ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・64話

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幽体化(アストラリゼーション)

「これは……既に会話など、無意味であったか」
 アクト・ランディーグが、低く槍を構える。
それは対峙する相手を、最大限に警戒しているコトを物語っていた。

「つ、ついに、完全に闇に飲まれたみたいだね。これでキミも、魔族の仲間入りだ……」
 アクトの背に隠れるようにうずくまっていた、血まみれのサタナトスが立ち上がる。

「コロス……タクサン……ハカイスル……」
 普段の舞人とは異なる獣の声が、本能のままに唸りを上げた。

「お下がり下さい、サタナトス様。ここは、わたしが引き受けましょうぞ」
「そうさせて貰うよ。流石に今のボクじゃ、足手まといだからね」
 2人の戦場から離れる、金髪の少年。

「ガアアッ!!!」
 舞人は、両腕の間に漆黒のオーラを発生させ、球状にして射出する。

「ム……これは、即死魔法か!?」
 アクトは深紅の槍で、魔法を薙ぎ払った。

「死神の能力でも、取り込みおったか。厄介な……」
 堪らず間合いを取る、アクト。

「コンナノハ……ドウダ?」
 今度は両手の平に、漆黒の魔法の球を生成する舞人。

「魔法の数を増やすか。だが、冷静に見切れば問題ない」
「クク……ドウダカナ」
 舞人は生成した魔法を、天空都市の地面に向けて放つ。

「な……一体、なにを!?」
「ナアニ、タイシタ コト ジャナイ……」
 不敵に微笑む、漆黒の髪の少年。

「あ、あの力は……!?」
 急に怯え始める、クシィ―・ギューフィン。

 海底都市遺跡として、リヴァイアス海溝の底に沈んでいた、アト・ラティア。
クシィ―やラ・ラーンの目覚めと共にその都市機能を復活させ、天空へと舞い上がる。
街のあちこちには、1万年前の建築物と共に無数の遺体も転がっていた。

『どうされたのです、クシィ―さま』
「あ、あの力は、使ってはならぬ力なのです」
 トゥーラ・ンの問いかけにも耳を貸さず、栗毛の少女は両手で顔を覆った。

「どうやら、禁呪と呼ばれる魔法を使ったようだね」
 サタナトスの瞳に、黒いオーラに纏わりつかれ立ち上がる、1万年前の死者たちの姿が映る。

「こ、この魔法は、リ・アニメーション!?」
「ああ、そうだよアクト。アイツは、死体を蘇らせた……不老不死の魔物としてね」
 サタナトスすら戦慄を覚える、邪悪なる禁呪。

「オイ、どうなってんだ、ギスコーネ。街に転がってた死体が、動き始めやがったぞ!?」
「ボクに聞かれても、困りますよ。これをやったのは、あの蒼髪だった少年でしょう」
「まあそうなんだが……よ。なにがなんだか、サッパリだぜ」

 戦いの最中に死体が甦ったコトで、混乱するバルガ王子とギスコーネ王子。
けれどもそれは、相手も同じだった。

「ど、どうなってやがる。死体が歩き始めたぞ!?」
「こんな魔法、高位の死霊使い(ネクロマンサー)か、死神くらいしか使えないっしょ!?」
「あの小僧、死神だっただか?」

「それはあり得ぬ。ヤツの剣が、かつて吸い込んだ邪神の能力……と言ったところか?」
「セイカイ ダゼ。ヤルジャ ナイカ」
 舞人が、アクト・ランディーグの洞察力を認める。

 禁呪はかつて、ニャ・ヤーゴを襲った死霊の王『ネビル・ネグロース・マドゥルーキス』が使ったモノだった。

 ネビル・ネグロース・マドゥルーキスは、舞人のジェネティキャリパーによって消滅させられ、ネリーニャ・ネグロース・マドゥルーキスと、ルビーニャ・ネグロース・マドゥルーキスと言う名の、双子の少女へと姿を変える。

「そう言えば王都の戦いで、天酒童 雪影の配下だった双子の少女が、使っていた魔法だね」
 サタナトスの言う双子とは、ネリーニャとルビーニャのコトだった。

「フッ、だからどうしたと言うのだ、小僧。干からびた死体がどれホドの数甦ったところで、このアクトを倒すほどの戦力には、なり得ぬわ!」

「幽体化(アストラリゼーション)!」
 舞人が、真っ赤な眼を輝かせる。
すると、甦った死体から無数の白い靄(もや)が抜け出て行った。

「なん……だと。身体が……動かぬ!?」
 白い靄に纏わりつかれ、身動きが取れないアクト・ランディーグ。

「幽体捕縛(アストラル・バインド)……」
 舞人は、ゆっくりとアクトに近づいて行った。

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