ハンバーガー女子会
格納庫(ハンガー)で会った時の、ペンテシレイア・シルフィーダの第一印象。
ボクは、理性的で社長秘書のような人物だと感じた。
それが今は、陽気な女子大生のように振る舞っている。
「舞人くん……この女性、誰?」
席を奪われたセノンが、冷たい視線を向けていた。
「ま、まあ話せば長くなるんだが……」
何せ、セノンには艦橋での記憶が無い。
真央たち三人娘や、クーリアたちも、ここが宇宙艦の中とは思っていないのだ。
「わたしは、トロイア・クラッシック大学の生徒よ」
ペンテシレイアは、そう自己紹介をした。
「今日は、キミたちの学校との親睦を深めようと思ってね」
「クロノ・カイロス学園との、親睦をですか?」
「でも、どうして大学と……?」
「別に付属高校でもないのに」
真央と、ヴァルナと、ハウメアが、女子大学生に問いかける。
「今度、業務提携を結ぶ感じになったのよ。ね、宇宙斗くん」
「あ、ああ。まあ、そんなところだよ」
「ふ~ん……」
セノンはまだ、機嫌が悪そうだった。
「ところでだケド、ここは狭いわ。向こうに移らない?」
アマゾネスの女王の名を持つ使者が、提案する。
「ペンテシレイアさんのお友達って、十二人もいるんだね」
「確かに、ここは手狭……」
「テーブル三つ、占領だぁ」
オペレーター三人娘によって先導され、ボクたちは席を移す。
「さて、まずはみんなの自己紹介からだね」
胸元が大きく開いた、金色の派手なスーツを着たペンテシレイア。
「クロニー、ポレムーサ、デリノエ、エヴァンドレ、アンタンドレ、ブレムサ、ヒポトー、ハーモトー、アルシビー、デリマチェア、アンティブロテ、サーモドーサだ」
彼女の連れの十二人の女性たちは、デザインはそれぞれ異なるが、白いスーツを着ていた。
ペンテシレイアほどでは無いものの、大人の女性らしいプロポーションをしている。
「もう、宇宙斗くん、なに見惚れてるの!」
「ヒデデ、見惚れてない、頬っぺた引っ張るな」
「あーあ。セノンも体形じゃ、完敗だモンな」
「嫉妬も無理ない……」
「やっぱ男って、オッパイだよねェ」
「マケマケ、酷い。みんなもイジワルだぁ!」
「心配しなくていいよ。キミの彼氏を、取ったりしないからさ」
「か、かか、彼氏とかでは……無くてですね」
顔が真っ赤に染まる、セノン。
「アハハ。セノンちゃんは、カワイイねえ」
コーラを飲み干した女子大生は、向かいのテーブルをストローで指した。
「ところで向かいの席にも、キミたちと同じ制服を着ているコがいるね」
「クヴァヴァさまのコトですか?」
「あのコ、クヴァヴァって言うの?」
「それ、セノンが勝手に呼んでるだけです」
真央=ケイトハルト・マッケンジーが言った。
「アタシも、マケマケなんてヘンなあだ名で、呼ばれてるし」
「本名は、クーヴァルヴァリア・カルデシア・デルカーダ……」
「大財閥・カルデシア財団の、ご令嬢なんですよ」
「そうなのか。せっかくの機会だし、彼女とも交流を持ちたくはあるな」
「それじゃあボクが、行って話を付けてきますよ」
豊満な胸の前をすり抜け、クーリアに声をかける。
「なる程、トロイア・クラッシック大学の方々でしたか……」
「どうだろう。生徒会長も、親睦の席に参加してくれないかな?」
「喜んで、参加させていただきますわ」
向かい合って並んでいた、六つのテーブル。
「わたしは、クーヴァルヴァリア。クロノ・カイロス学園の、生徒会長を務めております」
クーリアも、取り巻きの少女たちを紹介する。
「このコたちは、我が家でメイドとして働いている、フレイア、シルヴィア、カミラ、ヘルミオネ、アンリエッタ、アデリンダ、フーベルタ、レオナ、オッティリア、リリオペ、ベルトルダですわ」
ハンバーガーショップはさながら、大規模な女子会の様相を呈した。
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