ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第三章・EP017

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指揮者(コンダクター)

「こ、これは……!?」

「どうしたんスか、柴芭さん?」
「それ、倉崎 世叛が落としていった、カードっスよね?」
「また、メッチャ強いカードだったんスか?」

 穴山 範資、貞範、則祐の、三ッ子兄弟が問いかけた。

「彼の未来は、『ザ・ワールド』。意味は、成就、完全、完成、素晴らしい結末などだね」

「倉崎 世叛、スゲー」
「クラブじゃデビュー戦から、いきなりレギュラー取ってるもんな」
「次の日本代表の合宿に、呼ばれるって噂もあるっスよ」

「恐らくはこの日本に留まらず、世界へと羽ばたいて行く選手になるだろうね……」
 ただし、それは『正位置』だった場合の意味だ。
それに、『世界』の影に隠れていた、このカード……。

 柴芭 師直の瞳には、『塔』が描かれたカードが映っていた。

「ウチのチームも、徐々にではあるが連携が取れて来たな」
 魔術師の、占いの対象となっていた男が言った。

「紅華も黒浪も、完全じゃないが縦のコースは切るようになったし、雪峰が上手くディフェンスをしてくれている。あの辺のセンスは、流石だ」
 少しずつ仕上がって行くチームに、表情を緩める。

「みなさ~ん、ここはパスを回すのですよ。ボールは汗を、かきませ~ん!」
「ボールは汗をかかなくたって、メタボ親父はじっとしていても汗まみれだぜ」
 紅華さんが、相手のパスをカットした。

「この親父ども、体力が尽きかけていて、パスの精度が落ちてやがる」
「トミ~ン、行っちゃえ!」
「ビール腹なおっちゃんなんか、かわせェ!」

「そんじゃ、ご要望に応えてカッコいいとこ見せてやっか」
 ボールを持ったピンク髪のドリブラーは、何のフェイントもせず悠々と、2枚の相手ディフェンスの中央を突破する」

 上手い、流石は紅華さん。
相手は、またフェイントを仕掛けてくると予測していたところを、意表を突いての中央突破だ。

「まだ、オレがいるぜ」
 やはりメタボなキーパーが、ゴールに張り着くように立ちはだかる。
フットサル用の小さなゴールも相まって、ほぼシュートコースが無い。

「うおりゃ、これで決めるぜ!」
 利き脚の左脚を、大きく振り上げる紅華さん。

「身体のどこかに、当たれェ!」
 強烈なシュートを阻止しようと、大の字になるメタボキーパー。

「ホレ」
「ああッ!?」
 ボールはゲートボールのように、開いたオジサンの脚の間を抜けて行った。

「きゃああ、またトミンが決めたァ」
「やったやったぁ、これで同点だよ」
 黄色い歓声を上げる女子高生に、二本指で敬礼する紅華さん。

「強いシュートを打つと見せかけての、スローシュートか。やるな、紅華」
「まあな、雪峰。上手いコト、高い位置でパスカットできたしよ」

「近代サッカーに置いて、高い位置でのパスカットは、得点になるチャンスが圧倒的に増すからな」
「へ~マジかよ。オレさまも、狙ってみようかな」
「マネすんじゃねえ、クロ」

 それから二人のドリブラーは、前線から積極的にプレスをかけるようになる。
たった一言で、二人にディフェンスさせちゃうなんて、流石だな。

「ガアアアーーーッ!!」
 黒浪さんが、とんでもないスピードでパスカットした。

「オイオイ、あのパスに追いつくのかよ」
「ヘヘッ。どうよ、驚いたか」
「そう言うセリフは、ゴールを決めてから言うんだな」

「なら見せてやるぜ。黒狼サマの、ハイスピード・ゴールをよォ!」
 ドリブルを始める黒浪さん。
でも、思ったより速くない。

「クッソ、やっぱボールが小さいんだよな」
 直ぐに、分厚い脂肪の肉ジュバンに遮られた。

 スピードタイプのドリブラーである黒浪さんは、スピードを止められると打開策が無いんだ。

「一旦戻せ、黒浪」
「し、仕方ねえ」
 渋々ボールを、雪峰さんに還す。

「あッ!」
 雪峰さんが、還されたボールをダイレクトで蹴り返した。
ボールは、黒浪さんの前に立ちはだかっていた、ディフェンスの背後に落ちる。

「ナイスだぜ、キャプテン!」
 一瞬反応が遅れたものの、圧倒的なスピードでボールに追いつく黒浪さん。
キーパーも、ボールに対して飛び出していたから、ボールは簡単にゴールに流し込まれた。

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