレシオンには、このMVSクロノ・カイロスだけが感知できるバイオセンサーが搭載されています。ですがここ数週間、ゼーレシオンが起動した形跡がありません』

「ゼーレシオンのいる場所は、何処なんですか!」
『地球です。かつて日本と呼ばれた国の、海に沈んだ首都・東京の八王子と呼ばれた都市です』

「地球か。セミラミスさんの目的地は、地球だったんだ」
『いいえ、真央。彼女は今、火星の牢獄に繋がれています』

「……ど、どう言うコト!?」
「センナ・ケリグーは、宇宙斗艦長たちと地球に向かったんじゃないの?」

『ハウメアの言う通り、センナ・ケリグーは地球に向いました。ですがそのパイロットは、セミラミスでは無かったのです』

「そ、それじゃあ、誰がパイロットだったの?」
 栗毛の少女が、カプセルの中のAIに聞いた。

『ミネルヴァです』
「ミ、ミネルヴァって、ディー・コンセンテスのですか!?」
『そうです。セミラミスは、自身を囮としてミネルヴァを逃がしました』

「マ、マジかよ。でもパイロットが違うくらい、大した問題じゃないか」
「真央、バカ。大問題!」
「バ、バカとはなんだよ、ヴァルナ!」

「バカって言われても、仕方ないよ、真央。よく考えてごらん。ミネルヴァは太陽系の意思決定機関だった、ディー・コンセンテスの最重要人物なんだ。セミラミスとは、比べものにならない影響力のある人物さ。そんな彼女が、火星を秘密裏に脱出し、地球に帰還したんだ」

「い、言われてみれば……」
 真央は苦い顔をしながらも、ハウメアの説明に納得する。

『現時点で、火星から目立った反応はありません。ただ、地球のラグランジュポイントで、艦隊戦が行われた形跡があります』

「ダンディさん。わたし達を、地球圏に行かせてはくれませんか?」
 両手を重ね、懇願するセノン。

『わ、解りました。ですが、先述した理由から艦隊は動かせません』
 自身の愛称が、ダンディに固定され同様する、ヴェルダンディ。

「火星が動いていないウチは、艦隊を動かせないってコトか」
「まだ、ミネルヴァの脱出は……」
「気付かれていない可能性が、高いんだね」

「それじゃ、どうやって地球に行けばいいんですか?」
『アフォロ・ヴェーナーを出します』

「オオ。それじゃトゥランさんも、来てくれるんだ」
「でも待って。今の地球は……」
「そっか。汚染された大気や海……生身じゃ、外に出た途端に死んじゃうよ」

『アフォロ・ヴェーナーに、貴女たちのサブスタンサーを乗せます』
「え、アタシらのサブスタンサー!?」

『宇宙斗艦長から、製造を依頼されておりました』
「お、おじいちゃんが、ですか!?」
『既にロールアウトを終えて、実戦投入も問題ありません』

 女神の言葉に、少女たちのかしましい声が艦橋に響いた。

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