ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・68話

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アクロポリス侵攻

 周囲の地表から、27000メートルの標高を誇る、太陽系惑星最大の山、オリュンポス山。
その麓(ふもと)に築かれたアクロポリスの街は、時の魔女の軍勢によって破壊しつくされていた。
燃え盛る街を、必死に逃げ惑う人々の群れ。

「おお、見ろよ。アレは、マーズ宙域機構軍のサブスタンサーじゃないか!?」
「マーズ軍のサブスタンサーが、いきなり現れたあの四角いヤツらを倒しているわ」
「だけど、マーズって死んだんだろ。どうして?」

 鳥やライオン、魚を彷彿とさせる外観を持った、『グェラ・ディオ―・シリーズ』のサブスタンサーたちは、それぞれの特性に適した戦い方で、Q・vic(キュー・ビック)と交戦していた。

「理由なんて、どうだっていいわ。あの四角いヤツのせいで、大勢死んでるんだ」
「と、とにかく、助かるかも知れないってコトよね!?」
「詮索は、生き残ってからだ。急いで地下都市へ、逃げ込むぞ」

 人々は、火星開拓時の居住空間だった地下都市へと逃げ込む。
現在は隕石などの天災に備えた、避難場所として設定されていた。

「やはりマーズの火星艦隊が、新たに装備していたサブスタンサーですよ、アポロ」
「だが、色が異なるぞ」
「ええ、そうですね。火星宙域での戦闘時は、もっとハデな色に見えましたが……」

 グェラ・ディオ―・シリーズの僅かな異変に、疑問を浮かべるアポロとメリクリウス。

「事態は好転していると言って、良いのかも知れぬが……」
「ええ、好転と言うには、余りに不可解過ぎます」
 黄金と水色の2体のサブスタンサーが、上空を見上げる。

 真っ赤に染まった黒煙の立ち昇る宇宙には、異形のサブスタンサーが浮かんでいた。

「クーリア、戻って来い。今なら、まだ間に合う」
 ボクはゼーレシオンのコクピットハッチを開け、異形のサブスタンサーに向かって手を伸ばす。

「いいえ、もう手遅れなのです。艦長の側に戻るには、わたくしは罪を重ね過ぎました」
 フラガラッハが斬り裂いたQ・vava(クヴァヴァ)の首元の隙間から、哀しい瞳をした少女の顔が覗いた。

「そんなコトは無い。キミは時の魔女に操られていただけで……」
「艦長が、わたくしの元に来てはくれないのですよね……」

「クーリア……それは、出来ない」
「ええ、解かっておりました。ですから……」

 異形のサブスタンサーの頭部から伸びた、クワトロテールが展開される。
それぞれの先端に付いた龍の形状をした頭部から、フォトンブラスターが放たれた。

「クソ、なんでなんだよ!」
 ボクは慌ててコクピットハッチを閉じ、光子の炎を盾で防いだ。

「なッ、ぐわあああぁぁぁッーーーーーーーーーー!?」
 ボクの目がゼーレシオンの巨大な瞳と再びリンクした瞬間、Q・vavaの巨大な長く伸びた尾が、鞭のようにしなってゼーレシオンを弾き飛ばす。

「ガハッ!?」
 白き巨人は、アクエリアス区の地面を突き破って、人々が避難する地下都市にまで叩きつけられた。

「……クー……リア……」
 暗い天井に空いた穴から、僅かに見える火星の空。
ビルにめり込んだゼーレシオンによって、何人の命が失われただろうか。

「ボクも……大勢の人を……殺してしまった……キミと……」
 朦朧とする意識は、やがて完全に途絶えた。

 クーヴァルヴァリアと名づけられた艦の就航式は、時の魔女の軍の乱入で最悪な展開を見せ、マーズ宇宙機構軍の投入で収束を迎えるコトとなる。

 後に、『アクロポリス侵攻』と名付けられた戦いによって、街は多大なダメージを負った。
正確な戸籍データベースを元にした、AIによる正確な集計によって、1億7869人の人命が失われたコトが判明する。

 それでも、ヴェルダンディが予測した数字より遥かに小さかったのは、マーズ宇宙機構軍の予想外の投入と、人々が早い段階で地下都市へと避難できたからだと言う結論が、彼女自身から出された。

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