ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第7章・EP014

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ロランの逃走劇

「オーストリアリーグを経験したストライカーに、ドイツユースの代表でありますか。とても、地域リーグの選手レベルではありませんな」
 強靭な身体の、日焼けした男が言った。

「そうだな、杜都。ちなみにだが、メンデルスゾーンと共に紹介された、塀塔 嵐斗(べいとう ラント)もかなりの実力者だぞ」
「そうなんでありますか、倉崎指令?」

「ラントは、視力に問題を抱えながらも、圧倒的な情熱でディフェンスラインを統率する指揮者(コンダクター)だ。彼の守備を突破するのも、一苦労だろう」

「マ、マジか。クルクルした頭のヤツ、そんなにスゴい実力者だったのかよ!」
「クルクルした頭より、ラントのがゼッテー言い易いだろ、お前」
 相変わらず、クロナミとクレハナは仲が良いようだ。

 今のところ、ボクは完全にカズマだと思われている。
2人を始めとしたカズマのチームメイトにも、ボクの肩に腕をかけている倉崎 世叛にも、ボクがロランだとバレてはいない。

 それも……カズマ、彼と偶然出会えたお陰だ。
ロランは、思った。

 ボクとそっくりな彼に出会わなかったら、ボクは無理やり記者会見場に出させられていただろう。

 デッドエンド・ボーイズのメンバーが見つめるテレビの中では、すでに1FC(エルストエフツェー)ウィッセンシャフトGIFUの選手・スタッフ紹介が、終盤を迎えていた。

「監督に関しましては、ドイツ1部リーグのチームを指揮してリーグ優勝した経験のある、オイゲン・フォン・ビスマルク氏を招へいする予定です。本日はお集まりいただき、誠に有難うございました」
 オーナーの武柳 ヒルデ(ぶりゅう ヒルデ)が、記者席に向けてお辞儀をしている。

 自分の似たヤツが、偶然あんなタイミングで目の前に現れたのは、幸運と呼ぶ他ない。
神の思し召しとしか、思えなかった。

 記者会見場では、新たに蒼いユニホームの選手たちに、スポットライトの光が落ち始める。
本物の御剣一馬の上にもライトが当たり、硬直した顔がテレビ画面に映る。

 カズマ……キミには悪いが、ボクにはまだやるコトがあるんだ。
見知らぬチームメイトに囲まれながら、ロランはその日の朝の出来事を思い出していた。

 ~時間は、数時間前に遡(さかのぼ)る~

「止めろ、ボクは記者会見なんかに出ない。チームに入る気も、無いって言ってるだろう!」
 詩咲 露欄(しざき ロラン)は、黒いスーツ姿の男から逃げていた。

 記者会見場の設置される予定のホテルの1階ロビーで、美形の少年が黒服たちの大きな腕からヒラリと身をかわす。

 するとロランの前に、1人の少年だ立った。
その背後には、外界へと続くエントランスドアがある。


「何処へ行く気だ、ロラン。理由はどうあれボクたちは、チームと契約を結んだんだぞ」
 少年はマッシュルームヘアで、やはり整った顔立ちをしている。

「悪いんだが、オリビ。ボクはこんなふざけたチームで、サッカーをする気は無いんだ」
 華麗なフェイントで、オリビをかわそうとするロラン。

「キミの考えなど、読めている」
 けれどもオリビは、ロランの進路を的確に阻んで、ドアへの通路を通さない。

「もう止せ。キミの姉さんだってきっと、キミがサッカーを続けられるコトを願っていたハズだ」
 ロランが走り回ったコトで、高級ホテルのロビーは騒然となっていた。

「お前に、何がわかる。姉さんは、日高オーナーに殺されたんだぞ!」
「確証があるワケじゃないんだろ、ロラン」
 彼の背後からは、黒服たちも迫っている。

「ああ。だけど、必ず見つけ出して見せる。ボクは、アイツを絶対に許さない!」
 ロランは体当たりをして、強引に親友を突き飛ばした。

「グアッ、ロラン、待つんだ!」
 けれども、オリビの静止を振り切って、ロランはホテルから逃走する。

 敷地内の茂みを通ってホテルから抜け出ると、車の通れない裏道を使って離れた。
目論み通りに、チームは記者会見が迫っていた選手たちを捜索に当てることも出来ず、僅かなスタッフを出して捜索に当たらせる。

 そうやって、逃走に成功した詩咲 露欄は、御剣 一馬と出会うコトになるのだ。

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