ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP012

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人事権

「改めて紹介すると、このニーターのオッサンは、オレの中学時代のコーチだ」
 旧知の仲間たちとの親睦が終わると、紅華さんがみんなの前で言った。

「中学って……お前確か、サッカー部に入って無いんじゃなかったか?」
「まあな。オレが中学のサッカー部の顧問や先輩と揉めちまって、部に入れなかったときに、近くで無料のサッカー教室やってるって話を聞いてな。その サッカー教室のコーチだよ」

「つ~まりは、今のお前があるのもオレのお陰だぞ、紅華ッ!」
「ヘイヘイ。感謝してますよ、海馬二ーター」
「そ、そこは海馬コーチと呼ばんか。バカにしとるのか、お前は」

「バカにもするだろ……ったく、お前は」
 紅華さんと海馬コーチの会話に、突然誰かが割り込んで来る。

「おわァッ、江坂!!?」
 声の主は、江坂選手だった。

「コーチ、江坂選手と知り合いなんスか?」
「し、知り合いと言いうか……その、なんだ」
 横柄な態度だった海馬コーチが、急に大人しくなる。

「江坂と海馬は、同じ高校のエースストライカーと正ゴールキーパーだったね」
「それホントっスか、セルディオス監督?」
 訝(いぶか)しげな眼で、海馬コーチを見る紅華さん。

「コーチと江坂さんが、同じ高校だなんて……」
「完全に初耳ですよ、コーチ!」
「よくあんなんで、全国行けましたね」

「ま、まあ昔の話だからな、お前たち」
 どうやら今回加わるメンバーの、誰一人として知らなかったらしい。

「ヤレヤレ。高校からプロ入りできたのは、オレとお前だけだってのに、とっとと現役引退しやがって」
「ス、スマンな。オレにはプロとして、足りないモノがあったらしい」

「なにカッコつけてるね。足りないモノだらけよ。プロとしての自覚、メンタル、体調管理、目的意識、スキルアップ、何も備わってなかったね」
「コ、コイツらの前で、そこまで言わなくてもォ!?」

「実はなあ、倉崎。コイツも、お前のチームで使ってみてくれねェか?」
 江坂選手が、隣にいた倉崎さんに問いかけた。

「な、なに言ってるんだ、江坂。今回の契約では、オレの育てた選手を……」
「ええ、ですがメンバー表を見させて貰ったところ、フィールドプレーヤーばかりですね」
 タブレットをチェックする、雪峰さん。

「そう言や、キーパーのヤツらはどうした?」
「学業に専念するとかで、辞めたよ」
「ま、本音は、ゲームとかしてーんだろうケドさ」

「キーパーであるこのオレが、親身になって育ててやったのに情けない話だ」
「イヤ、コーチのコーチングが、鬱陶(うっとう)しかったからじゃないっスか?」
「なんだとォ、紅華!」

「だが確かに、本職のキーパーが居ないの問題ではあるな。フットサルのゴールと違って、サッカーのゴールは大きい。一馬にやってもらうのは、流石に無理があるだろう」

 く、倉崎さん……。
これって、喜んでいいトコ?
新メンバーが十人も加わってるんじゃ、素直に喜べないよォ。

「そんじゃ、コイツの面倒を見てくれるかい、倉崎」
「ええ、喜んで」
「オイオイ。本人の同意も無しに、勝手に決めるなよ」

「そうね、倉崎。監督の同意もまだね」
「セルディオスさん」
「正直、この二ーターの身体を見て、プロで通用するか不安よ」

「イヤ、これでも多少は……それに、地域リーグなんだし……」
「相変わらず、甘々な認識ね、海馬。地域リーグでも今の日本は、相当レベル高いよ」
 セルディオスさんはナゼか、海馬さんにはやたらと厳しい。

「確かにな。日本はトップリーグの実力と、下部リーグの実力差はそこまで無い気がする。こりゃオレも、気を引き締めねえとな」
「江坂……お前、移籍しちまうんだよな」

「ま、お前も性根を入れ替えて、頑張るんだな」
「あ、ああ……」
「誰もコイツ、使うとは言ってないね」

「セ、セルディオスさん」
「チームのオーナーは倉崎ね。監督に、最終的な人事権は無い。誰をスカウトし誰を入れるかは、金を出してるオーナーが決めるよ」

「それじゃ、デッドエンド・ボーイズに入るのは、問題ないんだよな?」
「入るのはな……クロ」
「じゃあ、なにが問題なんだ?」

「でも、誰を試合に使うか決めるのは、監督ね。もしそれが嫌なら、わたしをクビにするね」
「いえ、オレはセルディオスさんに、監督を依頼しました。試合に関する決定権は全て、監督にお任せしますよ」

「それ聞いて、安心したね。日本の地域リーグ、コイツじゃ不安だらけよ。新たなキーパー、見つけて来て欲しいね」
「はい、セルディオスさん」

 その日のセルディオスさんは、今までと違ってメチャクチャ厳しかった。

 

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