ラノベブログDA王

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萌え茶道部の文貴くん。第六章・第十三話

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お転婆ギツネ

 その頃……渡辺は学校付近の森で、久々に再開した憧れの先パイと二人でいた。

「もう平気? 立っても大丈夫?」
 千乃 美夜美は、メガネの後輩を気遣う。

「はい、お陰様で。それより先パイがキツネだなんて、今だに信じられないな」
「ホントはね、人間と獣は関わり合ったらいけないのよ……」
 千乃 美夜美は少し困った顔をした。

「昔ばなしや漫画やアニメで、よくある設定ってヤツですね?」
「軽いなあ、フーミンわ。もっと、深刻な問題なんだよ!?」
 美夜美の頭から、ピョコンと狐の耳が生える。

「もふもふシッポもあるし、キツネ耳まで……やっぱ先パイは、本物なんだ!」
「だ~か~ら、反応がおかしいんだよ!!」
 少女はため息をついて後輩を見つめると、後ろを向いた。

「ごめんなさいね、黙っていて。普通の人間に、ばれちゃマズかったから……」
「でも先パイは、どうして人間の世界に……?」
 後輩は、ずっと聞きたかった質問をぶつける。

「わたしはね……鬱蒼(うっそう)とした森の中で生まれたの。周りには草原や山々、春には一面に花が咲き乱れるところだった」
 千乃 美夜美は過去形で語った。

「でも、山から見える灯りが、段々と迫ってきたわ。反対に、わたしの生まれた森は、バサバサと伐り倒されて行った」
「それって……人間の開発が原因で……!?」

「お母様は、人間を憎んだわ。でも、どんなに抵抗したところで、人の営みが生み出す開発の大波の前では、獣の力なんて無力だった……」
 先パイは、優しい瞳で後輩を見つめる。

「人間の力に叶わないと悟ったお母様は、やがて人間の世界に入り込み、人間の持つ様々な力を利用するようになっていったのよ」
「そ、それじゃあ先パイも、人間を憎んで……!?」

「わたしは……まだ、子供だったからかなあ。人間の街の灯りが、キレイだなあって思って眺めてた」
「子供ってより、先パイだからなんじゃ……?」
「あー! またそうやってキミは、先パイをバカにしてェ!」

「バカになんて、してないですよ。やっぱ先パイは、優しいんだなって思っただけです」
「そ、そお? なら良いケド」
 先パイは、澄ました顔をする。

「わたし、ね……ただの狐だった頃、まだ人間の灯りも村くらいの大きさでね。ある夏の晩に、夏祭りに忍び込んだの」
「また、無茶をしますね。お転婆ギツネだったと?」

「うっさいなあ。でもその時、人ゴミの中に迷い込んじゃって、蹴られるわ、踏まれるわで、ボロボロになって神社の境内で倒れてたの」
「それで、人間の少年にでも助けられたんですか?」

「えー!? それ、先言うかなあ。フーミン、空気読もうね!」
「ハイハイ。すみませんでした」
「わかればよろしい。でね、人間の世界に興味が沸いちゃって……」

「それで、人間に化けて、人間の世界で暮してたんですか?」
「うん……でも、あんなコトいなっちゃって……もう、人間の世界には居られないなって……」
 顔を伏せる、千乃 美夜美。

 それは、一年前の文化祭の前に発生した、部室棟の火事のコトだった。
「あの火事の原因は、わたしのお母様が……」

「そっか、それで先パイはあの火事のあと、姿を消して……」
 渡辺が一年間考え、悩み続けた謎の答えがそこにあった。

「そのコトは、後で話しましょう。それより今は、お母様を止めないと……」
「そうですね。でも……やはり千乃 玉忌さんは、先パイよりも強いんじゃ?」
「でも、わたしが何とかするしかないわ。あの狸のコだって、頑張ったんだもの」

「狸のコって……き、絹絵ちゃん!?」
 渡辺は、真剣な表情に変った先輩の横顔を見て、とても重要なことを思い出した。