ラノベブログDA王

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キング・オブ・サッカー・第一章・EP019

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エル・マタドール(闘牛士)

「じゃあ行くぜ!」
 紅華さんはダラリと右腕を下げると、ボクを抜きにかかる。

 ボールに触る回数が多い……厄介なドリブルだな。
ボールタッチが多ければ、それだけ方向を変えるタイミングが増える。

「オレの本気がどれくれェか、試してみろよ」
 左脚だけを使い、巧みにボールをコントロールする紅華さん。
身体を使って、ボクの視界からボールを見えなくする。

 マ、マズイ……抜かれる!?

 抜かれたら、紅華さんはチームに入ってくれない。
サッカーは、一人じゃできないんだ!

「クッ……コイツ!?」
 ボクは身体を当て、進路をギリギリ塞いだ。
接触(コンタクト)プレイは、そんなに得意じゃないみたい。

「ナマイキな。だったら、コイツはどうだ?」
 紅華さんは、ダブルタッチ……エラシコとシザースの、連続技を仕掛けてきた。

 うわわわ、ボールが脚に付いて行ったり、行かなかったり!?
細い脚が交互に出る度に、ボールの在り処を確認する必要に迫られた。

 ……と、とにかくボールに集中するんだ。
身体の動きに、惑わされちゃ行けない。

「コ、コイツ意外に……冷静じゃねえか?」
 ボクは紅華さんの息が、少しずつ息が上がって来ているのを感じた。

 あ、フェイントのボールが、脚から離れた?
ワザとなのかも知れないが、ボクは勝負に出る。

「な……お前ッ!?」
 紅華さんの身体と、ボールの間に自分の体を強引に割り込ませた。

 ピンク色の髪のドリブラーは、バランスを崩し尻もちを付いて倒れ込む。

 やった、ボールを奪えばボクの勝ち……。
そう思った瞬間、紅華さんの長い脚が伸びる。

 つま先でチョンと触られたボールは、コロコロとジャングルジムの方へと転がって行った。

 ああッ!?
転がるボールに追いつくコトは出来ず、ボールは鉄パイプの遊具を通過する。

 負けちゃった……。

 これじゃ、紅華さんは仲間になってくれない。
倉崎さんの期待にも、答えられなかった。

 ボールを拾い、トボトボと帰ろうとすると後ろから声がした。

「言っとッけどよ。お前の勝ちだぜ」
 振り返ると紅華さんが、学生服に付いた砂ぼこりを払いながら立ち上がっている。

「ルールは、『オレがお前を抜いてゴールを決めたら』だからよ」
 ……え?

「お前を抜いてないんだ」
 紅華さんは、悔しさを滲ませる。
「ゴールを決めたところで、ドリブラーとしてはオレの負けだ」

『ブン、ブン、ブン、ブン、ブン!!』
 ボクは、おもいっきり頭を振った。
これが試合なら、ドリブルで抜かれなかったなどと、言いわけできない。

「何だよ、人が負けを認めてやってるってのに、否定しやがって」
 ピンク色の髪の高校生に、ボクはヘッドロックをかけられる。
「この勝負、オレの……」

「一馬の負けだ」
 急に、何処からか声がした。

「かつて、『エル・マタドール(闘牛士)』と呼ばれたドリブラーがいた」
 公園に植えてある木の影から、サングラスの男が現れる。

「彼は完全にディフェンダーをかわさないで、次々にゴールを決めた。母国・アルゼンチンを初のワールドカップ優勝に導いた、男の名は……」

「『マリオ・ケンペス』……知ってるよ」
 紅華さんは、男に向かって言った。

「倉崎 世叛。まさかマジでアンタのチームの、スカウトだったとはなあ」

 あ、倉崎さんだぁ!

「キミには、ドリブラーとしてのこだわりがあるのは解かる。だが現代サッカーに置いて、ただドリブルが上手いというだけでは通用しない」

「言ってくれるねえ」
 紅華さんは学生服のポケットに手を入れ、倉崎さんに近寄った。
「オレは似たような指導者に、何人も遭ってきたぜ。ドリブルはするなってよ」

「ドリブルは必要だ。サッカーは結局のところ、一対一の積み重ねだからな」
 倉崎さんも、サングラスを外し歩み寄る。
「局地戦で負けまくっていれば、戦争には勝てない」

「なんだ……意外に話が解かるじゃ……」

「だが現代サッカーに置いては」
 倉崎さんは、紅華さんの言葉を遮った。

「ドリブラーにはサイドアッタカーの役割が求められ、同時にフィニッシャーとしてゴールを決めるコトも要求される。場合によっては、司令塔としての役割もだ」

 倉崎さんは、右手を差し出し言った。

「紅華 遠光。正式にキミを、スカウトしたい」

 

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