ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・25話

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ダーリン

「……キ、キキ、キミってヤツは一体、なんてコトをしてくれたんだいッ!!」
 崩れ行く海底都市の片隅で、半透明のコートのような鎧を着た女のコが、緑色のショートヘアを弾ませながら、蒼い髪の少年を相手にまくしたてていた。

「なにって、実はあまり、覚えていないんだ……」
「なんだってェ。アレだけのコトをして置いて、覚えてないだなんてアンマリじゃないかッ!!」
 怒りに満ちた眼で、ギロリと舞人を睨むスプラ・トゥリー。

「ゴメン……ジェネティキャリパーの力を使った後の記憶が、殆ど無いんだ。でも、なんとか思い出すから、待ってて」

「うわあ。いいよ、無理して思い出さなくてイイから!」
 顔を真っ赤にしながら、必死に止めるスプラ。

「で、でも……」
「いいって。むしろ、思い出しちゃダメェ!!」

「そりゃ、股ァ裂かれた挙句、内臓まで喰われ……グハァッ!?」
 クーレマンスの語る真実は、彼の妻となったガラ・ティアの強烈な肘打ち(エルボー)によって、強制的に中断させられる。

「と・に・か・くだ。キミはボクの大事な操(みさお)を、奪ったんだ」
 コートから延びた長い触手を、舞人に巻き付けるスプラ。
「とうぜん責任は、取ってくれるんだろうね?」

「ええ、責任って……どう取れば?」
「簡単なコトだよ。キミがボクの、ダーリンになってくれれば良いだけの話さ」
 触手を縮めて舞人を手繰り寄せると、イカの少女は頬にキスをした。

「うわあ、いきなりなにすんだよ!?」
「よく見たらダーリン、中々カワイイじゃないか。ひょっとしてもう、彼女が居るとか?」
「か、彼女ォ!? 幼馴染みの女のコなら、居たケド……」

「やっぱ、居るんだ。ダーリンの浮気者ォ!」
「なんでそうなる。それにパレアナは、もう……」

「そっか。それは残念だったね。でも、昔の女のコトなんて、ボクが忘れさせてあげるよ」
 スプラは舞人に後ろから抱きつくと、鎧の触手を絡みつかせて密着し、頬ずりをする。

「蒼き髪の勇者、王子に助けて貰ったと思ったら……」
「イカのねーちゃんと、イチャついてんな」
「2人も、ケッコンすんのか?」

 ヤホッカ、ミオッカ、イナッカの獣人娘が、どうでも良さそうに質問した。

「そうだね、ダーリンにはそれくらいして貰わないと。むしろ、最低ライン?」
「ええ。ケッコンだなんて、考えたコトも無いよ!?」
「拒否するとは、いい度胸じゃないか。それなら……コチョコチョォ!」

「や、止めろって、スプラ。くすぐったいよ」
「イ~ヤ、止めてあげな~い」

 イカの少女は、無数の触手で舞人の脇や横腹を撫でまわす。
そこにはもう、魔王だった頃の面影は無かった。

「舞人さん、少しイチャつき過ぎじゃないですか!」
「あ、リーフレアが怒ってる」
「べ、別に怒ってなど居ません。ただわたしは……」

「2人が仲良くするのが、不愉快なんだね!」
「そ、そう……って、違いますよ、姉さま!?」
 敬愛する姉に対し、真っ赤になって反論するメガネの妹。

「しっかしよ。これで魔王となった7海将軍とやらは、全員倒すか味方になったんだよな?」
「そうですわね、アナタ。ただ紫玉の魔王アクト・ランディーグに関しては、この街を離れサタナトスの元に向かったようですが」

 クーレマンスの筋肉の身体に、妻となったガラ・ティアが豊満な身体を寄り添わせながら言った。

「だがよ、クーレマンスの旦那。肝心のオレの親父の行方が、解らず仕舞いだぜ」
「それに、海皇の宝剣『トラシュ・クリューザー』も、行方知れずです」
 バルガ王子と、その側近であるティルスが言った。

「なあ、ティア、スプラ。お前らは魔王にされてた頃、サタナトスの行動はある程度見てたんだろ。知ってるコトがあったら、話してくれ」

「ええ、王子。我ら7将軍や海皇様夫婦を陥れたのは、バルガ王子の義弟であるギスコーネ様なのです」
「それは本当か、ティア!?」
「サタナトスは、ギスコーネ様の手引きによってこの街に進入し、我らを魔王に変えたのです」

「確か海皇の宝剣も、アイツが持っていなかったっけ。でも、そんなコトより今は、ボクたちのケッコンが先じゃないか」

「先じゃないよ。ボクはまだ、ケッコンなんてしないし」
 纏わりつくスプラを、必死に振り解こうとする舞人。

「ほう……せっかく妾が来てやって見れば、見知らぬ女とイチャついているとはのォ、ご主人サマよ」
 すると、舞人たちの上空から声がした。

「ル、ルーシェリア!?」
 見上げた先に浮かんでいたのは、黒い蝙蝠の翼を生やした漆黒の髪の少女だった。

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