驚異のチーム紹介
『そ、それでは、今回Zeリーグに参戦するもう1チームって言うのは……』
『あの倉崎 世叛が、オーナーを務めているのですか!?』
後ろ姿の記者たちが、目を丸くしているのが見て取れる。
『ええ、そうです。この記者会見に集まっていただいた芸能リポーターの皆さんが、倉崎 世叛の名前くらいはご存じで良かった』
日高オーナーの話術に、笑いで場が和んだ。
「あ、あの倉崎って人、芸能リポーターにも名前が知れちゃってるんだ」
最初は不審者扱いした倉崎に、感心する奈央。
『では改めて、ボクがオーナーを務めるフルミネスパーダMIEの、主要選手を紹介したいと思います』
有葉 路夢(あるば ロム)が、キラリとした笑顔で言った。
スポットライトが、オーナーであるロムから、オーナーのスーツと同じ色の赤いユニホームを纏った選手たちに移動する。
『まずは、キャプテン。奥多 愛楠(おくた アグス)選手です』
記者席から、再び激しいフラッシュが焚かれた。
「うわぁ、この人もメチャクチャカッコいいじゃん。ユニホーム着てなかったら、ただのイケメンアイドルだよね」
すでに奈央は、居なくなった幼馴染みのコトなど忘れている。
『チームキャプテンを任されている、奥多 愛楠です。アグスとお呼びください』
『アグス選手は、ポジションはどこをされているんですか?』
『ゴールキーパーです。ウチは堅守速攻型のチームですので、わたしを始めとしたディフェンス陣が護って、脚の早いフォワードにボールを渡し、速攻で点を決めるスタイルですね』
「な、なあ。このアグスってヤツ、監督みてーなコト言ってるぞ」
クロナミが言った。
相変わらず全員が接客室のテレビに釘付けで、一馬がロランと入れ替わっているコトなど、誰も気付いていない。
「実際に彼は、フィールドの監督とあだ名されているからな」
「そうなんスか、倉崎さん。でも、キーパーとしてはビミョウとか?」
「残念ながら、キーパーとしても超一流でな。彼からゴールを奪うのは、至難の業だ」
「そんなにスゴいキーパーなのですか、倉崎司令?」
「そうだ、杜都。アグスは恐らく、日本はおろか世界レベルのキーパーになるとオレは思っている」
「倉崎司令にそこまで評価されるとは、恐ろしい……」
「まあ、彼の方が年上だケドな」
「プロなのに高校生が主力なのは、ウチくらいだぜ、杜都」
「そ、そうでありました」
笑いが起きる、接客室。
「だけどオレさまたち、年上のプロと戦わなくちゃいけないのかよ」
けれども、クロナミの一言と共に笑いは消える。
『主力選手を、ご紹介いたします。まずは、センターバックの樹莉 海漸(じゅり カイザ)。そして、チェニジアのストライカー、バルガ・ファン・ヴァール選手です』
「が、外国人まで居るのかよ。地域リーグって陣容じゃねェだろ」
「だけどさ、ピンク頭。大した外国人じゃ、ないって可能性も……」
「ないな。ファン・ヴァールは先シーズン、イタリアの2部リーグで27得点を挙げている。今季、イタリアのビッグクラブに移籍するとの噂もあった選手だが……まさか日本の地域リーグに来るとはな」
キャプテンが、タブレットで情報を調べながら言った。
「マジかよ、雪峰。海馬コーチじゃ話にならんぞ!」
「なあ、倉崎さん。ウチも、外国人を獲得しようぜ!」
「無理だ、黒浪」
即答する、スーパースター。
『選手紹介は、以上となります。監督に関しては、イタリア人のスキアビオ監督との交渉に成功し、明日には来日される見込みです』
オーナーのロムが、記者席に向かって言った。
「ゲッ、監督まで外国人かよ!?」
「雪峰、スキアビオ監督って、かなりの名将じゃなかったか?」
「そうだな、紅華。老齢ではあるが、守備戦術は芸術とまで評されている」
デッドエンド・ボーイズにとって、脅威としかならない情報を吐きまくるテレビを前に、集まった一同は沈黙する。
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