ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第9章・5話

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女王の風格

 誕生したばかりのヤホーネスの女王は、言い争う二人の元帥の間へと歩み出る。

「今は一刻も早く、王都を再建して被災した市民を救済し、また災いの元凶となったサタナトスを見つけ出し、排除せねばなりません」

「王都の再建は、ヤホーネスに残ったカジス・キームスがやってるぜ」
「市民の救済も、大神官ヨナ・シュロフィール・ジョ猊下が、寛大なる御心の元に行なわれております」

「サタナトスの足取りだってよ。リュオーネ・スー・ギルのババアが、手下の魔術師どもの闇のネットワークを駆使して、捜索に当たってるぜ」
 ラーズモ・ソブリージオと、ジャイロス・マーテスは、それぞれに王都の状況を説明した。

「では、あなた方は何をしているのです。王都の国民を放って置いて、権力争いに明け暮れている場合ではありません」
 女王、神澤・フォルス・レーマリアは、二人の臣下に詰問する。

「我らとて、姫様の戴冠の義を執り行うという、重大な使命がございました」
「それで女王陛下、アンタはどうすんだい?」
 五大元帥のウチの二人は、女王陛下の前でも平伏するワケでは無かった。

「わたくしも、王都へ参ります。民と共に、ヤホーネスを再び活気ある街にせねばなりません」

「ならば、我らサバジオス騎士団も従いましょう。王都騎士団は、セルディオス将軍ら僅かな兵力を残し、ほぼ壊滅状態。幸い我らが騎士団の城は堅牢な要塞ゆえ、被害も最小限に留まりました」

 ジャイロス・マーテスの言葉は暗に、王権を持つ者の力が弱まり、相対的に五大元帥の力が強まった事実を示唆していた。

「ラーズモ、アナタはどうしますか?」
 金髪の少女は、荒ぶるオレンジ色の髪の獣人に問いかける。

「獣人も元を辿れば、ヤホーネスの前を流れる大河、シナヌ川に暮らした民だ。河で漁をし、森で獲物を狩り、それを水運を使って売りさばいて繁栄した種族。活気を取り戻すコトに異論はねえぜ」

「ではラーズモ、アナタは先に戻って、王都の商圏の復興に取り組んで下さい」
「オレら獣人は、信用されてないってコトかい?」
「当然であろう。誰が未開の獣人など……」

「信用致しております」
「じょ、女王陛下!?」

「王が民を信用しなくて、なにを信ぜよと言うのです」
 焦りを顔に出すサバジオス騎士団の団長に、女王は断言した。

「ガハハッ、コイツは面白れェ。アンタのコト、益々気に入ったぜ」
 ラーズモは、豪快に笑い飛ばす。

「お二人より派兵された臣下の者たち、わたくしの前へ……」
 二人の元帥の背後に控えていた六人の少女が、金髪の女王の前に整列する。

「ハッ。偉大で聡明なる女王陛下」
「わ、我ら、こ、心よりの忠誠を……」
 三人の騎士の少女は仰々しく忠誠を口にし、獣人の三人の少女は棒読みの台詞を口にした。

「このような貴重な人材をいただき、二人の元帥には感謝の念が絶えません」
 レーマリアは六人の臣下を、胸元に優しく抱き処せる。

「い、いえ。勿体なきお言葉、恐縮至極にございます」
「まあ粗暴だが、アタマ以外は悪い娘たちじゃねえぜ」

「わたくしは、このニャ・ヤーゴにて、やるべき事を済ませた後に、王都へと参ります。もう数日だけ、厄介になりますよ、ホアキン」

「は、ははーッ!」
 ここで始めて名前が挙がった、ニャ・ヤーゴ本来の領主が女王の前にひれ伏した。

 既に、女王としての風格を備えておられる。
プリムラーナ・シャトレーゼ女将軍は、レーマリアを見ながら思った。

 王よ……貴方のひ孫に当たる少女は、立派にその重責を担っておいでですぞ。
ニャ・ヤーゴの城の会議室に、夕日が差し込む。

 赤く染まる城を、外から眺める者が居た。

「ヤレヤレ、人間の女王の晩餐に、招かれるとはのォ」
 漆黒の髪の少女は、ため息を吐きながら城門をくぐり抜けた。

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