ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・55話

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魔剣が与えし力

「ボクだって、ベクとはあんまり戦いたくないよ。ベクって、アホだケド良いヤツだし」
「ア、アホは余計だ。だ、だがスプラ、オメーそいつらと居ると、殺されちまうぞ!」
 穂先が3本の爪になった藍色の槍を持った少年が、スプラ・トゥリーを心配する。

「キミも、知ってるだろ。ボクはダーリンに、強引に操を奪われちゃったからね。もう、ダーリンのモノになるしか、道は残されていないんだ」

「そのダーリンってのを殺せば……全て解決ってコトだろ」
 魔王ベク・ガルは、舞人が埋まっている瓦礫の山を見る。

「ハア、なに言ってんだい。そんなコトしたら、怒るよ!」
「仕方ない。お前が生き残れば、それでイイ」
 ベク・ガルは、サメのヒレのような形状の翼を広げ、舞人の埋まっている瓦礫に向かって突進した。

「藍裂槍『クリ・シュナ』で引き裂いて、完全に息の根を止めてやる!!」
 3本の爪が空間を切断し、瓦礫を吹き飛ばす。

「ダ、ダーリン!?」
 かつての仲間のスピードに反応できなかった、スプラが叫んだ。

「ケケケ。ベクのヤツ、かなりパワーアップしてやがるぜ」
「マジ、ハンパないスピードっしょ」
「オデらも、アレくらいスピードアップしてるだか?」

「どうだかね。キミはスピード方じゃなく、パワー型だろ」
 肩を竦める、サタナトス。

「つまり、それぞれの適正に合ったパワーアップをしてるってコトっスか?」
「アタシらも、試してみたくなったっしょ」
「構わねェえだか?」

「ああ、キミたちにはバルガ王子の部下たちと、しばらく遊んでいてくれ。ただし、ルーシェリア。彼女には用がある」
 金髪の少年は、漆黒の髪の少女を見る。

「解りやしたぜ」
「じゃあ、他のコたちはアタシらの遊び相手てコトっしょ」
「それじゃあ、行くべ」

 メディチ・ラーネウス、ペル・シア、ソーマ・リオの3体の魔王は、ルーシェリアの脇を一瞬で飛びぬけ、背後のスプラやシドンたちに襲いかかった。

「ボクだって、キミたちと同じ7海将軍(シーホース)だったってコト、忘れないでよ!」
 緑触槍『アス・ワン』の触手の傘を、大きく展開するスプラ。

「スプラ、アンタぜんっぜん解かってないっしょ。今のアタシは、お前なんか瞬殺っしょ!」
「きゃあああぁぁぁーーーーッ!」
  破黄槍バス・ラスから放たれた、無数の黄色い棘に貫かれる、スプラ・トゥリー。

「アンタ、前から気に入らなかったっしょ。男相手に、ぶってんじゃねェッしょ」
「ガハッ!」
 倒れたスプラを、足蹴にするペル・シア。

「そんじゃ、オレの相手は優男……テメーだ!」
 蒼き海龍の蒼流槍ジブラ・ティアが、シドンの腹をえぐり取る。

「グアアッ、この攻撃は!?」
 血が滴るわき腹を押える、シドン。

「オレの槍はなぁ。どんな獲物だろうが、えぐり取るぜ。ゲヒャヒャ!」
 細かい歯が無数に生えた槍は、えぐり取った肉を喰い散らかしていた。

「大丈夫か、シドン!?」
「オメー、人の心配より自分の心配した方がイイんだな」
 ベリュトスの背後に、巨大な影が立っている。

「オデの橙引槍『カニヤクマリ』は、なんでも圧し潰すんだな」
「な……グアアァァ!!?」
 ベリュトスは槍を受けるが、受けた槍はあまりに重かった。

「巨大なバラクーダさえ釣り上げる、オレが支えきれない……だとォ!?」
 片膝を付き、やがて全身を地面に打ち付ける漁師兄弟の弟。

「フフフ、彼らも気に入ったみたいだね。プート・サタナティスが与えた力を」
 配下の激しい戦闘も、まるで涼風のごとく気に留める素振りも無く歩く、サタナトス。

「ヤレヤレじゃのォ。お主の剣は、ご主人様のジェネティキャリパーと共鳴して、力を失っておるのでは無かったのかェ?」
 そのヘイゼルの瞳に映り込んだ、少女が言った。

「キミの主人の剣と、同じ理由だよ。主たる能力は失っているが……」
 背後に視線を流す、サタナトス。
そこには、ベク・ガルが立っていた。

「……なッ……お前、生きてやがったのか!?」
 背後を振り返る、ベク・ガル。
彼自身が巻き上げた、瓦礫の土埃の向こうに、人影が浮かび上がった。

「なるホドのォ。剣の、もう一つの能力じゃな」
 ルーシェリアの紅い瞳が、サタナトスに向けられる。

「キミの主人の剣が、自身の肉体を強化するように、ボクの剣も魔族や魔物を強化できるのさ」
 金髪の少年は、アメジスト色の剣を高らかに掲げた。

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