ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第四章・EP003

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三木一葬(さんぼくいっそう)

「柴芭さん、あの5番の選手、ヤバいっスよ」

「知っているよ。彼の名は、葛埜季 多聞(くずのき たもん)。フォワード並みに前線まで飛び出して、ゴールを狙ってくる超・攻撃的なリベロさ」
 センターサークルにボールをセットしながら、ゴールを奪った相手を見る柴芭さん。

 視線の先には、ゆっくりと自陣に帰る巨漢の姿があった。

「あの赤髪ロックなヘアが、葛埜季 多聞か」
「ボールを奪って前線まで持ちあがり、フィニッシュまで決めてしまうとは……」
「お前と杜都を、足した感じなプレイスタイルだな、雪峰」

「オレもまだまだと言いたいようだな、紅華」
「ま、気にすんなや。倉崎さん、アイツらのが年上なんでしょ?」
「ああ、彼らは高校3年だ」

「つまり、倉崎さんと同級生ってコトっすよね?」
「勇樹、宝木、葛埜季、智草の四人は、『三木一葬(さんぼくいっそう)』と呼ばれている。近い将来、プロになったヤツらと対戦するコトになるだろうな」

「あのキーパーも、やっぱスゴイっスよ」
「ど、どうするんスか!?」
 その頃、まだ中学生の穴山兄弟は、パニックになっていた。

「智草 杜邑(ちぐさ とむら)か。確かに堅実で、隙の無いキーパーだね」
 柴芭さんがボールを穴山兄弟に叩くと、直ぐに足元にボールが折り返される。

「なに呑気なコト、言ってるんスか」
「オレたち、1点のビハインドっスよ」
「判っている。占いの結果も、ボクたちの勝ちは無いと出ていたからね」

「そんな情報、聞きたくなかったっスよォ」
「だろうね。だから、伝えなかった」
 柴芭 師直は、そのままシュート体制に入った。

「柴芭士官が、あんな距離から狙って来たぞ」
「流石に遠すぎる。先制されて、焦っているのか」
 デッドエンド・ボーイズの、二人のボランチの意見が揃う。

「ボクにとってこの距離は、射程範囲だ」
 カード占いを得意とするマジシャンは、回転のかかったシュートを放った。

「シュートが、完全にゴールの枠から外れてるじゃねえか!?」
「い、いや、あの野郎、カーブをかけてやがる」
 紅華さんの言った通り、ゴールの枠を外れるかに思われたシュートが、再びゴールの枠を捉える。

「どうにか……なれ!」
 背中に金龍の刺繍されたユニホームが、右におもいきり跳んだ。
けれどもボールは、キーパーグローブの先を抜ける。

 パサッとネットが揺れた。
審判の笛が、静まり返った体育館に鳴り響く。

「な……柴芭の野郎、とんでもないシュートを決めやがった!?」
「あのキーパーの反応も凄かったケドよ。柴芭のシュートが上を行ったぜ」
 紅華さんも黒浪さんも、スーパーゴールに目を丸くした。

「さ、さっすが柴芭さんだァ」
「あの距離のシュートを、コントロールして決めちまうんだからな」
「流石のキーパーも、触れませんでしたね」

「いや……僅かに触っていたよ」
 視線をぶつけ合う、柴芭 師直と、智草 杜邑。

「柴芭とあのキーパー、バチバチにガン飛ばし合ってるぜ」
「確かに柴芭のシュートに、反応はしていた。メロウな感じのナチュラルヘアだが、気は強そうだな」

「また髪型かよ。ピンク頭、流石は美容院の息子なのな」
「サッカー選手も、プロともなれば髪型も大事なんだよ。お前も、刈ってやろうか?」
「オレは、ウルフな感じの今の髪型、気に入ってるからいい」

 賑やかなドリブラーたちの隣で、ボクは戦況を見つめていた。
柴芭さんの能力は、ハンパ無くスゴイ。
倉崎さんのスカウトリストに、載っているだけのコトはある選手だ。

「智草のヤロー、使えねえなあ。簡単にゴールを決められやがって。同点に、追いつかれちまったじゃねーか、メンドクセー」
 センターサークルで、ボールをセットしていた男が言った。

 そこから、『三木一葬』による怒涛の猛攻撃が始まる。

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