ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP015

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狂気のバット

 一瞬にして、2人の男を地面に這いつくばらせた竹刀の少女。
その背中には、バドミントン部の少女たちが怯えていた。

「ちょっと、沙鳴。だ、大丈夫?」
「まだアイツら、たくさん居るよ」
「あんなに大勢に襲い掛かられたら、いくら沙鳴でも……」

「ダイジョブ、ダイジョブ。あんなのがいくら束になったって、この千葉 沙鳴には勝てやしないわ」
 少女は竹刀を中段に構え、サッカー部の先輩たちをけん制する。

「クッソ、よくもやりやがったな!」
「だがこの人数相手に、竹刀1本でどこまで出来るかな?」
「真っ平らな胸の小娘(ガキ)が、痛い目見せてやんぜ!」

「だァ~れが真っ平よ、失礼ね。これでもほんのチョットだけ、大きくなってんだから!」

 ……そうなんだ。
土手の上に取り残されたボクは、ツインテール女のコとサッカー部の先輩たちとの死闘を見守った。

「ハア、ハア。く、口ほどにも無いわね」
 息を切らせつつも、千葉 沙鳴は先輩たちの撃退に成功する。

「チ、チキショウ。やたらと強ェな、この小娘」
「間合いに入った途端、突きが飛んで来るぜ」
「みんなで一斉に飛び掛かって、羽交い絞めにしてボコるか?」

「待ちな、見っともないマネしようとしてんじゃねェよ」
 すると、大勢が倒れていた先輩たちの後ろから、銀色の髪をした長身の男が現れた。

「お、岡田さん!?」
「でもこの小娘、生意気なんですわ」
「1度痛い目見せて、やろうかと」

「寄ってたかって、小娘1人に勝ったところでなんの自慢になンだ?」
 男は、ヘビのような眼光で他の先輩たちを威圧する。
睨まれた先輩たちは、固まって何も言い返せない。

「オレが相手してやっぜ。この岡田 亥蔵(おかだ いぞう)がな」
 そう言うと銀髪の男は、グランドに放置されていた木のバットを拾いあげた。

 岡田 亥蔵……。
確かウチのクラスの委員長が、岡田先輩たちのコトを『曖経の四凶』とか呼んでいたよな?

「素人の考えね。そんな重たいバットで、竹刀のスピードに勝てると思ったのかしら?」
 息も整ったツインテールの少女が、再び竹刀を中段に構える。

「ほう……じゃあ試させてもらうか、テメーの身体でな」
 岡田先輩は、容赦なくバットを振り下ろした。

「キャアッ……ちょっ!!?」
 咄嗟に飛びのく、千葉 沙鳴。
バットは、彼女が居た地面にめり込んでいた。

「なに考えてんのよ。殺す気?」
「当然だろう。剣士ってなァ、命のやり取りを愉しむモンじゃねェのかい?」
 鋭い眼光が、少女剣士に向けられる。

「さあ、どうした。掛って来いよ」
「……ウ、ウソでしょ。イヤァッ!?」
 バットが再び、彼女の居た地面にめり込んだ。

「マ、マズいよ、この人。沙鳴が殺されちゃう!」
「わたし、先生呼んで来る!」
「今からじゃ、間に合わないって!」

 バドミントン部の少女たちも、常軌を逸した岡田先輩の行動に混乱している。

「さっきまでの威勢はどうした。逃げてばかりじゃ、話になんねぇぜ」
「ヒ、ヒイィッ!?」
 恐怖で竹刀を投げ出し、岡田先輩のバットから逃げ惑う千葉 沙鳴。

「ギャッ!?」
 バットが、少女剣士の右の足先を捕らえた。
もんどりう打って、土手の地面に転がる。

「ああ……脚が!!」
 ツインテール少女はつま先を抱え、激痛に顔を歪ませていた。

「さて……トドメと行こうじゃないか」
 バットを肩で弾ませながら、動けなくなった少女剣士にゆっくりと近づく岡田先輩。

「お、岡田さん。その辺にしといた方が……」
「これ以上やっちまったら、ホントに警察沙汰になっちまいやすぜ」
 腰を低くしながら、なだめて止めようとする他の先輩たち。

「お、お願いします。グランドは明け渡しますから!」
「さ、沙鳴を助けてやって下さい!」
 バドミントン部の少女たちも、必死の想いで懇願する。

「あ……ああ……イヤァ」
 恐怖と激痛とで、ヘビに睨まれたカエルのように1歩も動けない千葉 沙鳴。

「終わりだ……その可愛い頭が、ザクロみてェに吹っ飛ぶぜ」
「お兄ちゃん、助けてェ!!!」
 狂気のバットが、少女剣士目掛けて振り下ろされた。

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