ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP021

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サーファーの実力

 デッドエンド・ボーイズと、オーバーレイ狩里矢との試合は、狩里矢本来のスタジアムでは無く、練習場のコートで行われる。

「みなさ~ん。動画もちゃんと撮ってますから、頑張って活躍してくだいね」
 制服姿の箙(えびら)千鳥さんが、ビデオカメラを片手に手を振っている。

「ウオ、ち、千鳥さん………」
「なに赤くなってんだよ、クロ」

「うっせえ、ピンク頭。気合が入れてるだけだぜ」
 顔をパシパシ叩く黒浪さん。

「両チームのキャプテン、前へ」
 審判がコイントスの為に、両チームのキャプテンを呼んだ。

 デッドエンド・ボーイズは雪峰さんが、狩里矢からは新壬さんを注意していた大柄の選手が審判の前に並ぶ。

「アイツが、相手チームのキャプテンだったのか」
「名前は九龍 明朋(くりゅう あきとも)。倉崎さんと、同学年らしいぜ」
「その割には顔、えらい老とるやんけ」

 黒浪さん、紅華さん、金刺さんの3人のドリブラーが、相手のキャプテンに鋭い視線を飛ばした。

「表で」
「では、裏を」
 雪峰さんが表を、九龍さんが裏を選ぶ。

「どうやら、裏の様ですね」
 柴芭さんが言った。

「それ、ホントかぁ?」
「まだ、コイン投げる前だぜ?」
 コインは投げられ、審判の手の甲に落ちると同時に逆側の手が覆いかぶさる。

「相手は、ピッチを選んでこちらにボールを渡し、出方を伺う構えの様です」
 訝(いぶか)しがる、紅華さんと黒浪さんに対し、柴芭さんはその後の選択すらも予言した。

「裏。ボールとピッチ、どちらを選びますか?」
「では、ピッチを。現在のサイドを貰います」
 九龍さんは、柴芭さんの予測通りの台詞を口にする。

「スゲエ、当たっちゃったぜ!」
「流石であります。占い魔術師の二つ名は、伊達じゃないであります」
「ま、まあ確立的には、2分の1だしな」

 コイントスの結果、ボクたちはボールを貰い、センターサークルに紅華さんと黒浪さんが並ぶ。
試合開始のホイッスルが、高らかに鳴り響いた。

「オレさまのスピード、見せてやるぜ」
「ま、最初は譲ってやるよ。ホレ……」
 紅華さんがボールを蹴り出し、黒浪さんの足元に納まった瞬間……。

「悪ィが、ボールは貰ろたで!」
「うお、なんだぁ!?」
 金髪のドレッドヘアの選手が、黒浪さんの足元のボールをかっさらった。

「テ、テメ、イソギンチャクゥ!?」
「トロトロしとんのが、悪いんや。行くでェ。ワイのドリブル、よう見ときィや!」
 センターサークル中央から、敵陣へと切れ込む金刺さん。

「ホイッと」
 最初のスライディングタックルを、背中を向けながら軽く飛んでかわす。
左足の裏で空中にあるボールを弾き、前に出したボールに着地と同時に追い付いた。

「空中で、一回転しやがった。サーファーだけあって、軽く跳んでもかなりの滞空時間だしよ」
「感心してる場合じゃねぇだろ、ピンク頭。アイツに良いトコ、持ってかれちまうぜ」
 黒浪さんが、慌てて後を追う。

「ワイの実力は、こんなモンやあらヘンでェ!」
 そのまま中央突破を図る金刺さんの前に、2人の相手選手が立ちはだかった。

「高校生のガキが、舐めたドリブルしてくれてんじゃねえか」
 あの2人、新壬さんをバカにしていた人たちだ。

「簡単に、中央突破が出来るなんて思うな!!」
 2人は身体をぶつけて左右から挟み込んで、金刺さんからボールを奪おうとする。

「こりゃあ、良い波やあらヘンな」
 金刺さんは意外にも、背中を向け中央にボールを戻した。

「ナイス判断だ、金刺」
 ボールを受けたのは、雪峰さんだった。
デッドエンド・ボーイズのキャプテンは、ダイレクトでボールを前に出す。

「うわ、こ、これは!?」
 ボールは、金刺さんにプレスをかけた2人の真後ろに、ポカリと開いたスペースに落ちる。

「真ん前に、誰も居ねえ!?」
 スペースでボールを受けたのは、黒浪さんだった。
そのままスピードに乗り、自慢の快足を飛ばす『黒狼』。

「アイツ、何てスピードだ。ディフェンスが、追いつけねェ!」
 前線に張っていた新壬さんが、驚きの声を上げる。
黒浪さんは、3枚のセンターバックが寄せるより早く、その間を駆け抜けた。

「マズい、キーパー出ろ!」
 九龍さんの声が轟くものの、ゴールキーパーも出るコトが出来ない。

「行ッけェーーーーー!!!」
 黒浪さんは、スピードに乗ったままシュート体制に入った。

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