ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP029

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ランスとイヴァン

 綺麗な新緑の芝生に、整然と蒼い椅子の並んだ観客席。
澄んだ空には照明灯がそびえ、近くには近代的なトレーニングセンターが併設してある。

「心配しなくていい。これは、ただの練習試合だ」
 ボクの隣には、熱田 折火(あつた オリビ)さんがユニホーム姿で立っている。

 後ろを見ると、フランスから帰化したベルナール フィツ べリックさんの連れて来た、ドミニク ヴォーバンさん、アベル ルイ ヴィラールさん、アルセーヌ ド ヴァンドームさんの3人のフランス人スターが、顔を揃えていた。

 みんなこの間まで、テレビで見ていた選手ばかりだ。
どうしてボクはこんなスゴいチームで、10番を付けているんだ?

「この状況で顔色1つ変えないなんて、キミも凄い肝っ玉をしてるじゃないか」
 ボクの顔を見て、判断するオリビさん。

 ……ああ、違うんだ。
緊張して顔に出ないだけで、メチャクチャパニクってるんだよォ!

 すると相手コートの方から、同じ蒼いユニホームを着た2人の選手が、こっちに向ってやって来た。
デイフェンスラインは揃っているから、中盤か前(フォワード)の選手だろう。


「キミが、ロランか。名古屋での記者会見では、逃げ出したそうだな」
 そのウチの1人が、こちらを睨みながら威圧的な態度で言った。

 ユニホームの胸の背番号は11だから、たぶんフォワードなのだろう。
ボクより少し背が高く、髪も少し長めの金髪だケド、サッカー選手としては一般的なのかも知れない。

「おおかた、怖気づいてし逃げ出したのだろう。いくら、ウチの前身となったチームの中心選手だからと言って、そんな甘えはプロの世界では通用せんぞ」

「スミマセン、ランスさん。ロランは体調が、少しすぐれなかったんです」
「体調管理が出来んとは、それこそプロ失格だろう」

「プロのサッカー選手にとって、何より優先されるのは試合での結果です。記者会見ではありません」
 穏やかな口調で、オリビさんが反論した。

「プロの世界も知らんクセに、生意気を言う」
 ランスさんの顔が、急に険しくなる。
フォローしてくれるのは有難いケド、ケンカになるのは無しでお願い!

「オイオイ、チームメイト同士でいがみ合うのは、止せって。ランスも、大人げないだろ」
 ランスさんより少し背の高い、背番号9を付けた選手が言った。

「なんだ、イヴァン。お前の同類が出来て、嬉しいのか?」
「なんだとォ!?」

 もう1人は、イヴァンさんらしい。
茶色い髪は、やたらとボリューミーで、まるでライオンのタテガミみたいだ。
手足を見ると、野性的な筋肉が付いていた。

「イヴァン、お前は、昔ながらの嗅覚で勝負する、古い(オールド)タイプのフォワードだ」
「ハアッ、嗅覚で戦うフォワードなんざ、世界にだっていくらでも居るだろ!」

「確かにな。だが、世界で戦うヤツらと、お前とでは決定的に違うモノがある」
「なにを、偉そうに。一体、なにがどう違うってんだ!」

「頭脳さ。お前去年、何度オフサイドを取られた?」
「……なっ、それは……」
 言葉を詰まらせる、イヴァンさん。

「戦術理解度が低いから、戻り遅れてオフサイドを取られる。相手ディフェンスのオフサイド・トラップにも、容易にかかってしまう」

「そんなモン、当然だろうが。オフサイド・ラインにビビッて、下がってたら意味が無ェだろ」
「確かに去年、お前が取られたオフサイドは、1試合5回以上……」

「オフサイドが怖くて、フォワードがやってられっか!」
「その度に、お前の所属チームは、チャンスを潰しているんだ」

 ボクとオリビの前で、いがみ合う2人のフォワード。

「ヤレヤレだろ。ランスとイヴァン……ウチのツートップは、とてつもなく犬猿の仲なんだ」
 どうやらエトワールアンフィニーSHIZUOKAも、様々な問題を抱えているらしい。

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