ラノベブログDA王

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一千年間引き篭もり男・第05章・06話

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ランチタイム

「身体チェックとなると、男のボクが居ない方がいいのか?」

『いいえ。服を脱ぐ必要もないので、問題はありません』
 隣を浮遊する、ベルダンディが言った。

「ところで、群雲艦長。この艦には、街が存在すると仰いましたよね?」
「ええ。二十一世紀ごろの、巨大な街が再現されてますよ」
 ボクは、それがどうしたのかと聞きたかった。

「フム、それは興味深いですね。一度、見てみたいモノです」
「ペンテシレイアさんはこう言ってるケド、どうだろう?」
『艦橋よりは、機密情報も少ないと思われます』

「そっか。じゃあ、街のハンバーガーショップで会議をしよう」
『では、手配を致します。街に入るのに、宇宙服も無粋でしょう?』
 フォログラムの女神は、アマゾネスの女王に視線を向ける。

「街歩きのカジュアルな服は、あるのですか?」
『ハイ。十三人分、ご用意できるかと思います』
「じゃあボクは、先に行ってるよ」

 ……と言ったものの、それ程艦の中に詳しいワケでは無い。
 十三人の女性と一人のフォログラムと別れ、散々迷った挙句街に出る。

「やっと、街に出れた。ここからは、見慣れた光景だ」
 目の前に広がるのは、二十一世紀の生まれ育った街だった。

「お、学生服じゃないか?」
 窮屈な宇宙服から、待機所に用意されていた学生服へと着替える。
「この着心地、懐かしいな。サイズもぴったりだ」

 街は昼間に設定され、柔らかい日差しが降り注ぐ。

「あの空も、言われなきゃ本物の空にしか見えないよ」
 人々が行き交い、小鳥の鳴き声も聞こえてくる。
「街の人たちは、ここが宇宙艦の中だって、タブン解ってないよな?」

 彼らは時の魔女によって、生み出されたのだろうか?
ここでの記憶も、魔女によって植え付けられた?
千年後の未来では、脳の記憶すらも簡単に書き換えが可能なのだ。

「戦闘や交渉でうやむやになってたケド、この艦もまだ謎が多いよな」
 再現された街を、つぶさに観察しながら歩く。

「ホントにここが、宇宙艦の中だなんて信じられないよ」
 ハンバーガーショップの、見慣れた看板を見上げながら思った。

「あ、宇宙斗くん!」
 聞き慣れた声がする。

「セノン……か?」
 振り向くと、白いシャツにピンク色のリボンを結んだ少女がいた。
彼女は、紫陽花色のスカートを穿いている。

「み、見ればわかるでしょ。これからハンバーガーのお昼?」
「も、もしかして……記憶が無いのか?」
「宇宙斗くん、なに言ってんの。記憶ならあるよ!」

「それって、リボンを体に巻き付け、クラブを頭でキャッチして、フープで股間を……」
「ふぎゃあぁぁぁぁ!」
顔を真っ赤に染めながら、怒り出すセノン。

「宇宙斗くんのイジワル。そ~ゆ~記憶は、今すぐ消去してェ!」
 ボクが言った記憶は、真央やヴァルナたちから聞いた記憶だった。
この街でのセノンは、新体操部に所属する女子高生なのだ。

「お二人さん、相変わらず仲がいいよな」
「お熱い限り……」
「焼けちゃうねえ」

「それ、二十世紀の台詞だぞ」
 セノンと同じ制服を着た、真央、ヴァルナ、ハウメア。
それはつまり、千年前に時澤 黒乃が着ていた制服と同じモだった。

「あら、皆さま、お揃いで。ご機嫌良う」
 振り返ると『クヴァヴァさま』こと、クーヴァルヴァリアが立っている。

「生徒会長も、今からハンバーガーですか?」
「ええ、真央さん。貴女がたも、同じ目的のようですね」
 彼女は街の中では、生徒会長の役割を与えられていた。

「キミたちは、中等部だね……」
「中学も今日は、午前中までの授業だったんだ?」
 ヴァルナとハウメアが、取り巻きの少女たちに問いかける。

「そうですわ、お姉さま方」
「ティータイムも、たまには趣向を変えてみませんと」
 クーヴァルヴァリアを囲む、上品な物腰の十一人の女子中学生たち。

 けれども彼女たちは、フォボスのプラント事故では、顔中を鼻水や涙で汚していた。

 

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