ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第五章・EP011

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二ーター

「なんか、見覚えのある車だな。中学ンときの、サッカーコーチの車にそっくりだぜ」
 紅華さんが、相変わらず綺麗なリフティングをしながら言った。

「実はな。ある人物と言うのは、中学時代のお前のコーチだよ」
「ゲゲッ。マジかよ、雪峰!?」
 堤防の上に止められた赤い車から、ゾロゾロと人が降りて来る。

「なんか、めっちゃ乗ってんな」
「恐らく兵員輸送車よりも、すし詰め状態だったのではないか?」
「魔術師のアシスタントとしてなら、有能な技能ではあるが……道交法違反だね」

「よお、久しぶりだな、紅華!」
 その先頭を歩く、男の人が言った。
真っ赤なジャージ姿で、お腹周りもタプタプしている。

「海馬コーチ、どうしたんスか?」
「どうしたではあるまい。お前がプロ契約をして、そのチームが人手不足と言うではないか。そこでこのオレが、力を貸してやろうと言うのだよ、ガッハッハ」

「それよりコーチ、就職先は見つかったんスか?」
「グハッ、い、いきなりその質問をするか!?」
「コーチももう、30超えてるんだから、いい加減に定職に就かないと親が泣きますよ」

「な、なにを言うか、紅華。オレは二ーターだぞ」
「なんスか、二ーターって。カッコよく言ったところで、無職は無職でしょ?」

「それ言えてるね、海馬。もっとしっかりするね」
「うわあ、セ、セルディオスさんが、どうしてここに!?」
 セルディオス監督が声をかけると、海馬さんは大袈裟なアクションで驚いた。

「まだ言っていませんでしたが、ウチの監督です」
 雪峰さんが、サラロリと言った。

「セ、セルディオスさんが……監督!!」
「何か問題あるね、海馬?」
「な、なにも問題ないです、ハイ!」

「なあ、どうやらウチの監督と、知り合いみてーだな?」
「ウム。まるで軍曹の前の、平隊員のようだ」
「一体ウチの監督は、何者なのでしょうね」

「監督。海馬コーチと、知り合いだったんスか?」
「まあね、紅華。海馬が、小学生の頃から知ってるね」
「ま、まあ、そう言うコトだ」

「なにがそう言うコトね。せっかくプロ入りできたのに、酒や女に溺れて僅か3ヵ月で退団。呆れるよ」
「コ、コーチって、プロだったんスかァ!?」
「む、昔の話だ……」

「奥さん、どうしてるね」
「わ、別れました」
「愛想つかされたの、間違いね」

「コ、コーチ、結婚してたのかよ」
「奥さんと子供に、仕送りしてる?」
「じ、自分の収入では……その……」

「まったく、なにが二ーターね。ふざけるのも、いい加減にするよ!」
「ヒイイィィ、すみません」

「いや、アンタも自分を、メタボリッカーとか言ってたよな……」
「この師にして、この弟子ありと言った感じですね」
 呆れた顔で見守る、紅華さんと柴芭さん。

「それで雪峰。源太とはどんな話してたね」
「源太……とは?」
「海馬 源太。この二ーターの名前ね」

「え、ええ。海馬さんの観ている選手の何人かが、ウチのチームに入ってもらえるとのコトです」
 タブレットを操作していた雪峰さんが、紅華さんの方を見る。

「おお、久しぶりだな、紅華」
「まさかお前、プロになってたなんてな」
「しかもあの、倉崎 世叛のチームなんだろ?」

「まあ、そこまで大袈裟なモンじゃねェケドな」
 紅華さんは、車から降りて来た他の人たちに囲まれていた。

「紅華くん、紹介してくれたまえよ」
「ああ、そうだったな」
 柴芭さんに言われて、紹介を始める紅華さん。

「名前は、辺見、龍丸、野洲田、日良居、歌和薙、汰依、蘇禰、那胡、亜紗梨、屋城だ」
 うわ、覚えるの大変そう。

「全員オレらと同学年で、オレみたいなテクニックこそ無ェが、堅実だったり基本に忠実だったりと、そこそこ使えるヤツらだ。まあ、テキトーに覚えたってくれや」

「そこそこはねーだろ、そこそこは」
「どんな紹介だ。真面目にしやがれ!」
「トミンは、昔からそうだったよな」

「トミン言うな。男に呼ばれると、キショいわ」
「そう言えばお前だけ、女7人も独占しやがって。ズルいぞ」
「オメーら、まだ彼女もいねーのかよ。情けねえ」

 紅華さんたち、随分と親しそうだな。
それにしても、一気に十人も入るだなんて。

 これじゃあボクの、出場機会がぁぁぁ!
ボクは、妄想の中で頭を抱えた。

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