ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP022

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重戦車砲

 いきなり、ゴールネットが揺れた。

「ワアアアァァーーーーーオ!!!」
 オオカミみたいな雄たけびを上げる黒浪さんのシュートが、ゴール右隅に決まっていたからだ。

「ねえ今の、今の撮ってくれた、千鳥さん?」
「はい、バッチリです!」
 ベンチでカメラを回す千鳥さんに、両手を大きく振りアピールする黒浪さん。

「どんなにフィジカルが強くとも、技術に優れていても、追いつけなければ意味が無い」
「ま、強力な武器であるコトは確かだな」
 雪峰さんと紅華さんも、腕を組んで感心してる。

「クッソ、先制されちまったじゃねえかよ!」
 新壬さんが、腹立ち紛れに芝を蹴り上げた。

「あのタイミングで、センターバックより先にボールに触れるなんて……」
「ま、まったく、とんでもないスピードだぜ」
「どうやら相手のFW、新壬より速いんじゃねえか?」

「あんな素人を止められなかった、負け惜しみっスか?」
「な、なんだとォ、新壬!」
「テメエ、少しばかりユースで結果残したからって、いい気になってんじゃねえ!」

「それ、相手を押えてから言って下さいよ。だから試合に出られずに、解雇されたんでしょ?」
「新壬、テメエ何様のつもりだ」
「言っていいコトと、悪いコトが……」

「すみません、先パイ。それに新壬、お前こそ結果出してからモノを言え」
 キャプテンマークを巻いた大柄の選手が、その場を制した。

「わーってるよ、九龍。キックオフしたら、直ぐにボールよこせよ」
「構わんが、相手を甘く見るな。足元をすくわれるぞ」
「オレを、口だけの先パイ方と一緒にしないで貰いたいね」

 センターサークルで、軽く会話を交わした後ホイッスルが鳴り、九龍さんの足元から新壬さんにボールが渡る。

「今度はこっちのターンだ。まずは1点決めてやるぜ」
 ボールを巧みに操り、前線の紅華さんと金刺さんを突破した。
派手さの無い基本的なドリブル技術だケド、高いレベルでマスターしてる。

「引いてカウンター狙いかと思えば、中盤厚くして来てんじゃねえか」
 だって、3-6-0でゼロトップだし。

「クソ、邪魔だ!」
 杜都さんの強烈なタックルをかわしたところで、ボールが足から離れた。

「これなら!」
 思い切って飛び込むと、ボールをカット出来た。

「ナイスカット、一馬。ボールくれ!」
 前線で、手を上げボールを要求する黒浪さん。

「やらせるか!」
「身体当てて、マークに付け!」
「最悪、倒しても構わん」

 黒浪さんに引きずられ、下がる狩里矢のバックライン。
ボクは軽く右に、ボールを叩いた。

「ナイス判断だ、御剣隊員!」
 タックルから立ち上がった杜都さんがボールをトラップし、脚を大き目に振り上げる。

「安全確認よォォし、弾込めよォォし、単発よォォし!!」
 いつもの意味不明な台詞と共に、ボールが強烈にインパクトされた。

「……な、しまッ……」
 新壬さんの咄嗟のタックルも、間に合わない。

 杜都さんの、重戦車砲が火を噴いた。
ボールはセンターサークルを超え、一直線に飛びゴール左隅に決まる。

「弾着、よおおおぉぉぉーーーーしッ!!」
 審判のホイッスルが鳴り、スコアボードに2点目の表示が記された。

「な、なんてシュートだ」
「幾ら練習用のピッチだからって、あの距離を決めちまったぞ」
「アイツが、ドライブシュートを撃ったヤツか?」

 狩里矢の選手たちも、度肝を抜かれている。

「クッソ。たかが高校生に、なんでやられなきゃいけねーんだ」
「落ち着け、新壬。オレたちだって高校生だろう」

「オレたちは、ユースのエースだぞ。あんな無名なヤツらに、負けるワケには行かねえ!」
 すると新壬さんを、他のメンバーが囲んだ。

「偉そうに言って置いて、ボール失ってんじゃねえぞ、新壬」
「だが、どうするよ。思ったより中盤が厚い。高い位置で、ボールを取る気だ」
「11番に裏走られない様に、最終ライン下げるしかねえな」

「だがそうなると、あの5番のロングシュートが……」
「あんなモン、プレスかければ早々決まるかよ」
「3バックだから、左右のサイドを狙うか?」

「それが良いですね。この際中盤は、飛ばしましょう」
 九龍キャプテンが、頷いている。

「アンタらに、出来るのかよ?」
「オイ、新壬!」

「あ、お前なに舐めてんの?」
「こっちはお前なんざより、場数踏んでんだ」
「クロス上げてやっから、お前ら真ん中で待っとけ!」

「ウス!」
 九龍さんは、新壬さんの首根っこを捕まえて、強引に頭を下げさせた。

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