ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第六章・EP028

f:id:eitihinomoto:20191113233812p:plain

男の覚悟

 曖経大名興高校の、薄暗い更衣室に緊張が走る。

「テメーら、1年のクセにいい気になりやがって、コラァ!」
「千葉ァ、オメーもレギュラーに選ばれたからって、岡田さんより点取るだァ?」
「寝言、言ってんじゃ無ェぞ!!」

 千葉、斎藤、桃井、伊庭の並んだ4人の1年の周りを、オラつきながら取り囲む2年の先パイたち。

「オイオイ、マジで言ってんのか、千葉ちゃんよォ。岡田の実力は、お前だって知ってるだろ?」
 猫背で、椅子に反対向きに座った仲邨 叛蒔朗が、ニヤつきながら言った。

「はい。ですが、それも承知の上です」
 殴られた口元の血も、乾かないままの千葉が答える。

「斎藤、テメーも生意気なんだよ。なんでオレがサイドバックで、テメーがセンター張ってやがる」
 いかつい図体の棚香 心平が、頭に青筋を立てながら怒気を荒げた。

「棚香先パイは、対人強いですケド足元が弱いです。テクニックやスピードのある相手にファウルを取られるなら、ペナルティエリア内よりサイドの方が……」
「うっせーんだよ。悪かったなァ、テクニックもスピードも無くてよォ!!」

「それに伊庭、正ゴールキーパーはこのオレだかんな。ちょっとばかり背がデケェからって、のぼせ上がってんじゃ無ェぞ」
 自らデザインしたハデなユニホームの川神 治晃は、ノッポな1年ゴールキーパーを指さす。

「ウス……」
「ウス、じゃね~よ。お前、ホントにわかってんのか?」
 短く頷くだけの伊庭に、小っちゃな3年キーパーの機嫌はさらに悪くなって行った。

「まあ良かろう。千葉、お前の提案に乗ってやるぜ」
 岡田 亥蔵は、10番のユニホームに袖を通しながら、後輩の提案を承認する。

「いいのかよ、岡田?」
「こんな生意気な1年共を使うくらいなら、2年でも出してやろうぜ」
「つってもウチの2年、実力も性格もゴミだかんな」

 『曖経の四凶』の残る3人は、岡田が提案を了承したコトに納得が行かない。

「勝負ってのは、乗らなきゃ楽しめ無ェ。それに、オレが負けるハズ無いだろ?」
 岡田は、ヘビのような鋭い眼光で3人を睨んだ。

「ま、まあそうだな。ウチは、レギュラーの8人が3年だ」
「3人しかいないお前らが、どうやって岡田より得点を上げられるってんだ?」
「退部を覚悟っつったな。部を辞める用意はしておけよ」

 千葉たち4人の1年は、自分たちで提案した勝負に勝つことの、難解さを改めて思い知る。

 時間は試合へと戻り、曖経大名興高校は岡田 亥蔵のゴールで、デッドエンド・ボーイズからリードを奪っていた。

「まずは1点だ。少なくともオレは、ハットトリックは決めるぜ」
 岡田は、千葉 蹴策の横を通り過ぎて行く。

「オレだって、負けません。男が一度吐き出した言葉は、実現しなきゃ意味が無いですから!」
 後輩の言葉に岡田は1度足を止めたが、なにも言わずに歩き去った。

 試合は、デッドエンド・ボーイズのボールで再会される。

「見ろ、一馬。この荒れたグランドにアイツら、もう対処しているぞ」
 車椅子の倉崎さんが、言った。

 ホントだ、まずはテクニシャンの紅華さんのドリブルが、サイドを切り裂く。
ボコボコのグランドでも、なんとかボールを操ってる。

「流石にエラシコやシザーズは、最低限しか使え無ェな。さっさとボールを、アイツに送っちまうか!」
 相手の右サイドバックを難なく突破し、中央にクロスを送る紅華さん。

「オシ、ナイスだ、ピンク頭!」
 フラットに並んだ曖経大名興高校のバックラインから、黒浪さんが俊足を活かして抜け出す。

「トラップしたら、直ぐにシュートだ。このグランドじゃ、高速ドリブルはムリだかんな!」
 黒浪さんのシュートが、ゴールの右隅に放たれた。

「させるか。1年が、見てんだぞ!」
 小柄なゴールキーパーが、宙を舞う。

「あ、ボールが弾かれた!」
 思わず声を出す、ボク。

「だが心配はいらない。柴芭が、見逃すハズが無いからな」
 倉崎さんが言った通り、こぼれ球に反応した柴芭さんのクリーンシュートが、曖経大名興高校のゴールに吸い込まれていた。

 前へ   目次   次へ