ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP009

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死神の脅威

「奈央のヤツ、なに怒ってたんだ……」
 ボクは、とりあえずそう呟いたものの、興味はテレビ画面に移行していた。

「美堂……政宗さん」
 死神の異名を持つ男のドリブルは、一直線に倉崎さんに向って行く。

 ボクは、フットサル大会の決勝戦を思い出していた。
河べりの練習場の近くの、体育館で開催された小さな大会。

「クッソー、2点も取られちまったぜ」
「だが紅華、まだ追い上げるチャンスはある。攻めはカタチになって来ているし、後半もこのペースのまま行こう」

 チェルノ・ボグスを相手にデッドエンド・ボーイズは、ハーフタイムの時点で0-2とされる。
けれども、雪峰キャプテンの言った通り手ごたえはあり、2点のビハインドを覆そうとしていた。

「1点目は、FWの勇樹 美鶴の粘り勝ちだったな」
「そうですね、倉崎さん。彼はディフェンスを振り切っていなくとも、シュートを狙って来ます」
「ウム、雪峰士官。シュートに対して、脚を合わせる必要があるのでありますな」

「2点目は、あの厳ついオッサン顔のオーバーラップに、やられちまったよな」
「葛埜季 多聞だな。ヤツは攻守の要だ。オーバーラップ時には、互いに声を掛け合って注意しろ」
 倉崎さんが、黒浪さんの意見をブラッシュアップする。

 キーパーだったボクが取られた点なだけに、その時は落ち込んで俯いていた。

「なあ、ピンク頭。相手は、選手交代するみてーだぞ?」
「マジか。ケガ人でも出たか?」

「違うね、紅華。ついに、死神出て来るよ」
「セ、セルディオスさんだ!?」
「まだビール飲みに、行って無かったのかよ」

「この大会で、一番注目してた選手よ。見逃すワケには、行かないね」
 今ではボクたちの監督になったセルディオスさんが、そこまで評価した選手。
気になったボクは、顔を上げる。

「名前は、美堂 政宗。サッカー界でも、10年に1人の逸材よ」
「ちなみに、倉崎さんは?」
「倉崎も、10年に1人の逸材ね」

「交代すんのって、あの真っ黒なパーカーのヤツか?」
「座ってるときは気にして無かったケド、メチャクチャでっかいな!?」
 ウォーミングアップをする選手を見て驚く、紅華さんと黒浪さん。

 確かに大きい。
日本なら、バスケのセンターをやれそうなくらいの身長がある。

「身長は、197センチあるって話ね」
「あれだけデカいんなら、ポストプレーヤーか?」
「それも出来るケド、足元も上手いね」

 セルディオスさんが、紅華さんの問いに答えてる間に、パーカーのフードを降ろす死神。
すると、大量のドレッドヘアが溢れ出た。

「髪型も、メッチャ目立ってんな」
「それに、あの身体の筋肉見るよ」

 パーカーも、ジャージのズボンも脱ぎ捨てた美堂さん。
褐色の肌に覆われた、しなやかで力強い筋肉が現れる。

「とくに脚の太さが、ハンパねえな。杜都、お前完全に負けてんじゃん」
「グヌヌ……認めたくは無いでありますが、あの美しい大胸筋や上腕二頭筋。大腿四頭筋たちも、素晴らしいであります!」

 チェルノ・ボグスの、真っ黒なユニホーム姿となった美堂さん。
三木一葬のメンバーでは無かった1人が交代し、ピッチへと足を踏み入れた。

「彼もやはり、高校3年生なのでしょうか?」
「違うね、雪峰。美堂は高校1年ね」

「オイオイ、ウソだろ。アレで、同い年かよ」
「サンボクなんちゃらだけでも苦戦してんのに、さらに厄介なのが出てくんのか!?」

 その時のボクは、黒浪さんと同じ気持ちだった。
三木一葬の、葛埜季 多聞さん、勇樹 美鶴さん、宝木 名和敏さん、智草 杜邑さんの4人が相手でも、劣勢を強いられていたからだ。

「これが、ラストの試合(ゲーム)の後半だ。全力で、戦って来い!」
「おうッ!」
「うっしゃァ!」

 倉崎さんに気合を入れられ、ボクたちもピッチに入る。
キーパーグローブを付けて前を見ると、小さなセンターサークルに、ドレッドヘアを靡かせた死神が立っていた。

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