世界の伝え方
漫画ばかり描いていたボクが、色々な人の小説やラノベを読んでみた感想。
『上手い作家は、読者に世界観を伝える工夫をしている』
これが最初に感じたコトです。
漫画でも同じなんですが、読者に物語の世界観を伝えるのに、何の工夫も無くただ『この世界はこう言うものですよ』と説明しても、退屈なモノになってしまう。
漫画と違い、絵に頼れない小説では、世界の描写は文章で書くほかありません。
ですが、世界の説明を長々と書けば書くほど、読者に読ませるのが大変になる気がします。
何故かと言えば答えは簡単で、『説明』だからです。
何を言っているんだと、思われるかも知れません。
ですが、現実問題としてみなさんは、『説明書』を読むのって好きですか?
『取り扱い説明書は、全て読みました』なんて人より、『全く読んでません』って人の方が遥かに多いと思います。
ただ説明を長々とされても、読者としては退屈なんじゃないかと思うんです。
アナタの描く世界がよほど魅力的あったり、もしくは流麗な文章を書けるのであれば話は別ですが。
説明を『好み』に変えてしまう
では、上手い作家はどうしているのか?
一つの手段として、『キャラクターの好みに変えてしまう』と言うのがあります。
アガサ・クリスティーの評価していた作家に、レイモンド・チャンドラーと言う人物がいます。
彼は、小説の世界の説明を、『フィリップ・マーロウ』と言う探偵の好みに変えてしまったのですよ。
最近では村上 春樹氏が翻訳をしており、作中の文章も著作物でありますので、あえてマーロウが言いそうな言葉に変えて例を挙げます。
【例1】
『車通りの多い大通りの先には、高層ビルがある』
『大通りは排ガスでいっぱいだし、その先にあるビルは偉そうにこちらを見降している』
【例2】
『フォーマルなスーツを着た、背の高い男が立っている』
『天井の柱に頭をぶつけそうな男が、似合いもしないスーツを着込んでいる』
それぞれの例題の1行目はただの説明文で、2行目はマーロウが吐きそうな台詞に変えてあります。
世界観の説明を、1人の人間の感情に置き換えるコトで、退屈させずに読ませるとは。
流石にチャンドラーは、天才ですよね。
ラノベでの応用編
では、実際にラノベで応用してみましょう。
主人公は、我がままな王女さまで、世界感はファンタジーな設定にしてみます。
【例1】
『この街には、背の高い塔が幾つもそびえている』
『なんなのよ、この街の建物は。どこもかしこも、高い塔ばかりじゃない!』
主人公の台詞にするコトで、街の様子の説明と共に、主人公自身の性格も伝わると思います。
ひょっとして主人公は、背が小さいのかな……と思わせたり。
【例2】
『巨大な翼を広げた、真っ白なドラゴンが蒼い瞳でこちらを見ている』
『うわあ、真っ白なドラゴンだわ。大きな羽根を広げて、こっち見てる。蒼い瞳がカワイイ』
ドラゴンの説明と同時に、主人公の気持ちや感性も理解できますよね。
いかがでしたでしょうか。
特に一人称視点のラノベでは、威力を発揮する方法だと思います。
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