ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP007

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カポナータ

「ところで亜紗梨。今日の生徒は奈央ちゃんと、コイツらだけなのか?」
 紅華さんが、取り巻きの7人の女子高生を指さす。

「今日は予約してくれていた他の生徒さん達が、都合で来られなくなったんだ」
「どうせババア連中だろ。女ってのは群れて同じ行動するから、1人が来れなくなると全員来れないってパターンも、結構ある話だぜ」

「トミン、それ女性に対する差別だよ!」
「オレは差別肯定派だからな。世の中に差別をしない人間なんて、居やしねェよ」
 紅華さん、髪色とかで差別されてたしね。

「女のクセにってのがアウトなら、男のクセにや、子供らしくしろってのも差別だしな。逆に、大人は汚いってのも差別だが、そんなの普通に使ってんだろ?」

「もう。トミンったら、相変わらず捻(ひね)くれてるんだからァ!」
「そんなだから、自分の学校のサッカー部にも、入れて貰えないんだよォ!」
 それ、ボクもなんですケド……。

「それにわたし達を一緒くたに呼ぶの、止めてくれない」
「1人1人名前があるんだから、ちゃんと名前で呼んでよね」

 女子高生の人たち、明らかにご機嫌斜めだ。
そりゃ、そうだよね。

「なんだよ、メンドクセーな。だったら、自分で自己紹介しろ」
「その言い方は無いだろ、紅華。でも新しい生徒さんだから、自己紹介は確かに必要か」
 亜紗梨さんは、ダイニングキッチンでエプロンを付けながら言った。

「ボクは、亜紗梨 義遠。今日は母に換わって、この料理教室の先生を務めさせて貰います」
 柔和な笑顔の、亜紗梨さん。

 黒光りするキッチンテーブルの上には、料理の食材が一通り並べられていて、コンロの上には銀色の鍋が置かれている。

「紅華が言う通り、世の中に差別ってたくさんあると思います。学歴だったり、性格や見た目だったり。大人になれば、仕事ができるかどうかで差別もされるでしょうね」

「だけどそんなの全部否定しちまったら、それこそ共産主義になるしかねえだろ。資本主義ってのは、能力による差別を認めている社会だぜ」

 言われてみれば、そうだ。
これから、プロサッカー選手として生きて行くんなら、能力が無くて切り捨てられる未来も覚悟しなきゃならないんだ。

「ああ、そうだな。だけど差別が存在する世界で、お互いにどう理解し合って行けるかが、大切なんじゃないかな?」

「ケッ、慣れ合いかよ。オレは真っ平ゴメンだ」
「そう言いつつも、お前とは結構慣れ合ってる気もするんだが?」
「まあ、多少はな。だがよ、プロの世界じゃそんなモンは、通用しないぜ」

「解ってる。でもプロの世界でも無ければ、慣れ合いも重要なのさ。まずは奈央ちゃんから、自己紹介をお願いできるかな?」

「ふえ……うわあ、はいぃぃッ!?」
 真っ赤な顔で、慌てふためく幼馴染みの女のコ。

「え、えと……わたしは、板額(はんがく) 奈央。料理の方はまだまだ未熟ですが、今後ともヨロシクお願いします」
 奈央が大きく前屈すると共に、他の女子高生たちも自己紹介を始める。

「わたしは、横山 苺果。料理はやっても、失敗ばかりで……アハハ」
「猪俣 静蘭と申します。料理が苦手で、勉強させて貰いに来ました。お見知り置きを」
「アタシは、野与 蜜梨。料理は食べる方が好きでェす。ヨロシクゥ」

「わたしは、村山 式禰。料理はたまに弟たちに作ってます」
「西野 春風です。本格的な料理はやったコト無いから、愉しみ~」

「児玉 弥生だよ。今日は美味しい料理、たくさん覚えて帰るんだぁ」
「丹治 灯燐です。が、頑張りますので、ヨロシクです」

 7人の女子高生たちは、当たり前だケドそれぞれに名前があって、性格も見た目も異なっていた。

「自己紹介してくれて、有難う。今日は、色々な野菜を使ったカポナータを作ります。では、始めて行きましょう」

 その日、集まった8人の女子高生たちは、亜紗梨さんに教わりながらカポナータを完成させる。
ボクと紅華さんも、ご相伴に預かった。

「苺果のは、野菜が焦げてんな。でも、普段よりはマシか。春風のは、かなりイケてるぜ」
 奈央のも、まあまあイケてる。
普段、料理なんてしないのに……。

「料理って言うのは、色々な食材のハーモニーだからね。お互いに解かり合って行けば、美味しい料理になるモノさ」
「なに上手く、纏めようとしてんだ。ったく」

 亜紗梨さんの料理教室は、和気あいあいとした空気のまま終わり、ボクと紅華さんによるヘッポコ探偵の追跡劇も、こうして終幕となった。

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