ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第一章・EP005

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一人だけのサッカーチーム

「……え?」
 思わず耳を疑った。

 ボクは、目の前のジャージの人を凝視する。

「だから、お前がウチのチームの最初のメンバーだ」
 倉崎さんの発言を聞いた先パイたちも、後ろでポカーンと大口を開けていた。

「あ、あの……倉崎さん。サ、サッカーは、十一人でやるもので……」
 意外にもスラスラと言葉が出る。
倉崎さんと話すのも慣れてきたと言うより、その内容があまりに酷すぎた。

「アハハハ、流石にそれくらいは知ってるぞ?」
「ボクが最初の一人って……?」
「言葉通りの意味だ、心配すんな」爽やかに微笑む倉崎さん。

 それが、大問題なんですケドォーーーーーーッ!

「く、倉崎さんと……二人だけのチーム?」
「いや、お前一人だ。オレはある事情があって、自分のチームの試合には出られない」

「えええええッ!」ボクは頭を抱えた。
 知らない間に、本当に頭を抱えていた。

「オイ、練習始めようぜ」「おお、そうだな」
「夏の全国大会に向けて、気合入れてくぞ!」
 呆れ顔の先パイたちが、川縁のグランドで練習を始めてしまう。

「そこの土手に座って、話の続きをしようぜ?」
「は、はあ……」
 ボクと倉崎さんは、土手へと移動する。

「オレはサッカーチーム、『デッドエンド・ボーイズ』のオーナーであって、選手ではないんだ」
 ボクの隣で寝そべって、空に浮かんだ雲を眺める倉崎さん。

「そ……それじゃあ、ホントに……ボク一人!?」
「まあ最初はどのチームも、そんなモンだろ」
「ううッ!」

「……とは言え……だ。お前には、クラブの一員としてオレが給料を支払う」
「きゅ、給料!?」
 予想外の提案に、予想外の大きな声が口から飛び出す。

「今は大した額は払えんが、そのウチお前の実力に見合った金額を支払うさ。どうだ?」
「高校一年のボクが……給料?」
「別におかしくはないだろう? 芸能界じゃ、子役なんか物心つく前から金を貰ってるんだ」

 倉崎さんは、立ち上がった。
河縁を吹き抜ける風が、草の香りを舞い上がらせる。

「オレはな、一馬。サッカーに一生、深く関わっていきたいと思ってる。選手生活を終えても、まだ先は長いからな……」
 すると倉崎さんはジャージのポケットから、名刺入れを取り出した。

「お前の名刺だ……一馬。きっと、来てくれると思っていたからな」

「ボクの……名刺?」
 ホントだ、名刺が百枚くらい入ってる。なんか、大人っぽい!

「オレはしばらく、本業が忙しくて動けん。そこでお前に頼みがある」
「……んなッ、なんですか!?」
 倉崎さんの、本業ってなんだろ。

「お前も言っただろ。サッカーは一人じゃできないって。そこでだ……」

「ふえ? フエエェェェーーーーーーーーーーーーッ!!?」
 ボクの耳は、とんでも無い台詞を聞かされた。

 日が傾き、ボクは倉崎さんと別れ、肩を落としトボトボと家に帰る。

「ただいまぁ」
 玄関のドアを開けて、汚れたスパイクを脱いでるとドタドタと音がした。
平凡な一戸建ての二階階段から、奈央が勢いよく降りてくる。

「あ、カーくん。どこ行ってたのよォ! もしかして、アイツのトコじゃないでしょうね」
 うッ、妙に鋭い! 奈央ってボクのコト、やたら知ってるんだよなあ。

「一馬、そんなに汗だくで、どこ行ってたのよ。奈央ちゃんも、ジュース飲んで待ってたのよ」
「勝手に人の部屋に、上げないでよ。母さん」

「もしかして、部屋のどっかにエッチな本が隠してあるとか?」
「ないよ、そんなモン」

 家が隣同士の奈央とは、ホントに小さな頃からの幼馴染みだ。
昔は一緒にお風呂とか入ったっけ。

「今日は六時から、Zeリーグのサッカーの試合がやるんだった」
「わたし、ドラマみたーい」「自分の家で見ればいいだろ」
「一人で見ても、つまんな~い」「だったら文句言うなよ」

 奈央の家は、両親が共働きで夜遅くまで家にいないことが多く、子供の頃からボクの家で預かるコトが多かった。

「確か、名古屋リヴァイアサンズVS東京ギガンテスなんだよ」
 ウチの地元は名古屋だ。

 リヴァイアサンズは、日本のトップリーグであるZeリーグの中じゃ、強くも無ければ弱くも無いって感じのチームだった。

「ふ~ん、興味な~い」
 ソファに座ったボクの太ももを枕にして、寝そべってお菓子を頬張る奈央。

「お前、パンツ見えるぞ。さっきも階段から降りてくるとき、丸見えだったし」
「なによ、今さら。もしかしてあたしの魅力に、気付いたぁ?」
「魅力ってさあ。奈央ももう少し……」

「あ、始まるみたいよ」
 三十二インチの薄型液晶テレビに目を向けると、両チームの選手たちがZeリーグの軽快なテーマソングに合わせ、入場してくるところだった。

 

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