3年VS1年
「クッソッ、こぼれ球を決められちまったじゃ無ェか。斎藤、ちゃんとボールに詰めろッ!!」
柴芭さんにゴールを許した小柄でハデなキーパーが、センターバックの人に怒ってる。
「すみません、川神先パイ。伊庭なら、最初のシュートをキャッチしていたハズですので」
「なんだとォ、オレだからこぼしたってェのか!?」
「次からは、詰めます」
センターバックの人はクールに去って行ったケド、キーパーの人がグローブを地面に叩きつけてる。
千葉委員長以外にも、色々ともめてるのかな?
「オイオイ、もう同点かよ。ウチの守備は、脆いときは脆いな」
「しゃ~ねェだろ、仲邨。いつものコトだ」
「ま、それもそうだな。取られたら取り返す……シンプルに行くか」
曖経大名興高校のボールで、試合が再開された。
岡田さんからボールを受けた仲邨さんが、猫背のドリブルでデッドエンド・ボーイズ陣地へと切れ込む。
「岡田と並ぶ相手のキーパーソン、仲邨 叛蒔朗だ。何を仕掛けて来るか解らない。注意しながら当たってみてくれ、杜都」
「了解であります、雪峰司令!」
デッドエンド・ボーイズのキャプテンの指示により、ボールを持ってる仲邨さんにプレッシャーをかける杜都さん。
「意外に、なにも仕掛けて来ない感じであります。これなら……」
相手の隙を付いて、得意のスライディングタックルを仕掛ける。
「待て、杜都。それは誘いだ!」
雪峰さんが叫ぶが、時すでに遅しだった。
「うォわアアァ!!?」
杜都さんの足が、ボールを僅かに浮かせた仲邨さんの足にかかり、豪快に転倒させてしまう。
仲邨さんは地面を激しく3回転ほど転がった後、やっと止まった。
審判を務める曖経大名興高校サッカー部顧問の先生から、イエローカードを提示される杜都さん。
「オイオイ、どんだけハデに転げ周るんだよ。ハリウッドの、役者か!」
「オーバーアクションが、過ぎますね」
紅華さんと柴芭さんが、ヒザを指さし痛がってる仲邨さんに呆れてる。
「へへ……とりあえず、ゴール前絶好の位置でのフリーキックか。オレが決めちまってもイイんだが、岡田と1年との勝負もあ……ああッ!?」
いきなり大声を上げる、仲邨さん。
「しまった、戻れ。既に試合が、再会されてるぞ!」
雪峰さんが、バックラインに指示を出すが、ボールは桜色の髪の選手によってバックラインの裏に出されてしまっていた。
「い、委員長!」
ボールは、ボクのクラスのクラス委員長へと渡る。
千葉 蹴策のキレイなシュートが、海馬コーチの右脇を抜けて決まった。
「オイコラッ! なに勝手に試合再開してんだ、桃井!」
仲邨さんが、桜色の髪の選手に怒ってる。
「まあ、決まったから良しとしてくださいよ、仲邨先パイ」
「ふざけやがって、覚えてやがれ!」
シュートが決まってリードしたのに、険悪なムードの相手チーム。
「岡田先パイ、これでお互いに1点ずつ……オレもこの試合、ハットトリック狙ってるんで」
ゴールを決めた千葉委員長は、岡田さんとすれ違いざまになにかを呟いた。
「ヤレヤレ、今年の1年はマジで生意気なヤツらばかりだぜ」
岡田さんは、ニヤリと笑う。
「あ~あ、向こうのピンク頭に、やられちまったじゃないかよ」
「だったら、取り返すまでよ」
「オ、ウチのピンク頭が、本気になったか?」
「ウッセー、駄犬!」
黒浪さんとなにやら言葉をかわした紅華さんが、華麗なドルブルで攻め入る。
「キミに仕事はさせないよ!」
「ああ、そうかよ!」
プレッシャーに来た桃井さんを、いとも簡単に振り切る紅華さん。
「やはり、紅華のドリブルは凄まじな。だが……」
倉崎さんのサングラスに、灰色の髪をした相手のセンターバックが映る。
「あの人は……?」
「斎藤 夜駆朗(さいとう やくろう)。アイツを抜かない限り、ウチは点を取れないだろうな」
ボクは、固唾を飲んで勝負の行方を見守った。
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