ラノベブログDA王

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ある意味勇者の魔王征伐~第6章・7話

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サタナトス・ハーデンブラッド

 二人は喧嘩をしながらも、街外れの荒野を流れる川の畔にたどり着いた。

「随分と遠くまで来ちゃったね。でも、五時くらいには戻ってやらないとな~。屋台の片付けもあるし……」
「それは良いが、あの八つ子にコッテリと絞られることは、覚悟して置いた方がよかろう?」

「はあ、今はそれを言うなよ。せっかく、労働から解放されたんだしさ」
「フム、それもそうじゃな」
 舞人とルーシェリアは、初夏の日差しを受けきらめく川縁へと歩き出す。

「……おや。アレはなんじゃ?」
 不意にを突くように切り出した、少女の指差す方向を少年も確認した。

「人だ。誰か倒れてる!?」
 そこには、小さな川のせせらぎに半身を浸けた状態で、人間がうつ伏せに倒れている。

「も、もしかして、モンスターに襲われたとか!? 行ってみよう!」
「まったく、どうして都合悪く、河に人など倒れておるのじゃ!?」
 二人は急いで、倒れている人物の傍に駆け寄った。

「こッ……この人!? ……そんな……まさか!?」
 驚愕の表情を浮かべる少年。

「なんじゃ、この者を知っておるのかぇ……ご主人サマよ?」
 只ならぬ雰囲気を察したルーシェリアは、舞人に質問をぶつける。

「ああ、この人を知らない人は、恐らくヤホーネスには居ないよ……」
「で、では、この者は……まさか!?」
 舞人の言い回しに、ルーシェリアも男の正体に気付いた。

「そう……『シャロリューク・シュタインベルグ』さん。『赤毛の英雄』さ!」
 今まさに二人の目の前に、『血だらけの英雄』が横たわっていたのだ。

「大丈夫ですか……何があったんです!? シャロリュークさん!?」
 少年は、必死に呼びかけたが返事は無かった。

「……じゃが、息はある様じゃな。さっさと運んで、手当てをする他あるまい?」
 赤毛の英雄は、川辺が赤く染まるほどの血を流していたが、微かに呼吸はしている。

「そうだね。ボクは街に帰って、リーセシルさん達を呼んで来るよ! それから荷馬車も用意して戻るから、ルーシェリアはここで待って……て!?」
 そう言いかけた少年は、急に只ならぬ気配を感じて空を見上げた。

「な、なんだ? この異様な感じは!?」
「……ご主人サマも気付いたか? これは、只ならぬ気配じゃ!!」
 すると時空が歪んで空が渦を巻き、暗黒の空間が出現する。

「『シャロリューク・シュタインベルグ』……ソイツを、運ばれちゃあ困るなあ?」
 恐ろしく綺麗で……けれども、とても冷たい感じのする声が響き渡る。

「せっかくボクがやっとの思いで、時空の狭間から見つけ出したって言うのにさ」
 『暗黒の空間』から、声の主であろう一人の少年が現れた。
 少年は黄金色の髪を風に靡かせ、透き通ったシルクのように滑らかで美しい肌をしている。

「誰だお前は! まさか……お前がシャロリュークさんを、こんな目に遭わせたのかッ!?」
 舞人は、『金髪の少年』に向って叫んだ。

「……だったら何だってんだい? キミには係わりの無いコトだろう?」
 少年は、涼しげなヘイゼルの瞳で舞人たちを見下す。
「それに、ボクの『実験』はまだ終っちゃいないんだ。ただの人間風情が、邪魔するんじゃ無いよ」

「実験? 一体、何のコトだ!?」
「キミが知ったところで、どうせ死んじゃうんだ。聞いても無駄と思わない?」
 少年は、天使の様な顔で微笑んだ。

「そうだなあ……どうしよっかな~?」
 少年は、舞人とルーシェリアを観察しながら思案する。

「特別に、ボクの名前を教えちゃおっかなあ? どうせキミたち二人とも死ぬんだし」
 少年は、子供が蟻を潰すように、無邪気に言った。

「ボクの名は、『サタナトス・ハーデンブラッド』だ。冥土の土産に覚えておきなよ」