異形のサブウェポン
「女王陛下……」
「過分なるご配慮をいただき、有難き幸せ」
「今後も、身命を持ってお仕えする所存にございます」
ナターリア、オベーリア、ダフォーリアは、それぞれに雪薙、月薙、花薙を拝領する。
「ウム、細身で優美な3振りだ。良く似合っておる」
雪影が目を細めると、3人の侍娘たちは頬を赤らめた。
「な、なあ」
「ナターリアたちだけ、ズルくないか?」
「アタシたちも、なんか欲しいぞ」
ヤホッカ、ミオッカ、イナッカの3人の獣人娘が、駄々をこねる。
「何を言っているのです」
「貴女たち獣人の武器は、生来のその爪でしょう」
「剣など持ったとろこで、強化にはなりませんよ?」
アルーシェ、ビルー二ェ、レオーチェの3人の少女騎士が、正論を唱えた。
「それならこちらの、丸盾なんかど~かモン?」
「盾にもなるし、淵に刃が付いてて、ヨーヨーみたいに飛ばせるモン」
「そ、それは、扱える人間も少ない、いわく付きの武器じゃないか?」
「ご主人さまのご主人さま」
「自分とこの商品に、ケチ付けるなモン」
「おお、盾か」
「これくらいの大きさであれば、戦闘の邪魔にはならんな」
「でも、投げたらそれまでなのでは?」
「チェーンが付いてるから、ちゃんと帰って来るモン」
「だケド動きが独特だから、反射神経が必須モン」
「ふっふっふ、獣人の反射神経なら大丈夫だぞ」
「なあ、これ欲しいんだケド」
「いいだろ、女王さま」
「ええ、構いませんよ」
「毎度ありィモン」
金髪の4人の少女は、手をこすり合わせて頭を下げる。
「そんじゃ最後は、騎士のお姉さんたちモン」
「いえ、我らはサバジオス騎士団より、聖剣を下賜されておりますので」
「まあまあ、硬いコト言うなモン。この蛇剣なんか、ど~かモン」
「オイオイオイオイ、それは前の武器屋の親父すら店頭に並べて無かった、代物じゃないか」
「まあ確かに、扱いは相当難しい武器モン」
「でも、サブウェポンとしてはかなり優秀モン」
元富の魔王のうち、サーモンピンク色のミディアムヘアの4人が、負けじと息巻く。
「武器屋の発言とは思えませんね、勇者殿」
「この鞭のように長い剣の、何処が……」
「サブウェポンに向いていると、言うのでしょう?」
3人の少女騎士の手にした剣は、本人たちの身長よりも長かった。
「す、すみません。オイ、お前たち……」
「解って無いのは、そっちモン」
「これは、異国じゃウルミとか呼ばれてる剣モン」
「ウルミ……そんな名前だったのか」
「敵の近接武器の範囲外から、攻撃できるモン」
「それに刀身はグニャグニャしてて、ベルトみたく腰に巻いて置けるモン」
「このやたらと長い剣を、腰に?」
「こ、これは、驚くほどコンパクトになるぞ!」
「成る程、確かに携帯武器としても使えそうだな」
細い金属の板状の剣は、少女たちの腰にピタリと納まった。
「では、こちらの武器もください」
レーマリア女王は、因幡 舞人武器店で、9つの武器をお買い上げになられた。
「あ、有難うございます、レーマリア女王陛下」
「お礼を言うのは、こちらの方ですよ。妹たちに、有益な武器を持たせるコトができましたから」
女王の視線の先には、手に入れた武器をさっそく使う9人の妹たちの姿があった。
「ス、スゴイ。呪われた刀も、おかしな盾も、やたらと長い剣も、ちゃんと使いこなしてる!?」
因幡 舞人は、武器屋の親父の顔を思い出す。
『武器屋を買っときゃ、パーティーメンバーの武器には事欠かない。上手く商売すりゃあ、ここで利益だって出せるんだぜ?』
ガハハと豪快な笑いが、聞こえて来そうだ。
「し、親衛隊の姉ちゃんたち、スゲエぞ」
「オレも、なんかサブウェポン練習しようかな?」
「オ、オレだって」
因幡 舞人武器店は、昼の休憩の間だけで商品が底を突いた。
前へ | 目次 | 次へ |