ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・31話

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過去の残光

 虚空なる深淵のような洞窟で、下半身を失ったサタナトスは、徐々に本来の姿を取り戻しつつあった。

「さて……と。そろそろ何とか、歩けるようにはなって来たね」
 金髪の少年は、少しフラつきながらも立ち上がる。

『随分と、時間のかかるコトだな、金髪の小僧』
 洞窟の壁に反射するように響く、魔王の声。

「まあね。ボクにはアズリーサ程には、魔族の血は流れていないらしい」
『人間に近いのであろう。喜ばしいコトではないか』

「キミも皮肉屋だねえ、ザババ。ボクがどれだけ人間と言う種族を、憎んでいるか知っているだろうに」
 サタナトスは魔剣プート・サタナトスを携え、洞窟の地下深くへと歩みを進める。

『まあ、そう怒るな。我とて、人間に敗れっぱなしはシャクなのだ。本来の力であれば人間などに、遅れを取ろうハズが無いからな』

「悪かったね。残念だケドボクの力じゃ、人間を魔王に換えたところで本来の能力は引き出せない」
 少年の歪んだ口元には、悔しさが滲んでいた。


『確かにな。キサマが、エキドゥ・トーオの王宮の神官どもを使って、実体化させた魔王『マルショ・シアーズ・フェリヌルス』とて、本来の力の十分の一すらも持っていなかったわ』

「今のボクには、随分と足りないモノが多いね」
『このままではいずれ、人間どもに追い詰められるだけであろうな』

「力が、もっと力が必要だ。天下に名だたる名剣、天下七剣(セブン・タスクス)」
『なる程、天下七剣を集める気か?』

「それもあるケド、『天下七剣を依り代とした魔王』を生み出すのさ」
 下層の洞窟はモンスターの巣窟となっていたが、サタナトスはそれを軽々と跳ねのけ先を急ぐ。

『とは言え、剣の魔力に耐えうる程に強靭な、人間の肉体は必要であろう』
「まずは知己に頼んでみるとするよ。この『バクウ・ブラナティス』に、縁のある者にね」
 サタナトスは、洞窟の最下層にある地下牢に脚を踏み入れた。

「やあ、ケイダン。久しぶりだね」
 牢の壁には、長髪で黒髪の少年が鎖に繋がれている。
手足はやせ細り、あばらが浮き出ていた。

「おっと、悪い悪い。猿ぐつわをさせたままだった」
 金髪の少年は、ケイダンの口を覆っていた猿ぐつわを引きちぎる。

「ゴホッ、ゴホッ……サ、サタナトス……何の用だ」
 黒髪の少年の見開いた眼には、かつての友人の姿が映っていた。

「実は頼みごとがあってね、ケイダン」
「キサマは、師匠の仇だ。頼みを聞くつもりは無い。殺すなら、さっさと殺せ」

「キミとボクは、同じ教会で同じ孤児として育った仲だ。大人たちのした仕打ちを、忘れたワケじゃないだろう。身勝手な人間どもを憎む気持ちは、同じじゃないか」
 天使のようにほほ笑む少年。

「確かにオレも、大人たちを憎んだ。だがオレは、師匠と出会って変ることが出来た」
「師匠? ああ、あの弱っちいオッサンか」
 サタナトスは、男に錆びた青銅色の石のような剣を見せた。

「頼みと言うのは、他でも無い。このバクウ・ブラナティスについてさ」
「そ、その剣は、師匠の……!?」
 師と仰いだ、ムハー・アブデル・ラディオの剣を見せられ、ケイダンの眼が血走る。

「し、師匠は……お前などに負けはしなかった。オレが、オレが足を引っ張ってしまったばかりに……」

 ケイダンは、唇を噛みしめながら過去を振り返る。
それは彼がまだ、師に付いて旅をしていた頃だった。

「師匠、肉が焼けましたよ。野菜もちゃんと、食べて下さいね」
 黒髪の少年は、焚き火に自らが仕留めた獲物を吊るし、小さなフライパンで野草を炒める。

「お前、ずいぶんと腕を上げたじゃないか」
 不精ヒゲを生やした男が、彼の前にドカッと腰を降ろした。

「料理のですか。それとも剣の腕?」
「どっちも、そこそこな。ついでに言えば、減らず口もだ」
「そりゃあ師匠直伝ですからね。料理以外は」

 少年は、呆れた目で師を見つめる。
けれども彼は師を尊敬し、師の様になりたいと思っていた。

「ま、オレの料理は喰えたモンじゃねえからな」
「自分で言わないで下さいよ。それで、依頼はなんだったんです?」

「魔王の討伐だ。今回は、王の勅令でな」
「ザバジオス騎士団や、エキドゥ・トーオの王宮からの依頼では無いと。それで、相手はどんな魔王なんですか?」

「力の魔王にして恐怖の魔王、モラクス・ヒムノス・ゲヘナスだぜ」
 ムハー・アブデル・ラディオは、蜃気楼の剣を手にした。

 

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