ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP016

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直接対決

「オラ、死ねや!!!」
 地面に倒れた千葉 沙鳴の頭上に振り下ろされる、砂で汚れた木製バット。

「きゃああぁぁーーーッ!!?」
 ツインテール少女の悲鳴が、河川敷に木霊した。

「さ、沙鳴ァ!?」
「いやあぁぁ!!」
 バドミントン部の少女たちも、友人である少女の頭部がザクロのように弾け飛ぶ光景から目を背ける。

「オイ、なんのマネだ……」
 岡田 亥蔵が、言った。
その鋭い眼光が、ボクを睨んでいる。

「ア、アレ……沙鳴が生きてる!?」
「良かったァ!」
「で、でもどうして?」

 河川敷の土手にうずくまる千葉 沙鳴が、無事なのを確認し安堵するバドミントン部の少女たち。
ツインテール少女の前には、バットとサッカーボールが転がっていた。

「あの1年……サッカーボールで、岡田さんのバットを弾き飛ばしやがった!」
「ま、まあ、ある意味、感謝だケドよ……」
 曖経大名興高校サッカー部の先輩たちも、全員がボクに視線を向けていた。

注)この時も御剣 一馬は、クールな表情のまま眉一つ動かしてはいない。

「随分とナメたマネ、してくれてんな」
 岡田さんは、地面に転がったバットをつま先ですくい上げる。

 いや、だってそうしないとあのコ、死んじゃってたし。
そんなコトになったら、岡田先輩もサッカー部もマズいでしょ!?

「お、岡田さん!?」
「一体、何を!?」
 宙を舞ったバットに、視線を集める先輩たち。

「ドラァッ!!」
 岡田さんは、とんでもないスピードの振り脚で、サッカーボールをインパクトした。

「……!!?」
 ボールは、凄まじいシュートとなって宙を舞うバットを真っ二つに粉砕し、土手の上にいたボク目掛けて飛んで来る。

 ど、どうしよ!?
避ける……でも、ボール取りに行くの面倒だし……。
ボクは、ヘディングを選択した。

「あ、あの1年、ヘディングで岡田さんの弾丸シュートを、トラップしやがったぞ!?」
「あの勢いのシュートの威力を、ヘディングでゼロにしたってのかよ!?」
 先輩たちが、土手の下でなにやら驚いている。

「さ、沙鳴の彼氏、スゴすぎ……」
「カッコいいし、クールだしィ、わたしまでホレちゃうかも!」
 バドミントン部のコたちも、ナゼかボクを見てキャアキャア言ってる。

「面白れェ1年だぜ。ま、続きは明日の試合に、取って置いてやるよ」
 岡田さんはそう告げると、土手の下の練習場から立ち去った。

「ま、待ってくださいよ、岡田さん」
「練習は、イイんスか?」
「イイよ。ンなモン。オメーらテキトーに、走り込んどけ」

 先輩たちもゾロゾロと、岡田さんの後を追って河川敷を出て行く。

 とりあえず、なんとかなった……のかな?
でも明日の試合が、メチャクチャ心配だ。

 それより沙鳴ってコ、ケガとかして無いだろうか?
ボクは、河べりの土手を滑り降り、ツインテール少女の元へと向かった。

「沙鳴、だいじょうぶ?」
「そこら中、擦りキズだれけじゃない!?」
 見ると少女は、ヒジやヒザから血を流し、制服も泥や砂で汚れている。

「ア……アタシ、恐くて……それで……」
 少女の顔に、竹刀で飛び掛かって行った時の元気はなく、涙を流しガクガク振るえていた。
脚をギュッと閉じ、汚れたスカートを必死に抑えている。

「さ、沙鳴。アンタ……」
「恐かったんだね。仕方ないよ」
「アンタはわたし達のために、戦ってくれたんだから」

 バドミントン部のキャプテンらしき少女が、着ていたジャージを脱いで千葉 沙鳴の下半身を隠すようにかける。

「アタシ……なにも出来なくて……アタシ……」
 ツインテール少女は、みんなに囲まれながら嗚咽して泣いた。

「でも、困ったね」
「この脚じゃ、立って歩くのなんてムリだわ」

 そう言えば彼女の右脚、岡田先輩のバットを喰らったんだ。
うわあ、真っ赤に腫れあがってる。

「どうします、キャプテン?」
「そうだねェ。沙鳴の家は実はこの近くだから、わたしがなんとかオブって運ぶか……あ!?」

 ボクは千葉 沙鳴を、両腕で抱え持ち上げていた。

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