ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第12章・21話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

斥候(せっこう)カーデリア

「ここが、ゴルディオン砦か。山と山の間に巨大な壁を張り巡らせて、敵の進入を防いでるんだな」
 馬の手綱を引きながら、バルガ王が言った。

 周囲には、月光によって創り出された、膨大な面積の影が落ちている。

「戦争に使う壁も、真夜中にこうして見るとキレイなモノね」
 カーデリアが、王の馬に轡(くつわ)を並べた。
針葉樹林を分断するように現れた壁は、月灯りを受けて白く輝いている。

「それにしても大きな壁ですね、バルガ王」
「山と山とを壁で繋ぐなんて、地上の人間の軍事力も大したモノだな」
 少し遅れて到着した、ベリュトスとキティオンが、巨大な軍事施設の感想を述べた。

「ゴルディオン砦は、北の異民族国家群からヤホーネスを守る、最後の砦なのです」
「ザバジオス騎士団は、幾度となく異民族と戦争をして参りました」
「砦から北にもいくつか拠点があって、連携を取りながら防衛に当たっているのですよ」

 最後に到着した、アルーシェ、ビルー二ェ、レオーチェの3人の少女騎士が、砦の機能の説明をする。

「つまりここが、王都の最終防衛ラインってコトか」
「もっともサタナトスみたく、次元を超える剣を持たれちゃ、意味のない代物でしょうケド」

「それでも軍隊の侵入は、防いでおります」
「ゴルディオン砦を中心とした、砦網が無ければ……」
「王都はとっくに、異民族の軍勢に攻め込まれていたしょう」

「それだけ、重要拠点ってコトよね。入念に調査して置くに、越したコトは無いわ」
 カーデリアの発言が、少女騎士たちの顔をさらに険しくさせた。

「ま、ここで憶測を述べあったところで、時間のムダだぜ。ジャイロス殿に直接会って、ワケを聞けば済む話だろう」
 王は砦に向かって、再び馬を走らせた。

 一行も王の後を追い、夜の針葉樹林の丘を駆け降りると、ゴルディオン砦の巨大な門の前に辿り着く。
門の前には、それなりの大きさの河が流れていていた。

「左右の山々の雪解け水が、この辺りで合流しているのか。かなりの水量だぜ」
「ですがバルガ王。門は川の向こう側ですぜ」
「城門から、橋を降ろしてもらう必要があるわ」

「ま、オレだけ乗り込むんなら、ひとっ飛びなんだがな」
「流石に、迎撃されますって」
「門の城塔(タレット)には、警備兵が常駐してるだろうしな」

 山と山とを繋ぐ巨大な壁の中央にある、ゴルディオン砦。
門には左右に2基のタレットが備わっており、松明が下から塔を紅く照らし出してる。

「ンなコトァ、わかってるよ。言ってみた……」

「いえ、バルガ王」
「様子がおかしいです」
「悪い予想が、当たってしまったのかも知れません」

 アルーシェ、ビルー二ェ、レオーチェの3人が、口を揃えて言った。

「オイオイ、どう言うコトだよ」
「アンタらはさっきまで仲間を疑われて、怒っていたじゃないか?」
 ゼピュロスとキティオンが、反論する。

「状況、が変わりました」
「我々が、これだけ接近しているのです」
「本来であれば城塔から、なんらかの警告があるハズ……」

「それもムリな話ね。タレットに、人の姿はないわ」
 カーデリアが、言った。

「アタシが進入して城門を開けてくるから、少しだけ待ってて」
 パッションピンクの髪の少女は、乗っていた馬の鞍の上に立つと、そのまま大きくジャンプする。

「ス、スゲェ。軽く河を飛び越えて、砦の城壁に着地しちまった!」
「しかも乗っていた馬が、嘶(いなな)くコトもなく……」
 驚く2人の護衛の前で、城門がギシギシと音を立てて降りて来た。

「流石は、バニッシング・アーチャーさまだ。仕事が速くて、助かるぜ」
 王は橋となった城門の上を渡って、馬に騎乗したまま入城する。

 空馬と2人の護衛、3人の少女騎士の馬も後に続き、バルガ王ら一行は広場に出た。
周囲には騎士団の駐屯所らしく馬小屋が並び、丸太を半分に割った水飲み場や、うず高く積まれた干し草が目に入る。

「こんな場所で襲われでもしたら、一貫の終わりですぜ」
「イヤ。ここが安全と踏んだから、カーデリアはオレたちを入れたのだろう」

「そうね、砦の中に人の気配がしない……これは、最悪かも知れないわ」
 空馬の鞍の上に降って来た、パッションピンクのショートヘアの少女が言った。

 前へ   目次  次へ