ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第三章・EP013

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セルディオス・高志

 筋肉で覆われた杜都さんの左脚が、体育館の床を掴む。

「安全確認よォォし、弾込めよォォし、単発よォォし!」
 いつもの意味不明な台詞と共に、右脚が撃鉄のように振り下ろされた。

 杜都さんの、弾丸ロングシュートだ。
コースは開いてるし、これなら……。

「きゃあああああーーーッ!!?」
「うわあああああーーーッ!!」
「いぃやああぁぁーーーッ!」

 放たれたシュートは、体育館の二階通路で観戦していた、八人の女子高生の鼻先をかすめる。
背後の巨大な窓ガラスまで突き破って、ボールは何処かへ跳んで行った。

「弾着、確認……出来ず」
「あ、でもパンツは確認できたかも」
 杜都さんの台詞に被せるように、黒浪さんが呟く。

「ちょっと、どこにシュート撃ってんのよ!」
「殺す気ィ!」
「顔に当たったら、お嫁に行けなくなってたじゃない!」

 紅華さんの連れて来たコたちが、怒ってる。
当然か。
奈央の顔にも当たらなくて、良かった。

「す、すまない。オ、オレは、一般市民の女子を、危険に晒してしまった……」
 杜都さん、メチャクチャ落ち込んでるなぁ。
プレイに、影響出なきゃいいケド。

「オイ、クロ。集中しろよ。フットサルは、アウトオブ・プレイはキックインでの再開なんだ」
「え、マジかよ。サッカーとルール、違い過ぎだろ」

「ゴール前に、隙が出来ているな。ホレ」
 メタボな腹をタップンタップンさせながら、オジサンがボールを蹴り入れた。

「なに簡単に、入れさせてんだよ。試合前に説明さただろうが」
「う、うっせえ、ピンク頭。オレさまが直ぐに、奪い返してやるぜ」
 けれども黒浪さんの猛追の前に、ボールはサイドにパスされる。

「杜都、ボールに行ってくれ。オレは……!?」
 雪峰さんが指示を出すが、杜都さんがあっさりと抜かれた。

「どうやらボクのカード占いが、当たってしまったようですね」
 体育館の片隅で、柴芭さんが倉崎さんに向かって呟く。

「行かんな。サッカーとの違いに戸惑う以前に、チームとして何一つ纏まっていない」
 倉崎さんの見つめる前で、再びボールがゴール前のフォワードに渡った。

「と、止めなくちゃ……これを決められたら、4点差」
 ボクは、オジサンが身体を傾けシュート体制に入ったので、必死に左側に跳んだ。

「一馬、それはキックフェイントだ……」
 背後から、倉崎さんの声が聞こえる。
ボールは、あざ笑うかのようにボクの足元を抜け、右側のネットを揺らした。

「どうやら彼は、キーパーとしては素人のようですね?」
「ああ。残念ながらウチには、1番を背負えるプレーヤーは居ないんでな」
「スーパースターのチームも、まだ発展途上と言ったところですか」

「でも、今のってフェイントだったんスか、柴芭さん?」
「オレたちには、全然解らなかったっス」
「あのメタボ親父が、そんな器用とも思えないっス」

 坊主頭の穴山三兄弟が、口をそろえる。

「発展途上なのは、ウチも同じか」
 占いマジシャンは、カードを左右の腕の間で遊ばせながらため息を付いた。

「シュートを決めたFWのおっさんは、名前をセルディオス・高志と言ってな。プロサッカーリーグができる前のリーグで名を馳せた、日系3世の右利きのプレーヤーだ」

「そう言えばさっきから、やたら上手いとは思ってたんだ」
「今ので、ハットトリックみてーだしな」

「彼はシュート体制に入ったとき、あえて身体を開いて見せた」
「そ、それがフェイントっスか、柴芭さん?」

「ああ。右利きの彼が、身体を後ろに倒してシュート体制に入れば、パー(遠い)サイドを狙っていると思うだろう」
「た、確かに」

「そう思わせておいて、無理やり身体を捻ってニア(近いサイド)にゴールを決めたのさ」
「あの腹で、それをやってのけたってのかよ」
「ある意味、そっちのがスゲー」

 穴山三兄弟は、揺れるビール腹を眺めながら感嘆した。

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