ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第四章・EP004

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勇樹と宝木

 再び審判の笛が鳴り、試合が開始される。
ボールをセットしたチュルノ・ボグスの選手の一人が、柴芭さんのチームの陣地に切れ込んだ。

「今ドリブルしてる、刈り上げツンツン頭も、三木一葬(さんぼくいっそう)なのか?」
 紅華さんが、倉崎さんに質問した。

「ギャハハ。確かに、頭のてっぺんから後ろにかけての髪の毛が、ハリネズミみて~だな」
 それに眉毛も短いし、横の刈り上げは稲妻みたいな模様になってる。
なんか、恐そうな人だなあ。

「ヤツは、勇樹 美鶴(ゆうき みつる)。三木一葬の一人に数えられる男で、切れのあるドリブルからのシュートが持ち味だ」
「へぇ~、そいつは愉しみだぜ」

「あッ!?」
「しま……」
 一瞬で抜き去られる、穴山三兄弟のウチの二人。

「中学生ごときに、止められるオレじゃねえぜ」
 勇樹さんは、そのまま左サイド寄りを駆け上がる。

「なあ、ピンク頭。今のフェイント、なんだ?」
「ただのダブルタッチだろ」
「だよなあ。なんでそんな、簡単なフェイントに引っ掛かるんだ」

「結局のところ、ドリブルってのは切れとタイミングだからな。どんなに高度なフェイントだろうが、モタモタしてたらボールを獲られちまう」
「な、なるホド」

 た、確かに。
倉崎さんなんて、クライフターンだけで、ボクや先輩たちを翻弄してたモンな。

「見ろよ、ゴール前。魔術師とハリネズミの、1対1(ワン・オン・ワン)だ」
「こりゃあ、見物だぜ」
 勇樹さんの前に立ちはだかる、柴芭さん。

「やっぱテメーが、このチームのエースか?」
「そうなりますね、勇樹さん」

「先パイって呼べと言いたいところだが、敵同士だからまあ大目に見てやるぜ」
 柴芭さんに身体をぶつけ、ダブルタッチで抜きにかかる勇樹さん。

「I appreciate it(それは有難いです)」
 柴芭さんは、身体をぶつけられても倒れずにドリブルに付いて行く。

「テッメ、日本人なら日本語話せよ!」
「Excuse me(失礼しました)」
「おまッ……ナメてんのか、このヤロ!?」

 柴芭さん、明らかに勇樹さんを挑発してるよね。

「オ、オレ、ハリネズミの方を応援したくなってきた」
「二ヒヒ、犬っころとハリネズミ。動物にゃ、英語は通じないか」
「なんだと、ピンク頭ァ!」

「勇樹、何をやっている。一旦、後ろに戻せ」
 司令塔のポジションであろう、選手が言った。

「うるせえな、宝木」
 ボールを戻す気など全くない、勇樹さん。

「こっちは、このクソ生意気なガキに、サッカーの恐ろしさを教えてやってるトコなんだよ」
 柴芭さんが振り切られず、付いてくるのもモノともせずに、ペナルティエリアに進入する。

「柴芭の野郎、ペナルティエリアに入られちまったぞ」
「これで、迂闊にファウルに行けなくなったな」
 雪峰さんの言った通り、柴芭さんの密着マークが僅かに緩んだ。

「ここだッ!」
「なッ……!?」
 いきなり身体を反転させ、シュートに行く勇樹さん。

「マズイ、シュートを撃たれた!」
「キーパー!」
 穴山三兄弟が、叫ぶ。

 けれどもボールは、キーパーの手の届かないところを抜けて行った。

「おっしゃぁ、決まっ……!?」

 あ……。
ボールは、無情にもゴールポストを叩き、大きく跳ね返る。

「まったく……詰めが甘いんだよ、お前は」
 宝木と呼ばれた司令塔が、跳ね返ったボールに走り込んだ。

「ま、マズイ。詰めろ、則祐!」
「キーパーが、倒れたままだ」

「ダメだ、間に合わない……」
 穴山 則祐が伸ばした脚も、放たれたシュートに触れるコトは出来ない。

「綺麗なグラウンダーのシュート。美しく、完璧なシュートフォームだ」
「そうだな、雪峰。ヤツの武器は、正確無比なプレイにある」
「倉崎さん、彼は?」

「宝木 名和敏(ほうき なわとし)。京都の名門仏教高校の、エースだった男だ」

 三木一葬儀、最後の一人が放ったシュートは、マジシャンズ・デステニーのゴールに吸い込まれようとしていた。

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