ラノベブログDA王

ブログでラノベを連載するよ。

王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第ニ章・EP009

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ファーストボランチ

「なあ。本当にあの倉崎 世叛が、オレなどを必要としているのか?」
 褐色の肌に金髪で長身の男が、弱々しい声で言った。

「ホント……心配ない」
 当初のイメージとは、真逆の杜都さん。
なぜだか紅華さんや、雪峰さんより喋りやすい。

 ボクたちは、近所のコンビニへと向かった。

「おう、来たか。一馬」
 フードコートで、サングラスの倉崎さんがボクを呼んだ。

「ひょっとして後ろの背の高い兄ちゃんが、杜都 重忠か?」
 紅華さんの質問に、コクリと頷く。

「御剣 一馬……クールで無口ながら、スカウトとしての腕も一流のようだ」
 雪峰さんが、ボクを過大評価してる。

 ボクは塩おむすびを、杜都さんはコーヒーと、詰め合わせ野菜を買って席に向かった。

「じ、自分は、杜都 重忠であります。倉崎司令であらせられますか?」
 杜都さんは背筋を一直線に伸ばし、倉崎さんに敬礼をした。
買い物客の視線が、一点に集中する。

「オ、オイオイ。なんだ、コイツ!?」
 紅華さんが驚くのも、無理が無い。
パラシュートで、空から降って来た人だから。

「ああ。彼は自衛官を志しているんだ」
「そうなんスか。それなら、まあ……」

「今日はわざわざ、足を運んでくれて有難う。オレが、倉崎 世叛だ」
 サングラスを外す、ジャージ姿の倉崎さん。

「こ、これは、紛れもなくご本人……失礼いたしましたァッ!」
「声がデケーよ。ここ、コンビニなんだから、敬礼すんな!」

「お、お伺いしたいのですが、自分などをスカウトしたいと言うのは、本当でありますか?」
「本当だ、杜都 重忠。お前の力が必要だ」
「オレの力が……必要?」

 うう……羨ましい。
ボクも倉崎さんに、一刻も早く認めて貰わなきゃ。

「隣にいる雪峰と共に、チームのボランチを任せたい」
「じ、自分にでありますか?」
「ああ。最初にボールにアタックする、ファーストボランチとしてな」

 ……ファーストボランチ。
ダブルボランチやトリプルボランチで、中盤の底のポジションを二枚以上採用する場合、最初にボールを奪いに行くボランチをファーストボランチと言うんだ。

「カバーはオレが行う。思い切ってコンタクトしてくれて、構わない」
「そ、そうか、雪峰士官。サポート、ヨロシク頼む」

「つっても、月給五万だケドな。そんでホームページは出来たのかよ、雪峰?」
「とりあえず、ベースと言うかたたき台はな。見てくれ」

「ス、スゲエな。けっこう、本格的じゃないか?」
「そ、そうだな。素晴らしい」
 紅華さんも、杜都さんも、感心するくらい良く出来てる。

「SEO対策も、それなりに施してある。今はまだ、トップページの他に、選手の紹介ページしか無いが、会場へのアクセス、スポンサーページなども作る予定ではある」
「予定もなにも、スポンサーなんて集まるのかよ?」

「集まるのでは無い。集めなくてはならない」
「カッコいいコト言ってますが、宛てはあるんスか?」
「お前、実家が美容院なんだってな。それに、ご家族も美容院に勤務とか?」

「従業員も雇えない、しがない個人経営の美容院っスよ。姉貴だってまだまだ下っ端で、スポンサーを頼める権力なんてありませんって」

 やはりスポンサー集めも、一筋縄では行かないみたいだ。

「だが、立ち上げたばかりの無名チームに、いきなり大手スポンサーが付く可能性は低い。小口のスポンサーを、出来る限り多く集めるのが、現実的ではある」
「そうだ。雪峰の言う通りだ」

「倉崎さん……雪峰が居なかったら、どうしてたんスか?」
 それ、流石にボクも思った。

「ま、まあアレだ。こうしてチームも四人になったコトだし、河原の練習場でポジションチェックをしようじゃないか」
 言葉に困って、話題を変えようとしているのは明白だった。

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