ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・65話

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ロムルスとレムス

「ち、父上……」
「我らに……名を……お与え下さい」

 軍神(マーズ)の前で、瞬く間に成長を遂げた2人の少年が、綺麗な声で言った。
美しい金髪の美少年は、1人は真っ白な肌をしていたが、もう1人はナキアや彼自身と同じ褐色の肌をしている。

「なるホド、お前たちのそれぞれに、オレとナキアの特徴が現れているのだな」
 マーズの髪は赤く、肌は褐色をしていたが、それは先天的なモノではなく、本来の彼の髪は金髪で、肌の色は純白だった。

「そうだな。お前は、ロムルスと名乗るがよい」
 マーズは純白な肌の美少年に、ローマ建国の英雄の名を与えた。

「わたしが……ロムルス……わたしの名は、ロムルス……」
 自分の名を繰り返す、純白の肌の美少年。

「お前には、レムスの名を与えよう」
 軍神は褐色の肌の美少年に、兄によって殺害された双子の弟の名を与えた。

「ボクが……レムス。ボクの名は、レムス!」
 褐色の肌の美少年は、与えられた名に喜び、はしゃいでいる。

「ロムルスとレムス……それが、お前たちの名だ」
 マーズがそう言い放つと、双子の美少年はしっかりと頷いた。

「お前たちは双子だが、ロムルスを兄、レムスを弟とする。伝説でのお前たちは、互い争い兄によって弟は殺された。だが、戦争と殺戮を象徴する軍神の息子として、争いは厭(いと)わん」

「父上、ですが互いに争うより、まずはこの太陽系を統べるのが先決でしょう」
 ロムルスが、偉大な父親に意見した。

「ボクも兄上の言う通りだと思います。最初の一手として、アクロポリスの街と宇宙港を制圧し、火星の民に父上の尊名を知らしめましょう」
 レムスも、兄の意見に追従する。

「レムスの策はそれとして、一刻も早く制圧すべきはディー・コンセンテスです。アポロやメリクリウスが敵対するのは致し方ありませんが、バックス辺りは現実的な理を解けば、味方に引き入れるコトが可能でしょう」

「なるホド、流石は兄上だ。だとしたら、土星圏のサターンや月圏のディアナも交渉次第では味方に……そうで なくとも、不戦を取りつけるコトが可能かも知れません」

「生まれたばかりの0歳児が、ここまで情勢を把握し、オレに意見するか。面白い、ハハハ」
 満足そうな笑みを浮かべ、豪快に笑う軍神。

 マーズは、見開いたままのナキアの瞳を閉じ、弾け飛んだ腹部に白いシーツをかけた。
純白のシーツが赤く染まるのを、しばらく眺めていた軍神だったが、やがて医療室を後にする。
生まれたばかりの2人の息子も、父に従った。

「だが、オレには太陽系を統べるどころか、この火星を制圧できる規模の軍隊すら無いのだぞ?」

「現時点で父上が保有する戦力は、今いる超巨大空母ナキア・ザクトゥとその艦載アーキテクター、それに父上のサブスタンサーと乗艦であるグラー・ディオスですね。兄上、良き策はございますか?」

「ウム、まずは火星圏に展開している、6個艦隊を呼び寄せるのが良いかと思われます」
「確かにな……とは申せ、ロムルス。6個艦隊は、火星のラグランジュポイントに配備されておる。集結には、時間がかかろう?」

 火星が太陽を公転する軌道上にあるのがラグランジュポイントであり、太陽を挟んで対局に位置する場合などは、とてつもなく遠く離れている。

「ご心配には及びません、父上。モニターをご覧ください」
 3人はすでに、ナキア・ザクトゥの艦橋に立っていた。

「こ、これは……オレの艦隊が、時空の狭間からワープして来やがる!?」
 モニターには、狼のエンブレムが施された深紅の艦艇が、火星の空のあちこちからワープアウトするのが映し出されていた。

「その通りです、父上。今こそこれらの艦隊を使って火星を制圧し、太陽系を支配する時なのです」
 雄弁なロムルスが、父をたきつける。

「ロムルス。お前に、母の名を持ったこの艦と、センナ・ケリグー、それに4個艦隊をくれてやる。ナキア・ザクトゥを旗艦として艦隊を指揮し、存分に暴れて見せよ」
「ハッ、直ぐに火星を制圧してご覧に入れましょう」

「レムス、お前はオレと来い。これからグラー・ディオスに移って、アテーナー・パルテノス・タワーに向かう。ヤツ等が動き出す前に、手を打つのだ」
「ハッ!」

 マーズは艦橋をロムルスに渡し、レムスを伴ってバックヤードに入った。
自身のサブスタンサー、マー・ウォルスに乗り込むと、息子を右腕に乗せる。

「堕ちるなよ、レムス」
「心配はご無用です」
 赤いサブスタンサーは、火星の空へと飛び立って行った。

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