ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第11章・01話

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大海原

「舞人さん。フェニ・キュア人の棲むサンゴの街は、もうすぐです」
 大きな丸い眼鏡をかけた、ピンク色の綿菓子みたいな髪の女の子が言った。

「そうなんですか、リーフレアさん。でも、ここって大海原のド真ん中ですよ?」
 蒼い髪を海風に靡かせた少年が、疑問を顔に浮かべる。
彼らは黒い船体の、真っ白な四角い帆の帆船に乗って、海原を走っていた。

「当たり前じゃん、舞人くん。だって相手は、海の民なんだよ」
 先ほどの少女とは、眼鏡を掛けていない以外は瓜二つの少女が得意げに胸を張る。

「ですがリーセシルさん。いくら海洋民族と言っても、こんな海の真ん中に街は……」
「舞人さん。下、見てください」
 リーフレアが、船べりから海を指さした。

「下って、魚でも居たんですか?」
「フフ、もっと驚くモノですよ」
 舞人は促されるままに、海を覗き込む。

「うわあ、さ、サンゴ礁だ。しかも、メチャクチャ向こうまで広がってる!?」

 太陽の光が届くくらいのヒスイ色の海の底には、色取り取りのサンゴの森が広がっていて、幻想的な景色を創り出していた。

「フッフッフ、やっぱ驚いたね」
「ここが海洋民族、フェニ・キュア人の住む街です」
「え、でも確かに凄い景色ですケド、これってただのサンゴ礁ですよね?」

「なあ、見ろよ。蒼い髪のあんちゃん!」
「こっちの海、泡がブクブクいってるぞ」
「なんか、人が上がって来てる」

 3人の獣人の少女たちが、反対側の船べりから大きく身体を乗り出して、海を覗き込んでいる。

「ヤホッカ、ミオッカ、イナッカ。パンツ、見えちゃってますよ」
「それに、離れた方が良いと思うよ。危ないから」

「へ?」
「危ないって……?」
「おわぁ!!?」

 3人の少女たちの目の前に、いきなり巨大な水柱が立ち上がる。
船が大きく揺れ、尻もちを突いて倒れる獣人少女たち。

「な、あんな高くに……人が!?」
 舞人が眩しい太陽を、手で隠しながら空を見上げる。
帆船の帆先よりも高くなった泡の柱の天辺で、人が蜻蛉を切っていた。

「テメーら、何しに来たァ。ここは、海人の縄張りだ」
 大量の水と同時に、甲板に着地した男。
降り注いだ激しい水流が、舞人やヤホッカたちを押し流す。

「事と次第によっちゃァ、無事に帰すワケには行かねえぜ!」
 男は手にした銛を、双子司祭に向けた。

「貴方は、ファン・二・バルガ王子ですね?」
 双子司祭の妹が、眼鏡を直しながら問いかける。
彼女たちの周りには、降り注ぐ水を弾く魔法障壁が張られていた。

「ほう、その魔法力。噂に名高い、ヤホーネスの双子司祭か?」
 男は、突き出していた銛を肩に掛け、腕を組んで問いただす。

「そうだよ。まるで鮠(ハヤ)みたいな身のこなし、流石だねえ」
「姉さま、ちょっと馴れ馴れしいですよ」

「構わねえさ。海人は堅苦しいのは、どうも苦手でな。それより、ヤホーネスの司祭が何の用だ。王が亡くなったと聞くが、ウチと新たな同盟でも結ぼうってのか?」

「それは、是非お願いしたいと思っております」
「あー、言って置いて悪いんだが、オレに外交の決定権は無え。国同士の交渉事なら、親父にでも掛け合ってくれや」


「リーフレアさん、この方は?」
 立ち上がったズブ濡れの舞人が、こっそりと質問する。

「オイ、テメーなに人の話に割り込んで来てんだ、コラァ!」
「うわあ、す、すみません!?」
 銛を顔の前に付きつけられ、平謝りする舞人。

「司祭さん達も、もう少し骨のある従者、連れ歩いた方が身のためだぜ」
 オレンジ色の長髪を掻きながら、褐色の肌の男は銛を納めた。

「ん、舞人くんは、従者じゃなくて勇者だよ?」
「ハ、ハイ。わたしの命の恩人なんです」

「ハアァァ、コイツがァァ!?」
 これでもかと言うくらいに、顔を近づけ舞人を吟味するバルガ王子。

「胡散臭えな。どう見たって、ウチのガキ共の方が強そうだぞ?」
「ア、アハハ……」
 苦笑いを浮かべる、蒼き髪の英雄。

「コイツはアレだが、アンタらならまあ、信用して構わんだろう。街に案内してやるから、そこの渦の上に船を付けな」
 バルガが銛を向けると、サンゴ礁の上に大きな渦が出現する。

「解かったよ」
「了解です」
 双子司祭の風の魔法が、帆船の四角い帆を孕ませた。

「フッ、大した魔法力だぜ」
 バルガ王子が指定した位置まで船が進むと、船が大きく揺れる。

「うわあ、こ、これって!」
「船が、渦に飲み込まれるのだぁ!」
「沈没しちゃうぅ!」

 3人の獣人娘の悲鳴と共に、船は大海原へと消えた。

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