ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

ある意味勇者の魔王征伐~第11章・29話

f:id:eitihinomoto:20190914042011p:plain

深海の宮殿

「ここが、伝説の都アト・ラティアなのか。確かに黄金の凝った彫刻のされた、とんでもねェ建物ばかりの街並みだぜ」
 6匹の深海ザメに乗って、失われた古代都市の遺跡を進む、バルガ王子率いる海皇パーティー。

「かつてはここに、大勢の人が暮らしていたのでしょうか?」
「らしいぜ、ティルス。あちこちに、人の骨みてーなのが散乱してやがる」

「なあ、兄貴。コイツら、どうやって死んだんだ?」
「どうってオメー。海の民なら溺れるワケもねェだろうし、地震かなんかじゃねえか?」
「そりゃちゃうやろ。骨の上に、崩れた岩や建物の残骸もあらへんしな」

「アラドスの推理が、正しいですね。彼らは、溺れ死んだのですよ」
「マ、マジか。シドン!?」

「ええ、王子。ここに降りて来る途中の海溝の壁に、幾つもの溝が横に走ってました。恐らく海水の水圧を弱める機構を、何重にも重ねて使っていたんだと思われます」

「カル・タギアの、泡のドームみたいなモノでしょうか?」
「少し、異なりますね。泡のドームは魔法によって形成されますが、このアト・ラティアの機構は古代の超テクノロジーによって、強大な水圧を押さえていたのでしょう」

「確かにカル・タギアは、珊瑚が生息できるくれェの海だ。レヷイアス海溝の底にある、アト・ラティアにかかる水圧は、一体どれ程なのかはかり知れねェぜ」

「けれども水圧を抑える機構が、何らかの理由で失われた。彼らは深海の水圧に押し潰され、溺れ死んだのでしょう」

「ここに暮らしてたヤツらは、海を泳ぐ能力は無かったのか?」
「恐らくは。人骨のどれもが、我々海の民よりも地上の民に近い形をしてますからね」

「ですが、シドンさま。我々は今、古代の海の民が使ったとされる、深海の魔法によってこの深海でも無事で居られるんです。深海の魔法は、ここに暮らす彼らが生み出したモノでは、無いのでしょうか?」

「推測に過ぎませんが、深海の魔法はもっと後の時代の海の民が、編みだしたのでしょう。もしかしたら彼らは、このアト・ラティアに住んでいた者たちの末裔かも知れません」

 海洋生物学者であるシドンを中心に、在りし日の古代文明を推測する海皇パーティー。

「古代に思いを馳せるのも、ここまでみてーだぜ。どうやらオヤジは、あの宮殿の中だ」
 先頭を行くバルガ王子が、街の中心にそびえる巨大宮殿を指さした。

 黄金の巨大なドーム状の屋根に覆われた宮殿は、その周囲にいくつもの塔を備え、さながら要塞を思わせる造りをしている
正門から宮殿へと続く道の左右には、海の生物を象った彫刻が並んでいた。

「王子、お気を付けください。ここで海皇様を魔王にしようとしていると言うコトは、サタナトスはこの古代都市遺跡を知っていたと言うコトになります」

「なるホドな、シドン。狡猾なアイツのコトだ。どんな罠が仕掛けられているか、解らねェ。気を引き締めて、行くぞ!」
 王子の号令と共に、警戒しながら固まって宮殿へと突入する海皇パーティー。

「こ、この神殿、中に空気がありやすぜ!?」
「ホントだ。玄関の扉から、水が一切入って来ねェ」
 ビュブロスとベリュトスの漁師兄弟が、サメから降りて内部の様子を確認する。

「空気があろうが無かろうが、海の民には大して関係ねェ。突っ込むぞ」
「王子、お待ちください。罠(トラップ)です!」
 ティルスが巻貝のクナイを投げると、目玉の化け物が悲鳴を上げながら地面に落ちた。

「ゲゲ、コイツら、透明になっとたんか。ちゅうコトは、こっから先も魔物がウヨウヨおるでェ!」
「構わんさ、アラドス。出迎えとあらば、斬り伏せて進むまでだぜ!」
 黄金の長剣を抜き、次々に現れる魔物の群れを撃破するバルガ王子。

「王子、スゲェぜ!」
「アレが、王子の新たな剣なのかよ!?」
 漁師兄弟も、自慢の銛で王子の左右を固める。

「海の宮殿だけあって、タコやイカの魔物もぎょうさんおるわ。料理人としちゃあ、さばきがいあるで!」
 アラドスも、両手の包丁で魔物を切り裂いた。

 海王パーティーは、神殿の奥深くへと突入して行った。

 前へ   目次   次へ