ラノベブログDA王

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王道ファンタジーに学園モノ、近未来モノまで、ライトノベルの色んなジャンルを、幅広く連載する予定です

キング・オブ・サッカー・第一章・EP002

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倉崎 世叛

「キミ、サッカーやってるだろ? 左右の太ももの大きさが、極端に違うからね」
 男は一馬の脚を、ペタペタと触りながら言った。

 意思の強そうな瞳に、スラリと高い鼻、揺らぎのない自信を象徴するかの様な眉をしている。

「……あ?」
 いきなり見ず知らずの人間に脚を触られ、顔を強張らせる一馬。
けれども男の質問に、少しだけ緊張が緩む。

「な、なんなんですか、アナタは!」
 一馬の隣で、奈央が叫んだ。

「左利き……少なくとも、キックに関してはそうだろ?」
「人の話、聞いてますか? アナタは誰なんです。これ以上、カーくんの脚を触ったりしたら、警察呼びますよ!」

 奈央は、人見知りで喋れない一馬を押しのけ、男との間に割り込んで仁王立ちをする。

「そうか。いきなり失礼したね。オレはこういうモノだよ」
 ジャージ姿の男は立ち上がると、ポケットの財布から一枚の名刺を取り出す。

「えっと、なになに? 『デッド・エンド・ボーイズ代表取り締まり役』!?」
 一馬が受け取った名刺に書かれていた情報を、奈央が読み上げた。

「『倉崎 世叛(くらさき よはん)』……それが、アナタの名前なんですか?」
 一馬は相変わらず真顔のままだったが、ボクもそれ知りたい……とばかりに頷く。

「ああ、そうだ。こう見えて、サッカークラブのオーナーをやっている。よかったらキミ、ウチのチームに入らないか? 今ちょうど、メンバーを募集してるトコなんだ」
 倉崎の誘いの台詞に、自分の高校のサッカー部に入れなかった、一馬の目がキラキラ輝く。

「お? 乗り気じゃないか、キミのお兄さん」
「カーくんとは、幼馴染みです! 同い年ですから」

「そっか? てっきり、妹さんかと思ったよ」
 倉崎は奈央の容姿を観察しながら、悪びれるコト無く言った。

「う~~!」
 背の小ささや童顔に、コンプレックスのあった奈央は、生理的に倉崎が好きになれない。

「ダメだよ、カーくん。この人、怪し過ぎだから」
「オイオイ、オレのどこが怪しいって言うんだい?」
「全てです! 何もかもです!」「そいつは酷いな……」

「いきなり見ず知らずの人の脚を、ペタペタ触るなんて怪しさ全開でしょ。それにどう見たってあなた、高校生くらいですよね?」

「まあ、そうだな。高校三年だ」
「高校生が、サッカークラブのオーナーだって言うんですか!」
 奈央の的確な攻撃に、頭を掻きながら一馬を見る倉崎。

「クラブは今年、立ち上げたばかりでね。メンバー不足なんだ。クラブのオーナーってのは、ホントだよ。もちろん、トップリーグ所属のビッグクラブじゃあないケドね」
「それでも、クラブのオーナーなんですよね? あまり、お金持ちには見えませんケド」

「そうだな、今のところはね。金はこれから稼ぐところなんだ」

「あのですねえ……」
 奈央は呆れかえる。

「そんないい加減な話、誰が信じるって言うんですか。高校三年なら、わたしたちより先輩なんですから、もっとちゃんと将来を考えてですね……」
 小言モードに入る奈央を厄介と思ったのか、倉崎は耳を塞ぐようにフードを被る。

「……よかったら、見学においでよ。待ってるから」
 倉崎は奈央に聞こえないくらいの小声で呟くと、一馬のポケットにコッソリ名刺を入れて、走り去って行った。

「もう、人の話も聞かないで!」
 奈央は、一馬が最初に倉崎に渡された方の名刺を取り上げて、ビリビリと破く。

「カーくん、あんなヤツの言うことなんか、ぜったい信じちゃダメだよ!」
ゴミとなった名刺は、奈央の財布に仕舞われた。

「倉崎……世叛。一体、彼は何者なんだろう?」
 背の小さな幼馴染みを尻目に、一馬の中で倉崎に対する興味は膨れ上がる。

 彼のズボンのポケットには、もう一枚の名刺が残されていた。

 

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