ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第三章・EP016

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反撃の狼煙

「サイドにパスが通ったっスよ、柴芭さん!」

「ああ。だがここから得点できるかは、別の問題だ」
 ヤツの、紅華 遠光の今の運命は……。

「ナイスだ、一馬。行くぜ、メタボ親父!」
 紅華さんが、左サイドからゴール前に切り込んだ。


「トミン、行っちゃえェーー!」
「カッコいいトコ、見せてェ!」
 黄色い歓声を上げる女子高生の隣で、坊主頭の三つ子が戦況分析をする。

「確かにそうっスね」
「せっかくキーパーが、いい判断でサイドに流してフリーなのに」
「ドリブルで仕掛けたら、相手に戻られ……あッ!?」

 紅華さんが、パスを出した。

「ト、トミンがパスした!?」
「ゴール前が、どフリーだ!」
 紅華さんに集中した、2枚のディフェンスが崩れる。

「ヘッ、ちゃんと決めろよ……」
 二人の豊満ボディのオジサンの間を抜け、ボールが目の前に転がった。

「カ、カーくんだぁッ!?」
「フッ、一馬……」

 よし、これなら行ける。
ボクはガラ空きのゴールに、ボールを流し込んだ。

「おっしゃあ、一馬が決めたぜィ!」
 黒浪さんの日焼けした腕が、ボクの首に絡みつく。

「エクセレントだ、一馬。よく、全体が見えていたな」
 白峰さんまで、褒めてくれた。

「ま、オレのパスあってのコトだ。感謝しろよ、一馬」
 コクコクと頷く。

「何だよ、雪峰。文句でもあるのか?」
「イヤ、文句があるのは自身に対してだ」
 余裕の戻った紅華さんとすれ違う、クールな表情の雪峰さん。

 それから程なくして、試合再開のホイッスルが鳴り響いた。

「倉崎さん。今の彼のプレイ、貴方がZeリーグで決めた最初の得点に似てますね」
「フッ、柴芭か。確かにそうかもな」
 ベンチで見守る倉崎さんの後ろから、声をかける柴芭さん。

「お前たちも、次の試合のウォーミングアップか?」
「ええ。この試合どちらが勝つにせよ、ウチと当たるのは先の話ですからね」
 マジシャンは、カードをシャッフルし始める。

「ところで倉崎さん。カードを3枚引いてみて下さい」
「ン、3枚もか?」

「簡易的な、スリーカード・オラクル。引いたカードで、貴方の現在・過去・未来が占えるのですよ」
「オレはあまり、占いは信じない質でな」

「まあ、そう言わずに」
「ヤレヤレ、それじゃ……」
 柴芭さんが扇に広げたカードから、3枚のカードを引く倉崎さん。

「ナイスシュートだぜ、キャプテン!」
 雪峰さんのコントロールされたシュートが、ゴールネットを揺らす。

「おっと、スマン」
 何枚かのカードが、地面に落ちた。

「いえいえ、2枚は引いてますね。どれ、見せて下さい」
「こうか?」
 倉崎さんは、カードを柴芭さんに見せる。

「過去は、『星』のカード。現在は、『皇帝』のカード。流石に強運の持ち主の様だ」
「フッ。何度も言うが、オレは占いは信じない。試合に集中させてくれ」
 倉崎さんは、柴芭さんたちと距離を取った。

「アイツの占い結果、そんなに良かったんスか?」
「そうだね。星のカードが示すのは、願いや希望、将来の目標」

「皇帝のカードは……なんか、強そうっスけど?」
「支配、安定、成功などだね。まったく、彼にふさわしい運命だよ」

「おっしゃあ、オレさまも決めたぜ!」
「よくやったな、クロ。いい仔だ」
「犬じゃねえって言ってんだろ、ピンク頭ぁ!」

「柴芭さん、アイツら2点差まで追い上げて来たっスよ」
「そうだね……」
 柴芭さんは、倉崎さんが落としていったカードを拾おうとする。

 最後のカードは、『世界(ザ・ワールド)』。
貴方はどこまで、強い星を持っているのですか……。

「……ッしゃあ、なんとか枠に行ったぜ!」
「やった、今度はトミンが自分で決めたァ」
「今のシュート、メッチャカーブしたくない?」

「紅華のヤツまで、決めて1点差っスよ」
「ん、どうしたんですか、柴芭さん?」

 柴芭 師直の指先には、世界のカードに隠れてもう一枚のカードがあった。

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