ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第06章・60話

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Q・vava(クヴァヴァ)

 黄金のサブスタンサーが構える、フォトンライフルの銃口の前に立ちはだかったクーリア。

「アポロ……わたくしに向かって、引き金を引けますか?」
 火星の上空で再開した許嫁どうしだが、状況は混沌を極めていた。

「お前の身体は、今や完全に時の魔女の支配下にある。火星艦隊の指揮を任されるこのわたしが、躊躇すると思うか……」
 右腕の人差し指に、力を込めようとするアポロ。

「ウフフ、まだ貴方はわたくしを、想って下さっているのですね」
 引き金を引くコトが出来ない太陽神を嘲(あざけ)る、漆黒のローブの少女。
すると彼女の背後の空間が、黒く歪んだ。

「いけない、アポロ。離れて!」
 メリクリウスさんが叫ぶ。
けれども時既に遅く、アー・ポリュオンは時空の裂け目から現れた、無数の触手に絡め捕られていた。

「アポロさん!」
 ボクはフラガラッハを鞘から展開させ、触手を斬り払う。
斬られた触手は、異空間へと引っ込んで行った。

「ス、スマン。わたしとしたコトが、この期に及んで甘さが出るとはな……」
 黄金のサブスタンサーはクーリアから距離を取り、体制を立て直す。

「オイ、艦長。後ろだ!」
「な、なんだッ!?」
 ゼーレシオンが、振り返る。

「く、空間から……黒いサブスタンサーが……!?」
 クーリアの背後の空間からは更に、漆黒のサブスタンサーが姿を現そうとしていた。

 大きさは70メートルほどと、キガンティス・サブスタンサーのサイズがあり、両肩と身体の前後に大きな花びらのようなパーツが、マントかポンチョのように装備されている。
パーツの間からは、カマキリの鎌を持った4本の長い腕が伸びていた。

 マントの中は女性的なフォルムをしており、腰にも小さな花びらのようなパーツが巻き付いている。
下半身は脚ではなく、ドラゴンのような長い尾となっていて、伝説上の生物であるナーガやラミアーを連想させた。

「こ、これが『時の魔女』の、サブスタンサーなのか!?」
 『異形』を具現化したような巨大サブスタンサーに、ボクは戦慄を覚える。

「いいえ、宇宙斗艦長。これはわたくしの、サブスタンサーなのですよ……」
 巨大サブスタンサーの顔が上にせり上がり、中からコックピットが現れた。
クーリアはそこへ、吸い込まれて行った。

「待つんだ、クーリア。キミは、そんなモノに乗っちゃいけない!」 
 ゼーレシオンで接近を試みるものの、目に見えないバリアのような何かに阻まれる。

 女神像のような顔の両目が、赤く輝く……と同時に、頭部からはクワトロテールが長く伸び、先端の龍のようなパーツが、大きく口を開けた。

「これじゃまるで、テュポンじゃねえかッ!」
 プリズナーが、台風の名前の由来ともなった怪物の名を挙げる。

「無粋な名前ですコト。そうですわね、『Q・vava(クヴァヴァ)』と、名付けましょう」
 クーヴァルヴァリアが口にした名前は、セノンが呼んだ彼女のあだ名に近かった。

「気を付けろ、わたしを襲った触手は、このサブスタンサーからのモノでは無い!」
「な、なんですって!?」
 アポロさんに忠告されたメリクリウスさんが、部下のサブスタンサーを周囲に集めて警戒する。

 アクロポリス空港の上空に、無数の時空の裂け目が発生し、その中から四角い立方体が出現した。
浮遊する巨大なサイコロ本体の辺からは、無数の触手が生えている。

「このコたちは、『Q・vic(キュー・ビック)』とでも、名付けましょうか」
 キュー・ビックの半数は、アクロポリス空港や12区画ある街へと降下して、触手の先端からビームを発射して逃げ惑う人々を爆撃する。

「や、止めろ!」
 ゼーレシオンの斬れぬモノの無い剣が、触手の立方体を一頭両断にした。

 けれども出現した巨大サイコロの数は余りに多く、アクロポリスの街は炎に包まれた。

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