ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第8章・15話

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復活の英雄

「キミは確か、覇王パーティーのゼップ・クーレマンスだったね」
 金髪の少年が言った。

「おうよ。いかにも、大喰のクーレマンスたあ、オレのコトよ!!」
 筋肉の鎧に覆われた大男は、巨大な顎の付いた剣を振りかざす。

「それがキミの剣かい。魔王の前脚を喰いちぎったのも……」
「ああ。我が大喰剣・『ヴォルガ・ネルガ』の力よ」
 前足を失った巨大なオオカミは、悲痛な雄叫びをあげている。

「キミの剣に喰われた前脚は、異次元にでも飛ばされたのかな?」
「さあな。お前自身が、喰われて確かめな」
「そんなコトをしなくたって、ボクは自在に異次元へと身を隠せるのさ」

「クーレマンス、ヤツを逃がすな!」
 クーレマンスの肩に乗ってる、赤毛の少女が叫んだ。

「喰らい尽くせ、ヴォルガ・ネルガ!」
 だが筋肉男の一撃は、虚しく空を斬る。

「チッ、逃げられたか……」
「それより、レーマリアは無事か!?」

「皇女は無事です。ですが皇女を助けて、パレアナが……」
「な、なんだって!?」
 赤毛の少女は辺りを確認するが、深い血溜りがあるのみだった。

「ククク……その髪の色……もしかして、キミがシャロリュークかい?」
 聖堂に響く、無邪気な少年の声。

「ああ、それよりパレアナはどうした?」
「アハハハハ……なんて姿なんだ。キミが本当に、赤毛の英雄とはね!?」

「パレアナはどこだと、聞いている!」
「フフ、彼女は念のための人質さ。ボクの剣に貫かれて、消滅する寸前だがね」
「まったく、汚ねえマネしやがるぜ」

「クーレマンス。キミは間違いを言ったよ。ボクは、逃げてなどいない」
「な、なんだと!?」

「ヤツの言う通りです」
「サタナトスは、異次元から隙をついて、攻撃を仕掛けてくるんだ!」
 戦闘を経験したアーメリアとジャーンティが、情報を提供する。

「で、でもでも、魔王の前脚は……って、アレ!?」
「余計なお喋りは、魔王の脚が甦生するまでの、時間稼ぎだったのよ」
 ルールイズとジャーニアの前に、四本の脚で立つ魔王の姿があった。

「ただの小娘に成り下がったキミに、もはや人質など無用。魔王『マルショ・シアーズ・フェリヌルス』の腹の中に、納まるがいい」

「エクスマ……ベルゼ……」
 小声で呟く、赤毛の少女。

「なに?」
「エクスマ・ベルゼ!」

「まったく、なにを言っている。キミのエクスマ・ベルゼはボクが……」
「来い、エクスマ・ベルゼ!!」

「無駄だよ。小娘になって、頭まで幼児化したのかな」
 異空間から顔を出し、呆れて見せるサタナトス。
「いくら呼んだところで、キミの剣はボクが異空間に……」

「オレの元に来い、エクスマ・ベルゼェェーーーーッ!!!」
 すると、教会の聖堂の空間がひび割れ、炎が噴き出した。

「バ、バカな。バクウ・ブラナティス以外に、時空を切り裂く剣があるハズは……」
 炎はやがて一カ所に集まり、形を変え一本の剣となる。

「ア、アレは紛れも無く……エクスマ・ベルゼ!」
 プリムラーナの目の前で、剣が赤毛の少女の手に握られた。

「小娘如きに……炎と光の覇王剣、エクスマ・ベルゼが扱えるワケがあるまい!」
 その瞬間、少女が炎に包まれ、赤く長い髪の毛が逆立つ。

「シャ、シャロリューク……お前、その姿!?」
「ああ、シャロリュークさま!」
 クーレマンスと、レーマリアの瞳に、赤毛の少女の姿は映っていない。

「な、なんだってェ、お、お前は……!?」
 金髪の少年に、焦燥の表情が浮かぶ。

「テメーは、やり過ぎた……サタナトス」
 屈強なる胸板に、大剣を軽々と握る右腕。
自信に満ちた眉に、流れるように美しくも荒々しい赤い髪。

 人々が憧れ、魔物たちが畏怖した英雄の姿が、そこに居合わせた全員の瞳に映っていた。

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