ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・10話

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キャス・ギアの謎

 時は移ろい、現在へと戻る。
小さな城塞都市ニャ・ヤーゴの城で、少女たちが円卓を囲んでいた。

「日記に書かれておったのは、ここまでじゃよ」
 漆黒の髪の少女は、シスターが記した日記を閉じた。

「村に戻って来た少年たちが、邪神の生贄となり、少女たちの行方は知れなかった」
 レーマリアは、話の要点を整理する。

「村長とその一行も、二度と村へは戻って来なかったのですね、ルーシェリアさま」
「そうじゃ、レーマリアよ。恐らくサタナトスの手にかかったのだと、日記には記されておる」

「キャス・ギアでその後、何があったのでしょうか?」
「村長ら一行がキャス・ギアにいた時期に、金髪の少年の目撃例が多数あったらしいがの。それ以降は、有効と思える記載は無かったのじゃ」

「渓谷の村の住人であるシスターが、キャス・ギアの街の情報を知ろうとしても、それが限界だったのでしょうね」
「それでもよく集めたモノじゃよ。サタナトスたちのコトを、余程気にかけておったのじゃろうて」

「キャス・ギアの街ですか」
「確か数年前の飢饉の年に、街の領主が亡くなったと聞き及んでおります」
「ですがその後の調査でも、死因は不明とのコトでした」

 ナターリア、オベーリア、ダフォーリアの3人の侍少女は、主(あるじ)と仰ぐ女王レーマリアに関連情報を伝える。

「死因が不明……あるいは、死因が不明としたかったとは考えられませんか?」
「十分にあり得る話じゃな。死んだ領主が、サタナトスやアズリーサに対して、何を行ったかに寄りけりじゃがの」

「バッタが引き起こした飢饉により、キャス・ギアでは多くの死者を出したそうですが」
「ヤホーネスより派遣された、救援部隊により飢饉は徐々に納まったとのコト」
「ですが救援部隊の話によれば、街は大変な混乱状態にあったと聞いております」

 女王レーマリアに仕える少女騎士、アルーシェ、ビルー二ェ、レオーチェの3人も、あるじに有益と思われる情報を提供した。

「混乱は、バッタの大量発生が巻き起こした飢饉が原因と、考えられはしますが……」
「ウム、それ以外の要因を、考察する必要がありそうじゃの」

「な、なあ。ひょっとして、キャス・ギアの街に行く気なのか?」
「アタシも、行ってみたいのだ」
「ねえ、お姉ちゃん。いいだろ?」

 ヤホッカ、ミオッカ、イナッカの3人の獣人娘が、無邪気に懇願する。

「いいワケが無いでしょう。まったく、どれだけ自覚に欠けているのですか」
「ここはもう、浴場ではありません。レーマリア女王陛下とお呼びなさい」
「女王陛下は首都へと赴いて、戴冠の儀を行った旨を民衆に伝えるお役目があらされるのです」

「そ、そっかぁ」
「それじゃあ……」
「仕方ないのだ」

 3人の獣人娘は、3人の少女騎士の小言にも素直に従った。

「ですが女王陛下」
「キャス・ギアの謎の調査も、早急に進める必要があると思われます」
「まだサタナトスを、討ってはおりませんので」

「わたくしも、同意見です。そこで不躾ではありますが、ルーシェリアさまに再び調査を依頼したいのですが……」
「なあに、構わんよ。乗りかかった舟じゃ。ご主人さまと、直ぐに調査を済ませて来るのじゃ」

「ですが女王陛下。因幡 舞人を、連れて行かれるのはいかがかと」
「かの者は今や、我が国の救国の英雄となっているのです」
「今、国を離れられては、人心にも影響が及ぶ恐れがございます」

「そう……ですね」
 レーマリアは、下唇に指を充てる。
「因幡 舞人には新たな英雄として、首都の人民の前に立っていただく必要がありそうです」

「フッ、パレアナが生きておったならば、泣いて喜びそうな台詞じゃ」
 ルーシェリアは微笑を浮かべると、シスターの日記を手に席を立った。

「とは申せ、流石に妾一人では、サタナトスに遭遇でもしては分が悪い。そこで、『もう一人の英雄』に、同行を願えればと思っておるのじゃが……」

「はい。わたくしも、赤毛の英雄こそが適任と考えておりました」
 新たな女王は、かつて魔王だった少女の意見を、あっさりと承認した。

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