ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第六章・EP006

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経験したコトの無い感情

 料理教室から出て来た亜紗梨さんは、ボクたちを見てかなり驚いていた。

「ど、どど、どうしてキミたちが、ここに居るんだ!?」
 見かけの落ち着いた印象と違って、けっこう慌ててる。

「お前がコイツの女と歩いてるのを、見かけてよ。面白そうなんで、コッソリ付けてたのさ」
 ボクの首根っこに腕を巻き付け、ニヤける紅華さん。

「な、なんて悪趣味なヤツ……って、御剣くんの彼女ォ!?」
「幼馴染みだとよ。昔は一緒に風呂も入って、裸も見せ合った仲なんだぜ」
 た、確かにそうだケド、なんで紅華さんが知ってるのォ!?

「板額くんが、み、御剣くんの……一緒にお風呂も……」
 ブツクサと小声で呟きながら、青褪める亜紗梨さん。

「ねえねえ、トミン。なんか先生と親し気に話してるケド」
「もしかして知り合い?」
「先生が奈央ちゃんと歩いてたって、ホントォ?」

 料理教室に来てた、紅華さんの取り巻きの女子高生たちが紅華さんに質問した。

「お前らも、一応は会ったコトあると思うぜ。オレが中学時代、海馬コーチに世話になったときに、亜紗梨も一緒にやってたからな」

「ええ、ウソ!?」
「あのチームに、亜紗梨先生みたいなカッコいい子、いたっけ?」
「背の高い子は、まあまあ居た気もするケド……」

「アハハ、その頃のボクはまだ、背も伸びて無かったし目立たなかったからね。髪型も、こんなじゃなかったし」

「だよなあ。昔のお前って、けっこう地味なイメージ強え~わ。正直この間の試合も、あれだけ積極的にやってるのを見て、驚いたぜ」

「ボ、ボクだって、少しずつは成長しているからね。地味なままじゃ、ダメだと思ったから……」

「女か?」
「うぐゥッ!?」
 ……亜紗梨さん、メチャクチャ動揺してる。

「どうやら図星みて~だな。奈央ちゃん、可愛いモンな」
 や、やっぱ、奈央のヤツ、亜紗梨さんと付き合ってる!?

「い、言ってる意味が、まったく理解できないなァ。彼女は、ボクの教室の1人の生徒だよ。それがどうして変な発想に……」

「亜紗梨先生、料理の下準備、出来ましたァ」
 言い訳の途中で、ウチのリビングでしょっちゅう聞く声が、パタパタと教室の中から駆けて来た。

「うわあ、ば、板額くん!?」
「は、はい。どうしたんですか、そんなに驚い……って、カーくんッ!?」

 グハァ、バレたァ!?
こっそりここまで尾行して来たケド、ついに目が合ってしまった。

「ど、どうしてカーくんが、ここに居るのよ。留守番してるって言ったじゃない」
 奈央のヤツ、顔を真っ赤にして怒ってる。

「はは~ん、そゆコト」
「奈央ちゃんも、隅に置けないねェ」
「こんなカッコいい先生と、幼馴染みの男を二股かけるなんて」

 フットサル会場で知り合いになった女子高生たちが、奈央の周りに集合した。

「ち、ちち、違うわよ。いきなりなに言ってるの!?」
 ボクなんて、眼中に無いよね。
……ただの幼馴染みだし。

「しっかし、さっきから聞いてると亜紗梨、お前がここの先生みて~だな?」
「ああ、そうだよ。普段は母が経営してるケド、ボクも料理が好きだからね。母が留守なときは、手伝っているんだ」

「ま、立ち話もナンだ。さっさと中、入ろうぜ」
「まったくお前は……いいよ、上がってくれ」
 不躾けにもホドがある紅華さんの態度に呆れつつも、亜紗梨さんはボクたちを教室に招き入れた。

「うわ、見て見て。可愛いお人形が、たくさん並んでるよ」
「これ、見たコトある。有名なアニメのヤツだ」
「これも、亜紗梨先生が作ったんですか?」

「そうだよ。手芸も趣味なんだ。よかったら、好きなの持っていって」
 中央に並んだキッチンの奥にある棚に並んだ、小さな人形たち。
それを気前よくあげてしまう。

「やったやったァ、アタシ、これ貰っちゃお」
「あ~、それわたしが狙ってたのにィ」
「大丈夫。同じの、また作ってあげるから」

「おいおい、亜紗梨。オレの女にまで、手ェ出してんじゃね~よ」
「アハハ、トミン焼いてる」
「うっせッ!」

 亜紗梨さんって、器用な人なんだな。
やっぱ、奈央は……。

 ボクは自分の中から湧き上がって来る、今まで経験したコトの無い感情に戸惑っていた。

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