ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第8章・10話

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六枚羽の天使

「あれは……天使?」
 シスター見習いの少女が、思わず呟く。
少年は、それほどまでに神々しかった。

「ボクが天使だって?」
 少年は金色の髪をかき上げながら、不敵に微笑んだ。
「たしかに、そうかもね……ただし」

「パ、パレアナ……彼は、まさか!?」
 皇女レーマリアが叫ぶ。

「キミたちの命を断ち斬る、死の天使さ」
 ヘイゼルの瞳に、妖しい気が漂う。

「やはり、あなたがサタナトスなのですね……」
「これはこれは。皇女殿下に名が知られているとは、光栄の限りだよ」

「彼が、舞人が言ってた少年なの?」
 本人が認めても、パレアナはにわかには信じられなかった。

「魔物の軍勢で王都を襲い、ヤホーネス城をも破壊したのは、あなたなのですか!?」
「そうだよ。呆気ない脆さで、拍子抜けさ」

「大祖父さまは……王は、どうされたのです?」
「さあね。魔王に踏み潰されたか、あるいは炎に巻かれて消し炭にでもなったか」
「なんと言うコトを!」

「怒っているのかい、レーマリア皇女殿下?」
 金髪の少年は、無邪気に微笑む。

「でも今のキミに、大して興味は無いんだ。いつでも殺せるしね」
 聖堂の二人の少女そばには、護衛の兵士も、頼れる英雄も居なかった。

「こ、皇女さまは、わたしが……」
「よしなさい、パレアナ」
 皇女の盾となろうとする少女を、レーマリアは止める。

「キミたちに質問なんだケド、『蒼い髪の少年』の居場所って知らないかな?」
「そ、それって、舞人の……」
「パレアナ!!」

「どうやら、知ってるみたいだね」
「知っていたとしても、あなたに教える道理がありません!」
「そうか、ならば力ずくで聞くまでだ」

 サタナトスは、幻影剣・『バクウ・ブラナティス』で時空を裂き、そこから自らの剣を取り出す。

「これがボクの魔晶剣、『プート・サタナティス』さ」
 金髪の少年の手には、曲がった二本の角の鍔の剣が握られていた。

「ボクの剣、プート・サタナティスは、人間を魔王へと変化させる」
 アメジスト色の刀身から、禍々しいオーラが溢れ出す。

「もっとも魔力の低い人間は、魔王にはなれず消滅するケド」
「シャロリュークさまを魔王へと換えたのは、やはりアナタなのですね!」

「ああ、そうだよ。魔王となった赤毛の英雄の手で、ニャ・ヤーゴを滅ぼしてやろうかと思ったのに、蒼い髪の少年と、元魔王に邪魔されてね。この『腕』を探すのも、苦労したさ」
 サタナトスの、ルーシェリアにっよって石化させられた左腕は、元の美しい腕に戻っていた。

「どうしてそんなに、酷いコトが出来るの!?」
 栗毛のシスター見習いの少女が、叫ぶ。

「そんなに酷いコトかな、人を虫けらみたいに扱うのが?」
 金髪の天使が再び時空を切り裂くと、次元の裂け目から人がボロボロとこぼれ落ちた。

「か、彼らは、エキドゥ・トーオの王宮の……!?」
 教会の床には、神聖なローブを真っ赤に染めた神官や巫女たちが、何人も横たわっている。

「ああ、王都の神官どもさ。コイツらは既に、ボクの剣で刺してある」
「そ、それでは……!?」
「もう直ぐ、魔王へと生まれ換わるよ」

「なんと言うコトを!」
 神官や巫女の身体は徐々に溶け、やがて一つの塊となる。
それは、巨大なタマゴのように胎動を始めた。

「ルーシェリアから、あなたは魔族と人間のハーフだと聞きました!」
「半分は、人間の血が流れているんでしょ!」

「確かに、ボクの父親は魔王で、母は人間だったケドね」
 少年の背中から、六枚の翼が現れる。
「母は、天使の血を引いていた……」

 そのうち上の二枚は、真っ白な鳥のような翼で、残りの四枚は漆黒の蝙蝠の翼だった。

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