ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・13話

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女王との商談

 湖畔の武器屋の近くで休息を取る、女王レーマリアと彼女を護衛するザバジオス騎士団。

「そこのカッコイイお兄さんに、ピッタリの剣があるモ~ン」
「このナイフなんか、サブウェポンとしてゆーしゅーモン」
 兜を脱ぎくつろぐ若き騎士たちに、アコギな声で誘いをかける8人姉妹。

「オイ、お前たち。なにやってんだよ?」
 武器屋のカウンターから、八っ子に小声で話しかける舞人。
彼女たちはかつて、富の魔王・『マモン・アマイモン・マンモーン』と呼ばれていた。

「見ての通り商売モン」
「アイツら、ご主人サマのご主人さまが連れて来たモン?」
「違うよ、アイーナ、アキーナ」

「まあ、結果オーライだモン」
「今んとこお客が殆ど来てなかったから、アイツらカモモン」
「カモ言うな、アミーナ、アリーナ」

 レモン色のお洒落なショートヘアに、パッションピンクの瞳をした4人の少女。
彼女たちの髪は、舞人がカットしたモノだった。

「少し原価割れになっちゃうケド、アイツらに武器を売るモン」
「サービス、サービスだモン」
「原価割れって……大丈夫なのか、マイーナ、マキーナ?」

「先行とーしモン」
「アイツらに、宣伝してもらうモン」
「ホントか、マミーナ、マリーナ。心配だなあ」

 サーモンピンク色のミディアムヘアに、ライトパープルの瞳の4人の少女。
彼女たちは舞人への返事もそこそこに、武器の販売を続けていた。

「随分と可愛らしい、店員さんですね。勇者様」
 レーマリアが、配下の9人の親衛隊を引き連れ、こじんまりとした武器屋に入って来る。

「ゆ、勇者って呼ばれ方、なんかまだしっくり来ないです」
「この子たちも元は、魔王だったのでしょう。魔王を無力化したばかりか従えるなど、勇者にしか出来ない所業ですよ」

「コイツらは、人間界の富に興味があっただけで、ボクに従ってるワケじゃないんです」
「そうなんですか?」

「ルーさまになら従うモン」
「ただの人間に従う義理は無いモン」
 8人の少女たちは、せっせと商売をしながら答えた。

「そこの3人の侍の娘さんたち、良い刀があるモン」
「少し呪われてるケド、タブン問題無いと思うモン」
「イヤイヤ、あるだろ。呪われた武器を、売ろうとしてるんじゃない」

「もしかして、妖刀の類でしょうか?」
「そうモン。お前たちなら、扱えそうモン」
「一度、見せてはいただけませんか?」

 ナターリア、オベーリア、ダフォーリアの3人は、3本の刀を受け取って念入りにチェックする。

「それぞれの刀身に、雪の文様、月の文様、花の文様が刻まれてますね」
「確かに、多少の妖力は感じますが」
「扱えないレベルでは、無いと思います」

「フッ、その刀は、名だたる名工が打ったモノだ」
 武器屋の入り口から入って来た、白紫色の長髪の男が言った。

「貴方は……天酒童 雪影さま!?」
「久しいな、レーマリア……いや、今はレーマリア女王陛下であったな」
「ゆ、雪影さん。どうしてここに!?」

「わたくしも、お探ししておりました。王都ヤホーネスを救っていただき、心より感謝致します」
「残念ながら、王をお救いする事は叶わなかった。多くの民も死んだ」

「ですが雪影様がおいで下さらなければ、王都は壊滅していたでしょう。どうかわたくし達と共に王都に赴いて、生き残った民に勇気を……」
「済まないが、勇者などと言う柄では無いのでな。それは、因幡 舞人に任せよう」

「そ、そんな。だって王都を救ったのは、雪影さんたちで……」
「わたしは、そう言う類は苦手でな。それより、お前たちが手にする3振りは銘を、雪薙、月薙、花薙と言って妖刀に属するが、紛れも無い名刀だ」

「そうでしたか、名立たる名刀」
「……と同時に、やはり妖刀でもあると」
「わたし達には、まだ扱えぬ代物でしょうか?」

「イヤ、今のお前たちであれば、問題無く使いこなせよう」
「あ、有難うございます、雪影さま」
 3人の侍娘は、声を揃えて頭を下げた。

「ちゃんと、お代はいただくモ~ン」
「けっこ~お高いモン」
「こ、こら、お前たち!」

「た、確かにこの金額では……」
「とてもじゃ無いですが、手が出ません」
「仕方ありません。今回は諦めます」

「そうですね、では妹たちの武器は、わたくしが購入致しましょう」
「じょ、女王陛下!?」
「わたくしの護衛に使う剣です。問題は無いでしょう?」

「毎度アリ~モン」
 商談は、あっさり成立した。

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