ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・20話

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爆散する魔王

「コイツ、ボクの大事な槍の触手を、斬りやがった!」
 怒ったスプラが、レインコートの様な半透明の鎧を大きく広げ、イナッカに攻撃を仕掛ける。

「だけど、緑触槍『アス・ワン』の触手は無限なんだ!」
「う、うわあッ!?」
 緑色の槍の傘が再び開き、無数の触手が蒼い髪の獣人少女に迫った。

「ジェネティキャリパー!!」
 舞人は真横から隙を狙って、スプラを斬りつけようとする。

「ジャマすんな。そんなガラクタ剣で、何ができるって言うんだい」
 スプラは舞人を触手で捕らえると、イナッカに目掛けて投げつけた。

「ぐああッ!」
「うわ……チョ!?」
 共に、岩礁に叩きつけられる2人。

 岩礁が破壊されて土煙が立ち、そこに海水が流れ込む。
低地にあった市場は、大半が水の底へと沈んでいた。

「イナッカァ!?」
「もう、蒼い髪の勇者、なにやって……」
 姉妹の身を心配していたヤホッカたちの背後にも、黒い影が迫る。

「テメーらも、遊びは終わりなんだよ!」
「うぎゃあああ!!?」
「ぎゃああぁぁん!!?」

 無数のサメの歯が、2人の獣人少女を引き裂き喰い散らかす。
鮮血まみれのヤホッカとミオッカが、市場の海水に墜落した。

「オレの藍裂槍『クリ・シュナ』にかかれば、こんなモンだ」
 藍玉の魔王ベク・ガルが、静かに勝ち誇る。

「だけど、アイツら獣人はしぶといって聞くからさ。死んだかどうか解らないよ」
「チッ、仕方ない。トドメを刺してやる」
 2体の魔王は、海水の中へと潜って行った。

「舞人ォ、それに獣人娘までやられちまったのか!」
 ガラ・ティアとの戦闘の最中で、仲間を助ける余裕の無いクーレマンス。

「へッ、偉そうに説教垂れて置きながら、このザマたぁな。シャロリューク……改めて、テメーの凄さが解った気がするぜ」
 巨大な顎の付いた剣で、ガラ・ティアを跳ね除ける。

「魔王となったわたくしを押し返すとは、流石に名高い覇王パーティーだけのコトはありますね」
「ガラ・ティアとか言ったな。元は7海将軍のアンタが、サタナトスの手下にこうも簡単に成り下がるたァ、情けねえぜ」

「サタナトスさまは、いずれこの世界を手に入れられるお方。配下となれたコト、光栄の極みですわ」
 紅玉の魔王の珊瑚色の槍が、再び泡の渦を巻き起こした。

「どうやらアイツの剣は、有無を言わさず洗脳しちまうみてーだな」
 クーレマンスの大喰剣ヴォルガ・ネルガも、再び大きな口を開ける。

「悪いが、アンタを倒させてもらうぜ!」
「それは不可能ですわ。何度、同じコトを言わせれば気が済むのです。珊瑚槍『エリュ・トゥラー』の泡の前では、アナタの剣など無力だと言うコトが……!?」

 異変に気付いたガラ・ティアの前に、泡の壁があった。

「な……これは一体、どうしたコトですの!?」
「オレさまの、ヴォルガ・ネルガはよォ。あらゆるモノを喰らうだけが能じゃねえぜ」

「グェッ!!?」
 泡の壁から、大きな顎を持った剣が現れて、ガラ・ティアの露出したヘソの辺りに突き刺さる。

「ちィとばかし、下品だがよォ。喰ったモンを、吐き出すコトだって出来るんだぜ」
 泡の壁は、ヴォルガ・ネルガが吐き戻したモノだった。

「お、おのれ。よくもわたくしの美しい身体に傷を!?」
 マゼンタ色の長い髪を振り乱し、激昂するガラ・ティア。

「オイオイ、せっかくのキレイな顔が、台無しだぜ」
「黙れ、筋肉ダルマ風情が。魔王となったわたくしが、この程度の傷で倒れるとでも……」

「もちろん、思っちゃいねえぜ。だがよ、こんなのはどうだ?」
「ガハ……ああ……あああッ!?」
 突然腹を押さえ、苦しみ出す藍玉の魔王。

「キ、キサマ一体、なにを!?」
 アイスグリーン色の柔肌をした腹は、大きく膨らみ始めていた。

「既にオメーの腹ン中に、オレさまの剣が喰らったモンを吐き出しているのさ」
「そ、それでは……わたくしの、お腹の中にイィィィィッ!?」
「ああ、オメーの大好きな泡を、返してやってるトコだぜ」

「マ、マズイですわ。い、一旦離れませんと……!?」
「遠慮すんなって。大量の泡をくれてやるぜ!!」
 ガラ・ティアの腹は、巨大風船のような大きさまで一気に膨らんだ。

「いやあぁぁ。お、お願いよ、止めてェェェーーーーッ!!!」
 美しい顔を歪め懇願するも、泡によって膨らみ続ける腹が邪魔で、身動きすらままならない。

「ゴボッ……こ、こんな醜い、ヒキガエルみたいな死に方は……イヤァ!」
 アイスグリーン色の巨大風船は、街のあらゆる建物よりも大きく膨らみ……そして弾けた。

「ゲエエェェッ!!?」
 大量の泡と臓物を飛び散らせ、美を渇望した紅玉の魔王は爆散した。

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