ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・47話

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イ・アンナ

『サタナトスよ。お前は、この世界の王となって何を望む?』
 ラ・ラーンと呼ばれる黄金の戦士は、虚城の玉座に鎮座する少年に語りかける。

「そうだねェ。とりあえずは、人間どもの駆逐かな。そしてボクを頂点に、魔族を中心にした世界を創り上げる。他にも目的はあるんだが、それはまだチョット言えないかな」

『アナタは、人間がお嫌いなのですか?』
「嫌いだね。完全に、この世から消し去りたいとさえ思っているよ」
 トゥーラ・ンと名乗る銀色の女神の、質問に答えるサタナトス。

『この小僧が人間嫌いな理由も、容易に予想は付くだろうよ、トゥーラ・ン』
 マ・ニアと称する黒鉄色の魔女が、しゃがれた声で言った。

『サタナトスと名乗る小僧の身体には、半分は人間の血が、もう半分は魔族の血が流れておる。どちらの種族か、あるいは双方から迫害を受けたのじゃろうて』

「なかなかに賢しいじゃないか、マ・ニア。確かにキミの言う通り、ボクと妹はかつて、人間たちから迫害を受けた。人間など、ウソを言い人を騙し、同族同士で争い、戦争や殺戮を好む、愚かな種族さ」

「初耳ですな。サタナトス様に、妹がいらしたとは……」
 アクト・ランディーグと言う名の紫色の海龍が、主の顔色を伺いつつ問いかける。

「勝手に妹を、殺さないでくれよ。彼女は、まだ生きている」
「これは出過ぎたマネを……申し訳ございません」
 怒気を荒げるサタナトスに、アクトは平伏した。

『なれば何故アナタは、人を憎むのです。妹と共に、何処か人の手の及ばない場所で暮らすと言う選択肢も、あったでしょうに』
 聖母のように優しし顔を向ける、トゥーラ・ン。

「その選択肢は、とうの昔に人間どもの手によって奪われたさ。ヤツらはキミみたいに、慈愛に満ちてはいないからね」
 金髪の少年の脳裏に、アズリーサやケイダン、幼くして魔王の生贄とされた孤児たちの顔が浮かぶ。

「せめてヤツらは、妹を殺すべきだった……」
 小声で呟いたサタナトスの視線は、大海原の彼方に向けられた。

 彼が見つめる紺碧の海の下には、魚たちの楽園が広がっている。
更に潜った海底には、パックリと巨大なクレバスが大きな口を開けていた。
この海の渓谷を潜って行くと、かつて栄華を誇ったアト・ラティアが、遺跡と化し眠っている。

 1万年もの間、静寂が支配していた深海に沈んだ、黄金の海底都市。
けれども今は、遺跡を守護する金属の巨人と侵入者たちによって、沈黙は破られていた。

「アラドス、死ぬな。お前まで、死んじゃならねェ!」
 ファン・二・バルガ王子が、両足と左腕を失った男に命令する。

「ス、スマンな……王子。どうやらワイも、ここまでのようや……ゴホッ」
 鮮血が、アラドスの口から噴き出した。

「ふざけんじゃ無ェ。ティルスが死んで、ビュブロスが死んで、お前まで死ぬってのかよォ!?」
 血まみれの男を抱きかかえる王子は、自慢の海皇パーティーのウチすでに2人を失い、もう1人も虫の息である事実を、受け入れられないでいた。

「まさか金属の獣まで、おるとはのォ」
 槍を身構えるスプラ・トゥリーと、背中を合わせるルーシェリア。
彼女たちの周りを、金属の身体のライオンや狼たちの群れが、口から血を滴らせ取り囲んでいる。

「上にいる鳥たちも、巨人くらいの大きさがあるよ」
 巨大な鳥のような姿をした金属の魔物が、大魔王が穿った洞窟の上空を窮屈そうに旋回していた。

「仕方ない、ジェネティキャリパーの能力を開放して、身体を強化するしか……」
「待つのじゃ、ご主人サマよ。それは、最後の手段じゃ」
「え、でも他にこの場を切り抜ける方法なんて、あるのか?」

「そう言えばキミ、地上の国の女王から魔剣を貰ったって言ってたよね?」
「まあ、そう言うコトじゃ。そろそろ使わねば、なるまいて……」

 ルーシェリアは異空間から、黒い剣を顕現(けんげん)させる。
それは6枚の翼の鍔(つば)を持った、美しい剣だった。

「銘を『イ・アンナ』。全てを押し潰して飲み込む、混沌の魔剣じゃ」
 剣は禍々しい黒いオーラを発生させ、それによって少女の漆黒の髪が棚引く。

「ル、ルーシェリア……これは!?」
「少しばかり離れておれ、ご主人サマよ。此奴(コヤツ)らを、一掃するでの」
 イ・アンナから流れ出るオーラが、一箇所に集まって漆黒の球体となった。

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