ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第8章・9話

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王の最期

 黒煙の向こうに、異形の姿を顕す魔王・『ザババ・ギルス・エメテウルサグ』。

 後の世に、『破軍』と『破滅』の魔王と呼ばれる存在を目にし、人々は恐怖で震えあがった。
逃げ惑う市民で溢れる大通りから、少し入った裏路地。

「……なんという……コトか……由緒ある王城が……」
 武装した騎士や武士たちに囲まれ、地面に伏せた老人が呟く。

「王よ、お気を確かに」
「現在ニャ・ヤーゴに、援軍要請の使者を送っております」
「シャロリューク様にかかれば、あのような魔王など!」

「シャロリュークは今……行方知れずだったであろう?」
 この時はまだ、赤毛の英雄がサタナトスの手で魔王となり、舞人によって赤毛の少女となった事実は、届いていなかった。

「で、ですが、他の覇王パーティー・メンバーは未だ健在」
「どの道ワシは……助からん。お主らは避難する市民の先導をいたせ」
「何を気弱な。この国の王は、あなた様なのですぞ!」

「お、王権の証たる刀『八咫』は……曾孫娘たるレーマリアに授けてある……」
 老人の腹は、ドス黒い血で染まっている。

「も、もし王都が堕ちれば……お前たちは、レーマリアの元で国を……」
 それが老人が、最期に発した言葉となった。

「たった今、王は……身罷(みまか)られた……」
 立派な髭を生やした騎士が、静かに王の眼を閉じる。

「セルディオス様。お言葉ですが、まだ甦生の可能性が……」
「エキドゥ・トーオの王宮には、神霊術に長けた神官がおります」
「今すぐ王宮にお連れすれば、回復されるのでは」

 武者鎧を着た、三人の少女が言った。

「王は責務を果たされた。これ以上、地獄のような光景を見ることも無かろう」
 セルディオスは、西の方角を見る。
「それにエキドゥ・トーオの王宮も、無事ではあるまい……」

 エキドゥ・トーオの王宮は、ヤホーネス城とは別の迎賓館のような建物であったが、その方角からも炎が上がっていた。

「ヒルデブラント、シンディーニャ、ケイトファルス!」
 髭の騎士団長は、部下の名前を叫んだ。

「キサマらは王都より堕ち伸びて、レーマリア皇女殿下に王の最期の言葉を伝えよ!」
「セルディオス将軍は、どうされるおつもりなのです?」

「王の遺言だ。是より、市民の先導をいたす」
 大通りに、王都に潜入した魔物の大軍が現れる。

「でしたら、我々も……」
「これは命令だ。行け!」
 騎士団長は剣を抜き、魔物の群れへと斬り込んでいった。

「ご、ご武運を……」
 三人の侍少女は、大通りとは反対方向から首都を脱出する。
途中で馬を調達し、丘の上に立つと、ヤホーネスの王都は炎と黒煙に覆われていた。

 ~その頃~

 ニャ・ヤーゴにある、古びた教会。
一人の少女が、神に祈りを捧げている。

「どうか神よ、我が曾祖父たる王の命を……民たちの命をお救い下さい」
 彼女はパレアナではなく、皇女レーマリアだった。

「レーマリアさま、少しお休みになられてはいかがですか?」
 栗毛のシスターが、皇女に声をかける。
「ありがとう、パレアナ」

「王都からの知らせは、そんなに酷いものだったんですか?」
「魔物の大群が現れ、王城が魔王によって壊滅したとの知らせが……」
 この時点ではまだ、王が死亡した事実は伝わってはいなかった。

「それって、サタナトスの仕業なのでしょうか?」
「残念ながら、わたしに知る術はありません」

「し、心配いりませんよ」
 パレアナはシスターとしてより、同世代の少女として皇女を励ましたかった。
「グラーク公の率いるオフェーリア軍が、救援に向かわれたのですから」

「ニャ・ヤーゴと王都の間には、イティ・ゴーダ砂漠が広がってます」
「……で、ですよね」
 それでなくとも、王都までの距離は遠く離れていた。

『ククク……それはさぞや、不便だろうねえ?』
 教会の聖堂に、不気味な声が響き渡る。

「だ、誰です!?」
 皇女が見上げると、ステンドグラスを背景に、金髪の少年が浮かんでいた。

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